第40回 八朔

書家れんのつきいち年中行事
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第40回 八朔

ご機嫌いかがですか、れんです。

日本は異常に暑いそうですね。高校野球の予選大会で、ベンチ入り20人のメンバーのうち、12人が熱中症で倒れて負け試合になったという記事を読んだ時は目を疑いました。どういうわけだか今年の日本は試練が続きます。猛暑による被害が最小限に止まるように心から祈ります。

シドニーでは、いったん和らいだと思った寒さが再び頭を擡(もた)げたようで、春への期待に少し待ったがかかったようです。しかし家の周囲の木蓮の木々の枝の、真っ直ぐに天を向いた蕾(つぼみ)が次々に開いていく姿に、春がすぐ手の届くところにあるのを感じることができます。

私は毎年この時期、凛と背筋を伸ばして立って咲くあの花のひたむきさにいつも心惹かれます。

 木蓮の花言葉は、「高潔な心」や「自然への愛」「恩恵」などですが、私にはやはり前者がしっくりときます。無心で上を目指す、くじけず頑張る、木蓮はそんな気持ちにさせてくれる花です。

残念ながら日本は木蓮の時期ではありませんが、この花のように凛々しく天を仰ぎ、復興に向けて頑張ってほしいと思います。

さて今月の行事は「八朔(はっさく)」です。これは果物の八朔の語源にもなった言葉で、八月の朔日の略です。朔とは新月のことで、旧暦では1日に当たります。

旧暦のこの時期には早稲の穂が実り、農家がそれを貴人やお世話になった人に贈る風習がありました。また「田の実の節句」とも言われたことから、これが「頼みの節句」となり、公家や武家の間でも日ごろ頼み(お世話)になっている人に贈り物をするようになったのです。

今でも京都の花街では、祇園の芸舞妓さんが日ごろお世話になっているお茶屋や師匠に正装で挨拶をして回るのが慣わしです。

八朔の節句には各地で行事があります。

香川県丸亀市では男児の成長を祈って、米粉で馬(八朔だんご馬)を作ります。

時は江戸、菩提寺参拝の帰途、将軍家光が愛宕(あたご)山の山頂に咲いた梅の枝を馬で取ってくるよう所望したところ、諸侯がたじろぐ中、讃岐(現在の香川県)藩主・生駒高利の命を受けた同藩馬術指南役・曲垣平九郎が、急勾配をものともせずに見事それを成し遂げたことで、一躍全国にその名を轟かせました。馬の団子はこれにあやかったものです。

また福岡県遠賀郡では300年以上続く「八朔の節句」として長男・長女の誕生を祝い、男児には藁(わら)で馬を編み(「藁馬」)、女児には米粉で雛人形(団子雛)を作って飾ります。このように「八朔祭り」は全国で開催されていますが、9月(旧暦8月)に行われるところもあるようです。

それでは左の作品に行きましょう。木簡調で書きました。起筆も収筆も改まって抑えず、さっと入ってさっと抜く感じで書いてあります。いくつか逆筆で始まうるさるところも入れましたが、煩(うるさ)くならないようにしたつもりです。

運筆は息を吐きながら。太細の変化は大事ですが、太くても軽さを感じるような雰囲気が出せると素晴らしいです。全体が作る角度と、内部空間に気を付けながらまとめられるといいでしょう。

あと少し、寒さに負けずに頑張りましょう。体調を崩されませんように。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権を取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産としてキャンベラの在豪日本大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展をはじめ、日豪両国およびドバイで個展・グループ展を多数開催。在豪日本大使館、在オークランド日本総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館、Channel 7などさまざまなスペースで大書パフォーマンスを展開。日本文化紹介のワークショップにも多数参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室を運営。

Web: http://renclub.net
E mail: renclub@gmail.com
動画: http://www.youtube.com/user/renclub

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