2大女優競演! ケイト・ブランシェット×イザベル・ユーペル


Isabelle Huppert and Cate Blanchett in Sydney Theatre Company’s The Maids. ©Lisa Tomasetti 2013

2大女優競演の舞台劇に話題集中
『メイド/THE MAIDS』

 

ケイト・ブランシェット&イザベル・ユーペル

 
 
 1998年公開の映画『エリザベス』の成功で一躍国際的に名が知られるようになった豪女優ケイト・ブランシェット。その後の映画女優としてのキャリアも順調で、2004年公開の『アビエイター』では大女優キャサリン・ヘップバーンを演じてオスカーもゲット、揺るぎない国際演技派スターとしての地位を確立した。
 
 が、08年に映画出演を一時休止。夫であるディレクターのアンドリュー・アプトン氏とともに、オーストラリアの名門劇団「シドニー・シアター・カンパニー」のディレクター、女優として舞台に専念することを発表した際、心地良い衝撃が走った。いわゆる“ミリオン・ダラーズを稼げる”映画を捨て、“ミニマム・ペイ”の演劇の世界に没頭する女優魂に多くの人が感心した次第だ。しかし、それも今年が最後の年。
 
 一方、イザベル・ユーペルは、オーストラリアでも日本でもそれほど知られていないが、本国フランスでは、年代は違うがあのカトリーヌ・ドヌーブに匹敵するほどの大女優。
 
 この2人の大女優の夢の競演が、シドニーで『メイド』という演劇で実現した。


 

 日本でも『女中たち』というタイトルで過去に上演されている同作品は、ジャン・ジュネ(1910-1986)による舞台劇。ジュネは一部の人たちからは圧倒的な支持を得ているが(例えば三島由紀夫)、カラフルな人生行路で特異なフランスの作家、詩人、劇作家である。
 
 実際に起きた事件を元に創作されたという『メイド』のストーリーを簡単に説明すると、金持ちのミストレス婦人の家にメイドとして住み込みで働いている姉妹は、近親相姦にも似た、愛憎関係にある。ミストレスに対する2人の羨望と激しい憎悪。それは殺意にまで到達する。3人の女たちの赤裸々な感情の激しいぶつかり合いが、この舞台のすべてだ。
 
 さて、見終わってまず感じたのは、これは現代に通用するのかなという軽い疑問。まず日本でのタイトル『女中』という言葉が既に死語のように、ここで浮き彫りにしようとする階級の衝突、貧富の衝突(と思う)にどれぐらいの実感があるのだろうという思いだ。
 
 フランスはもちろん断固とした階級社会なので、この舞台にシンボリックな意味でも実感できるのだろうと推測できるが、日本やオーストラリアではどうだろう。日本でなら「メイド喫茶」というのがあるぐらいだから、パロディとしてとらえられるかもしれない。
 
 例えば、江戸時代に遡ってまでとは言わないが、『女工哀史』や『あゝ野麦峠』の時代に、大富豪に囲われているお妾さんがいたとする。そこに貧農の村から住み込みで女中として働いている姉妹。この3人の女たちが繰り広げる、羨望と憎悪がついには殺意さえ生むことになるというおどろおどろしいドラマは、なるほどと理解はできるが、実感するのは難しいのでは。

シドニーの舞台が、これまでの各国の舞台と一線を画しているのは、舞台中央上部に大きなスクリーンを取り入れている点だろう。出演者たちの喜怒哀楽の表情がスクリーンにクローズアップされる。これは個人的にはマルだが、映画を観に来たんじゃない、舞台を観に来たんだと文句をいう演劇ファンもいるかもしれない。
 
 それから重箱の隅を突つくようなことを、と言われるかもしれないが、2人姉妹の1人(ブランシェット)はキングズ・イングリッシュで、もう1人(ユーペル)がフレンチ・アクセントのイングリッシュなのはなぜ、と頭をかしげる人がいるかもしれない。ちなみに一緒に舞台を観たオージーは、ユーペルの英語は3分の2ぐらいしか分からなかったと言っていました。
 
 最後にブランシェットとユーペルの競演の軍配は? ——互角の勝負。2人とも舞台に出てくると、観客の目を釘付けに。それだけのカリスマ性を持った存在です。
 
 この舞台はあれこれ言うよりも、ブランシェットとユーペルの2大女優の競演を実際に観ることに大きな意義があるのではないだろうか。特にブランシェットの生の舞台を観たというだけで、在住者、ワーホリ・メーカー、ツーリストを問わず、オーストラリア滞在中の貴重な経験となるに違いない。
 
 千秋楽は今月20日。日によってはまだ席のある日があるので、ぜひお早めにSYDNEY THEATER COMPNEYのサイトからご予約を。

(編集部)

 

 

INFORMATION
THE MAIDS
▼上演:開催中~7月20日(土)
▼会場:Sydney Theatre
▼料金:$50~105
▼予約Tel:(02)9250-1777
▼Web:www.sydneytheatre.com.au/what%27s-on/productions/2013/the-maids.aspx

 

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