第66回 えびす講

書家れんのつきいち年中行事
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第66回 えびす講

ご機嫌いかがですか、れんです。

ここのところ書道教室では「ペン字」の受講が少しずつですが増えています。海外在住で日本語の使用が相対的に減少していますし、パソコンや携帯電話利用の比重の高まりで自ら文字を書くこと自体がなくなっていますので、それに対しての危機感も理由の1つでしょう。

また、日本人が日本語を自筆でしたためることは、やはり自己の再確認になります。「書は人なり」とか「字は体を表す」とか言いますが、自筆の文字は本当にその人を表していると思います。文字診断というほどではありませんが、長年書いた文字と付き合っていると、書き手のおおよその性格も分かるようになってきました。書道教室では皆さんの書を見て意外な指摘ができるかもしれませんね。

さて、ご存知のように10月は別名を神無月と言います。この月は日本中の神様が出雲大社に集まって1年のことを話し合うので、出雲以外に神様が居なくなるということでこの名前が付いたと言われています(もちろん出雲では「神在月」と言います)。

けれども出雲に行かない神様もいるんですね。居残りをするので「留守神」と呼ばれているのは七福神の一柱である「えびす神」です。えびす様は狩衣を着て右手に釣竿を持って左脇に鯛を抱えていますよね。それで海神様というイメージがありますが、商業や農業の神様としてもお祀りしています。このえびす様に1年の無事を感謝して、五穀豊穣、大漁、商売繁盛を祈願する祭祀が「えびす講」(「講」とは同じ信仰を持つ人たちの団体)です。

愛知県名古屋市の熱田神宮では10月20日に「熱田恵比寿講社大祭」が行われます。これは神宮の境内にある上知我麻神社(かみちかまじんじゃ)とその両脇にある大国主社(おおくにぬししゃ)、事代主社(ことしろぬししゃ)を崇敬する人々で組織されている熱田恵比寿講社の祭です。熱田のえびす様は東海地方で広く信仰されていて、熱田神宮の公式サイトによれば、祭典には多数の議員が参列し、恒例の福引大会でにぎわうそうです。

東京は日本橋本町の宝田恵比寿神社では「べったら市」が開催されます。江戸時代中期ごろから、20日のえびす講にお供えするため立てられた市で、糀(こうじ)をべったりと付けた浅漬け大根が売られたことからそう名付けられました。現在は神輿や山車も出る盛況ぶりだそうです。また足利(栃木)や高崎(群馬)のえびす講など、11月に行われるところもあります。

では作品をご覧ください。仮名3文字「え」「び」「す」ですが、これらの元の漢字をご存知でしょうか。草書体からの変化ですが、それぞれ「衣」「比」「寸」になります。大きくデフォルメを加えてありますが、なるべく面影が残ればいいなと思いながら書きました。

今回は真ん中の「ひ」を横に張って上下の「え」「す」を縦長にするよう試みました。「ひ」の両端のつまみ部分を伸ばすのか、左の作品のように真ん中の曲線部分を広げるのかでずいぶん雰囲気が変わります。いろいろ自分でやってみて、ほかの文字との関わり合いを見ながら、最終的な方向を決めるといいでしょう。

いよいよ夏の到来ですね。バリバリ活動できるように、健康には十分注意して頑張りましょう。

今月26日はキャンベラの奈良パークで燈籠祭が行われます。この機会にキャンベラにも出かけてみてはいかがでしょう。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。東日本復興支援「プロジェクト名もない絆」のメンバーとして支援地と被災地をつなぐ活動中。

Web: renclub.net
Email: renclub@gmail.com
動画:youtube.com/user/renclub
UST: ustream.tv/user/obiyoshiyuki

 

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