第55回 勤労感謝

書家れんのつきいち年中行事
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第55回 勤労感謝

ご機嫌いかがですか、れんです。

先日、素敵な再会がありました。小学生だったころに書道教室に通ってくれていた、今春一流大学を卒業して社会人になったばかりの青年とそのご母堂が、シドニー再訪で声をかけてくれたのです。当時はビザが不安定で将来にひと筋の光さえ見えず、箸にも棒にもかからぬ、全く何者でもなかった私しか見ていなかったにもかかわらず、わざわざ訪ね、そして酒を酌み交わしてくれたことは本当にありがたく、嬉しいことでした。

「あの時はものすごく痩せていて、『煮込みハンバーグが食べたい』とばかり言ってたのよ」などと笑うご母堂に、「左利きを右利きにしてもらって良かった」と語る青年(今は基本的に本人次第)。思い出話を肴に、成長したかつての生徒と飲む酒は師の特権・至福に違いない、心からそう思いますね。

さて今月23日は「勤労感謝の日」ですね。194 8年に制定されました。その前は「新にいなめさい嘗祭」と言い、農作物の恵みに感謝して収穫を祝う、収穫祭に当たるものでした。新嘗とはその年に収穫された新しい穀物のことで、飛鳥時代の皇極天皇(中大兄皇子/天智天皇の母)の御代に始められた、長い歴史を持つ非常に重要な宮中行事でした。

時代が移ってサービス業などが発展し、「労働」が農業以外の幅広い業種を含むということで、「新嘗祭の日」ではなく「勤労感謝の日」となったようです。

同年に刊行された受田新吉著『日本の新しい祝日』には、勤労の意味として「肉体的な労働によって物品などを生産するということのみに終始するものではなくて、精神的な方面においても1日1日を真剣に考え、物質の本質へと深めていく研究態度にも勤労の大きい意味は存在し、想像し、生産していくことの貴重な意義ある生活が営まれていくことができる。物質的にも、精神的にも広い意味での文化財を建設していくことは、生産ということの正しい理解の仕方である」と書かれています。

「働く」ことは私たちの本質的な、根源的な生命活動と言えるでしょう。一面では義務であり、また一面では権利でもあります。社会にその場が存在するか、もしくはその場を創造できる環境が存在し、そして自らが健康でそこに身を置くことができるというのは、それだけで幸せで、深く感謝するべきことですね。

長い就職難で「ニート」という言葉が当たり前に使われている現代の日本社会では、この日の意味の重みが増すのではないでしょうか。

では作品をご覧ください。あるスペースにたくさんの文字を縦一列で並べる場合、各文字に割り当てられるのは、単純に言って幅広の扁平な形になります。その幅に合わせるには大きくデフォルメしなければなりません。さらに文字間のスペースを削除すべく、文字の一部にスペースを確保し、そこに次の文字の一部をパズルのようにはめ込みました。空間操作のテクニックの1つです。こうしてデフォルメの可能性を追求していくのも面白いものです(あくまで古典を背景に)。

気候も良くなって、何をするにも動きやすいですね。眠らせていたプランを引っ張り出して行動を起こしてみるチャンスですよ。思いもよらぬ効果を得られるかもしれません。病気をしないよう気を付けながら、ワクワクする毎日をお過ごしください。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)。

アーティストとして永住権を取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日豪およびドバイで作品展示多数。在豪日本大使館、在オークランド日本総領事館の招聘によるイベント参加 やNSW州立美術館、Channel 7などさまざまなスペースで大書パフォーマンスやワークショップを展開。書団れん倶楽部主宰。チャツ ウッドで書道教室運営(月~土)。東日本復興支援「プロジェクト名もない絆」のメンバーとして支援地と被災地を繋ぐ活動中。

Web: http://renclub.net
E mail: renclub@gmail.com
動画: youtube.com/user/renclub
UST:ustream.tv/user/obiyoshiyuki

 

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