第63回 野馬追

書家れんのつきいち年中行事
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第63回 野馬追

ご機嫌いかがですか、れんです。

シドニーはすっかり冬模様ですね。教室の窓から見える大きな街路樹が、夏に茂らせた青々とした葉をこの時季に全部なくしてしまうと、空気がぐっと冷え込んだ気がします。寒いのが苦手な私にはしばらく我慢の季節です。

夏の日本、7月は福島県の旧相馬中村藩(現相馬市・南相馬市・双葉郡)で500騎余りも馬を集める国内唯一の行事である「相馬野馬追」が開催されます。24・25日に神事、そして最終週末の7月27〜29日に祭りが行われます。名前の通り馬を追う神事・祭りで、神事は重要無形民俗文化財に指定されています。

相馬氏は先祖に桓武平氏を仰ぐ名家で、江戸時代終焉まで700年以上にわたって彼の地を統治していました。『相家故事秘要集』によると、その遠祖である平将門が領内(下野国相馬郡)に敵兵に見立てた野生馬を放って軍事訓練をしたのが起源とされています。その後、鎌倉幕府による取り締まりから「神事」として免れたり、戊辰戦争の敗北(1868年)による一時消滅から復活したりして、1,000有余年も受け継がれてきています。

初日は宵祭り。相馬中村神社をはじめとする三神社で出陣式が行われ、軍歌(相馬国歌)である「相馬流れ山」を斉唱します。中日の本祭りでは「お行列」と呼ばれる約3キロに及ぶ騎馬行軍の後、「甲冑競馬」や「神旗争奪戦」が、そして最終日にはたくさんの馬の中から神様に奉納する馬を決める「野馬懸」が行われます。

福島の東京電力福島第1原発から半径20〜30キロ圏内で行われることから、執行委員会が「観覧を勧めるものではありません」と断りを入れながらも、地元の人々の心の拠り所として震災直後の2011年にも開催されました。昨年は震災前の2010年(約3万8,000人)を上回る、約4万2,000人の観客があったそうです。地元の神に祈りつつ、皆の心を祭りで1つにして、復興に向けて進んでほしいですね。

では作品の解説を。「野馬追」をひと続きの行書で書きました。正確には視覚的に切れているところがありますが、筆を高く上げたために紙から離れただけで、気持ちは繋がっています。1字ごとの区別がつきにくいこういった行草書の連綿体は中国の明時代辺りから流行し、特に長い紙の条幅作品で見られます。時には前の文字に食い込むように、双方の距離を極端に縮めて進みます。いくつかの文字の集合をもってひと塊とするようなイメージです。文字各々の特徴をよく理解した上で、可能な限りのバランス調整を行いながら、巧みな空間処理を試みます。その一連の行為がリズム感溢れるものになると素敵な出来栄えになるでしょう。

一見“落書き”に見えるこの書にも留意している点があります。まず縦画を横画より太くして軸をはっきりさせました。縦画の左への傾きが強い右上がりの横画を支えています。

また「野」の「予」で右へ展開したので、「馬」の4つ並ぶ点画の最左と「追」のしんにょう1、2画目で受けて、全体を締める形にしました。

思い通りにいかないところを何とかしようと追究するのが面白さです。冬の夜長に書の奥の深さを学んでみるのも一興ですね。

ところで今月26日〜8月8日まで、チャッツウッドのザ・コンコース内のARTSPACEで、3年ぶりの個展を開催します。茶道の茶掛からモダンな作品まで「書」の広がりをご紹介できればと思います。どうぞお誘い合わせてお越しください。


著者プロフィル
れん(書家/アーティスト)

アーティストとして永住権取得。2010年、作品「ふるさと」が日本の国有財産として在豪日本国大使館に収蔵される。Government Houseでの企画展など日・豪・ドバイで作品展示多数。在豪日本国大使館、在オークランド日本国総領事館の招聘によるイベント参加やNSW州立美術館ほか各地で大書パフォーマンスやワークショップを展開。ハリウッド映画『The Wolverine』の製作に書家として参加。書団れん倶楽部主宰。チャツウッドで書道教室運営(月〜土)。東日本復興支援「プロジェクト名もない絆」のメンバーとして支援地と被災地をつなぐ活動中。

Web: renclub.net
Email: renclub@gmail.com
動画:youtube.com/user/renclub
UST: ustream.tv/user/obiyoshiyuki

 

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