『メリー・ポピンズ/MARY POPPINS』,『My Wonderful Day』

『Madama Butterfly/喋々夫人』
今月のシアター・レビュー

Musical

魔法にかかったようなファミリー・ショー

『メリー・ポピンズ/MARY POPPINS』

  キャメロン・マッキントッシュ&ディ ズニー制作のミュージカル『メリー・ ポピンズ』がついにシドニーに登場。 2010年7月にメルボルンでオーストラ リア公演がスタートしてから今年の4月 1日までの9カ月間、「道徳心に溢れた 心温まるストーリー」「カラフルでス ペクタクルな舞台」「抜群な歌と踊り と演技」などと大好評を博し、タイト ルの知名度に違わず50万人以上の観客 を動員、連日満席を記録した。
 制作はロンドン公演のクリエイター らによるもので、劇と映画の演出にか けては抜群のイギリス人リチャード・エ イヤーが演出を担当した。
 1964年に封切りされたウォルト・ディ ズニー映画『メリー・ポピンズ』が記憶 にある人も多いだろう。
 その40年後の2004年12月に、ミュー ジカル『メリー・ポピンズ』がロンドン のプリンス・エドワード劇場で開幕、好 評のうちに08年1月まで公演された。06 年10月にはブロードウエイでも上演を 開始。ミュージカルでは映画で作詞・作 曲されたシャーマン兄弟による有名な曲 に加えてさらに8曲の新曲が登場する。
 「チム・チム・チェリー」「お砂糖ひと さじで」「2ペンスを鳥に」などのほ か、「スーパーカリフラジリスティッ クエクスピアリドーシャス」は再アレ ンジされて計6分のロング・ナンバー に。その歌と全キャストがそろう迫力 のダンス・シーンが見ものだ。
 幕が上がると、象徴的な鉛色のロン ドンの街からテクニカラーのファンタ ジーの世界まで舞台がさまざまに移 り、楽しさと驚きが満載。物語の舞台 となるバンクス一家が住む邸宅は、1階 に居間とキッチン、2階に子どもたちの寝室、そして屋根裏があり、立体型絵 本のような作りになっている。
 主役のメリー・ポピンズを演じるのは ヴェリティー・ハント― バラード(Verity Hunt-Ballard)。ミュージカルの主役を 多くこなしてはいないが、透き通るよう なきれいな声とメリハリの利いた演技と ダンスで抜擢され、彼女独特のメリー・ ポピンズを演じている。メリーがパラソ ルを持って空へ飛び立つラストシーンは 圧巻だ。
 陽気な煙突掃除人のバートを演じる のはマット・リー(Matt Lee)。ミュー ジカル界ではキャストのみならず振り 付けもするマルチ・タレントだ。劇中、 彼が舞台の壁を真横によじ登って行 く、その姿をお楽しみに。
 バンクス家の父親を演じるフィリッ プ・クアスト(Philip Quast)はロンド ンでも活躍する有名な俳優。仕事し か頭にないバリバリの銀行家を演じ る。バンクス夫人にはミュージカルで は第一人者クラスのマリア・プリオア (Maria Prior)。子どもにお手上げの 上品な上級家庭の夫人役を演じる。
 そのほか、アンドリュー夫人にオ ペラ歌手のジュディ・コネリー(Judi Connelli)、鳥飼の女には久しぶりに大 型ミュージカルに登場したデブラ・バー ン(Debra Byrne)と、いずれも一流の オーストラリア人タレントが集結した。
 出演者が10歳から72歳までのタレン トたちとくれば、観客もほぼ同じ幅広 い年齢層。「ほかにも優れたミュージ カルはあるが、これほど年齢幅が広い 観客を魅了するミュージカルはない」と 演出家のエイヤー氏が自負する通り、 数々の名曲とテンポの良いダンスに、 子どもも大人も心ゆくまで楽しめるミュージカルと言える。
 超一流のクリエイティブ・チームによ る制作と優れたキャストのパフォーマ ンスが見事にマッチした、隙のない素 晴らしい出来栄えだ。

■ストーリー
  1920年、ロンドンのチェリー・トリー・ レーンに住むバンクス一家。銀行家でワー カホリックな父親と政治活動に夢中の母親 は2人の子ども、ジェーンとマイケルをか まう時間がない。乳母任せの子どもたちは わんぱく盛りで、どんな乳母も長続きしな い。子どもたちは理想的な乳母の条件を書 いた紙を父親に見せるが、父親はストーブ に捨ててしまい、紙は煙突から空高く飛ん で行ってしまった。
 翌日、パラソルを開いた若い女性、メ リー・ポピンズがその紙を持って空からやっ て来る。子どもの夢を叶えるために乳母役 を引き受けたのだ。メリーが乳母になって からというもの毎日が楽しい休日に変わ り、煙突掃除人のバートも加わって、不思 議な楽しい世界がくり広げられる。やがて 厳格な父親も笑顔を取り戻し、仕事より家 庭を選ぶように。 一家に幸せが戻ってきたことを確認したメ リー・ポピンズは役目を終え、またどこかに 幸せを招きに空へと飛び去っていく。
『メリー・ポピンズ』の作家、 P.L.Traversはオーストラリア人
  メリー・ポピンズを書いた人は、実は オーストラリア出身だったことをご存 知だろうか?1899年QLD州のマリーボ ローに生まれたヘレン・リンドン・ゴフ (Helen Lyndon Goff)がその人。トラ ヴァースの父親は銀行員だったが大酒 飲みのため1907年に早世。彼女が9歳の 時に母と妹2人とでNSW州ボウラルに移 り、親戚の家に世話になった。
 トラヴァースは母親が母親らしく子ど もの世話をしなかったことに強く不満を 抱いた少女時代を送った。1924年ロンド ンへ渡り、P.L.Traversの名で作家活動を 始める。そして34年に「メリー・ポピン ズ」を出版、一躍ベストセラーに。
 64年にウォルト・ディズニーによって 映画化された『メリー・ポピンズ』は彼 女を裕福にはしたが、ディズニーによる 映画を嫌い、関係を断ち切ったと言われ ている。ミュージカル化はキャメロン・ マッキントッシュが自らトラヴァースを 説得したことで実現可能となった。時は 93年、トラヴァースは93歳だった。
  オーストラリアには63年に2週間帰国 したのみ。故郷にあまりいい思い出がな かったのかもしれない。
information
▼会場:Capitol Theatre, 13 Campbell St., Haymarket NSW
▼日程:6月1~5、8~12、15~19、22~26、29・30日、7月1~3 日、6・9・10日、13~17日、20~24日、27~31日、8月3~7日、10~14日、17~21日、24~28日
▼料金:$45~$127.50
▼ チケット予約:1300-558-878、www.disney.com.au/marypoppins、または1300-723-038、www.ticketmaster.com.au

『My Wonderful Day』
今月のシアター・レビュー
(Photo: Steve Lunam)

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家庭内のいざこざを楽しくさわやかに描いた喜劇

『My Wonderful Day』

 女癖の悪い夫と苛立つ妻…。普通な ら劇の題材にしようとも思わない家庭 の問題を一級品の喜劇に仕上げたの が、この『My Wonderful Day』だ。喜 劇にかけては第一人者のイギリス人劇 作家、アラン・エイクボーンの手にかか ると、目も当てられない家庭でのごた ごたが楽しくおかしいコメディーへと 変貌を遂げる。
 『こちらがあたしのお父さん (Relatively Speaking)』『ばらばら (Confusions)』『ドアをあけると… (Communicating Doors)』などの代 表作で知られ、発表されると同時に好 評を博す喜劇の達人と称されるエイク ボーン。『My Wonderful Day』は、70 歳を超えてなお精力的に作品を世に送 り出している彼の73作品目となる。
 2009年にロンドンとニューヨークで 上演され、オーストラリアでは初公演。 アナ・クロフォード演出によるプロダ クションは、照明や音を効果的に活用し ながらモダンなセンスが光るシンプルな 現代劇に仕上がっている。キャストはま さに適材適所の配役といったところ。
 浮気には大胆だが、恐妻家の人気 テレビ・タレントのケビン役にマーク・オーウェン-テイラー(Mark Owen- Taylor)。短気で怒ったら自分をコント ロールできないこと自覚している、気 が強いケビンの妻ポーラを、ダニエラ・ カーター(Danielle Carter)が演じる。
 ケビンの秘書で愛人でもある、美貌 と愛嬌の持ち主ティファニーをコミカ ルに演じるのはマチルダ・リッジウェ イ(Matilda Ridgeway)。イージー ゴーイングなケビンの飲み友達のジョ シュは、ブライエン・メーガン(Brian Meegan)が軽妙に表現する。いずれも アンサンブル劇場で数々の舞台を踏ん できたキャストたちだ。
  さらに、話好きな掃除婦ラヴァーン にはシャリーナ・クラントン(Shareena Clanton)。ラヴァーンの娘で物語のカ ギを握る9歳の少女ウィニーにはベリン ダ・ジョンウィー(Belinda Jombwe)が 配された。“フランス語しか話さない”と 無邪気に言い、多くを語らない少女役 を、表情豊かな目で巧みに演じるベリ ンダに注目だ。
 初めから終わりまで息の合ったキャ ストたちのテンポのよい演技で進む90 分間。夫婦の掛け合いや間の取り方は もちろん、友人や掃除婦を巻き込んで の騒動に笑わずにはいられない。
■ストーリー
  9歳の少女ウィニーは体調が優れないので 1日学校を休み、掃除婦をする母親ラヴァー ンの仕事場に一緒にやって来る。出産を間近 に控えた母は平気で仕事をするが、ウィニーは心配だ。
 仕事場はテレビの人気タレントのケビン と妻のポーラが住む邸宅。ウィニーは『My Wonderful Day』と題したエッセイの宿題が ある。それとその日は母とフランス語で話す 日でもあった。
 2人は妻のポーラが荷物をまとめて家を出 た、とあたふたしながら電話で話すケビンと 会う。掃除婦どころの騒ぎではなさそうな気 配だ。しばらくするとブロンドの若い女性、 ティファニーがやって来た。飲み友達のジョ シュも来てケビンから状況を聞いている。3 人はウィニーがフランス語しか話せないと思 い、英語で好き勝手なことを話していた。
 そうこうするうちに母のラヴァーンが陣痛 を訴え、救急車で病院へ送られてしまう。心 細くなり英語を話し出すウィニー。残された ウィニーの面倒を見るはめになったのは、子 ども嫌いのケビン、同情心はあるが頼りがい のないティファニー、関心のないジョシュの 3人。
 ケビンとティファニーが2階の寝室に消 え、ジョシュはウィニーが作文を読み始める とこっくりと眠ってしまう。1人でエッセイ を書いていると、突然ケビンの妻ポーラが 戻ってくる。子ども心にも状況が分かるウィ ニーは、2階の寝室に行かないようポーラを 止めるが…。
 ポーラはウィニーの母がいる病院に彼女を 連れて行く。弟を出産した母と再会し、エッ セイを読んでくれと頼む母にウィニーはその 日に起こった出来事を読み始めた。
information
▼会場:Ensemble Theatre, 78 McDougall St., Kirribilli NSW
▼日程:6月1~5日、7~12日、14・15日、16~ 18日、21~25日
▼料金:$27~67
▼チケット予約: (02)9929-0644、www.ensemble.com.au 

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