「ウエスト・サイド・ストーリー」他

Theatre Information

West Side Story
今月のシアター・レビュー
Photo: Branco Gaica


エネルギッシュなダンスで綴る悲恋ものがたり
永遠のミュージカルが今よみがえる
「ウエスト・サイド・ストーリー」



 ベビー・ブーマーズの世代であれば、映画『ウエスト・サイド物語』を見て感激した人は多いはずだ。今からほぼ50年前の1961年、か細い体でダイナミックに踊るベルナルド役のジョージ・チャキリス、可憐なマリアを演じるナタリー・ウッド、血の気の多いラテン女性アニタを演じるリタ・モレノがたくさんの人を熱狂させ、センセーションを巻き起こした。この映画は世界的な大ヒットとなり、第34回アカデミー賞では作品賞をはじめ10部門で受賞した。
 もともとこの映画のオリジナルは同名のブロードウェイ・ミュージカルであり、映画が封切られる4年前の1957年に、ウインター・ガーデン・シアターで初演されている。1958年12月にはロンドンのウエスト・エンドのハー・マジェスティーズ・シアターで初演され、公演回数1,039回を記録する大人気となった。その後世界各地で公演が重ねられ、1980年のブロードウェイでのリバイバル公演では333公演を行った記録も持つ。
 シェイクスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』に着想を得て、ニューヨークを舞台にした作品コンセプトを固めたのはジェローム・ロビンス。ダンサー兼振付師、そして演出家でもあるロビンスが原案を作成。アーサー・ロレンツによる脚本、クラシック界の巨匠レナード・バーンスタインによる音楽、スティーブン・ソンドハイムの作詞と、超豪華なクリエイターたちの才能が結集して一世を風靡する作品は生まれた。
 バーンスタインの「アメリカ」「トゥナイト」「マリア」「アイ・フィール・プリティ」など、1度聞いたら忘れられない数々の名曲と、ロビンスが振り付けるエネルギッシュでダイナミックなダンス。「ウエスト・サイド・ストーリー」は、まさにミュージカルの金字塔といえよう。
 今回のシドニー公演は、50周年記念公演としてヨーロッパや日本をはじめとするアジアを巡回したマイケル・ブレナー制作BBプロモーション主催の世界ツアーの一環。シドニー公演に続き8月19日からはメルボルン公演、そしてパース、ブリスベン、アデレードへと巡回する。オーストラリア公演は、オリジナルのアーサー・ロレンツ演出に基づいてジョーイ・マクニーリーが演出・振り付けをし、若手オーストラリア人キャストによるエネルギッシュな演技とダンスが特徴。クラシックなブロードウェイのダンス・ミュージカルが現代センスにマッチして、50年前の作品とは思えないほど斬新に仕上がっている。
 主役のトニーを演じる甘いルックスのJosh Pitermanと、マリアを演じる美声の持ち主Julie Goodwin。恋人を演じる2人の息の合った歌やダンスが魅力的だ。個性的なアニタにはAlinta Chidzey、歌も演技もダンスも素晴らしい3拍子そろったタレントだ。バーンスタインの名曲の数々はオーケストラの生演奏で奏でられる。舞台装置は、ニューヨークのアパートを模した非常階段を両端に置き、映像で舞台背景が中央に映し出される。世界ツアーの移動の多さを考慮したためか、比較的シンプルなデザインであるが、場面を盛り上げる効果はたっぷり。
 シドニーを皮切りにオーストラリアを巡演する「ウエスト・サイド・ストーリー」は、全都市でミュージカル旋風を巻き起こすであろう。
information
シドニー公演
▼会場:Lyric Theatre, Star City, Pyrmont
▼日時:8月15日までの火?土8PM、水1PM、土2PM、日3PM
▼料金:$80~$120
▼予約:1300-795-267またはticketmaster.com.au(Ticketmaster)
メルボルン公演
▼会場:Regent Theatre, 191-197 Collins St. Melbourne
▼日時:8月19日?9月26日火?土8PM、水1PM、土2PM、日3PM
▼料金:$80~$120
▼予約:1300-795-012またはticketek.com.au(Ticketek )
◆ストーリー
【第1幕】
 1950年代、ニューヨークのダウンタウンにあるスラム街。そこには移民同士の人種差別や非行少年の問題が渦巻いている。イタリア系移民の若いギャングが結束する「ジェット団」は、最近力をつけてきたプエルトリコ系の「シャーク団」と一触即発の敵対関係にある。ジェット団のリーダーであるリフは、体育館で開かれるダンス・パーティーの場でシャーク団のリーダー、ベルナルドに決闘を申し込むつもりだ。リフはドラッグストアに勤める元団員のトニーにパーティーに来るように頼む。一方、ベルナルドの妹マリアは団員のチノと結婚するため1カ月前にアメリカに来たばかり、兄の恋人アニタとブライダル・ショップで働いている。
 ダンス・パーティー当夜、ジェット団とシャーク団は2つに分かれてダンスを踊っていたが、やがてマンボのリズムに乗ってダンス合戦となる。そこで初めて顔を合わせたトニーとマリアは、一瞬で恋に落ちる。無理やりマリアから引き離されたトニーは、うわごとのように彼女の名前をつぶやき、「マリア」を歌う。その夜、トニーは夢中になってマリアの居所を探し出し、再会した2人は非常階段で「トゥナイト」を歌うのだった。
シャーク団の若者たちはアメリカへ移住した時の期待や故郷に錦を飾る夢を語り合うが、一方、自由が楽しめるアメリカを称賛して母国を嫌悪する女性たちは「アメリカ」を歌う。
 夜中、2つのギャング団は決闘の取り決めを話し合っていた。決闘は素手で行われることに決定。翌日、ブライダル・ショップを訪れたトニーに決闘のことを聞いたマリアは、たとえ素手でも決闘はやめるようにトニーに約束させる。トニーはそれを受けて決闘場へ向かうが、決闘は既に始まっていた。リフとベルナルドはナイフを持ち出し、気をとられた一瞬にリフはベルナルドに刺され、逆上したトニーはリフのナイフでベルナルドを刺す。
【第2幕】
 シャーク団の女性が着飾ってデートの準備をしている。そこにマリアが現れて決闘は中止となったと伝え、結婚式を夢見て「アイ・フィール・プリティー」を歌う。
 チノは決闘でベルナルドがトニーに殺害されたことを皆に知らせ、銃を手にしてトニーへの復讐を誓う。マリアがトニーと一緒にいたことを知ったアニタは、自分の恋人であり、マリアの兄であるベルナルドを殺したトニーのことは忘れろと言うが、マリアのトニーに対する愛情の強さに負けて、チノがトニーに復讐しようとしていることを教える。マリアにトニーへの伝言を頼まれたアニタはジェット団が取り巻くドラッグストアに行くが、団員たちはアニタを信じず、暴行しようとする。ドラッグストアの店主に救われたアニタは怒りに燃え、「マリアはチノに殺された」と嘘を言って走り去る。それを聞いたトニーは「僕も殺せ」とチノを探し回る。やがてマリアの姿を見つけて近寄ろうとした瞬間、トニーはチノの銃弾に倒れ、マリアの腕の中で息絶える。マリアはチノから拳銃を奪い取り、ジェット団とシャーク団の皆に銃口を向けて「皆が殺した。トニーも兄もリフも」「この憎しみは私も人殺しにさせる。1発を自分に残して皆を殺すわ」と叫び、泣き崩れる。ジェット団とシャーク団のメンバーが一緒になってトニーの遺体を持ち上げて運び、皆がその後を付いて去って行く。

The Marriage o Figaro
今月のシアター・レビュー
Photo: Branco Gaica


何度観ても楽しいオペラ
豪華スター共演でさらにパワーアップ
フィガロの結婚「The Marriage o Figaro」



 何度観ても飽きないオペラの1つといえば「フィガロの結婚」。浮気や不倫をめぐる喜劇が、モーツァルトの美しい音楽で描かれた陽気で楽しい作品だ。
 モーツァルトの代表作ともいえる「フィガロの結婚」は世界中でこよなく愛され、上演され続けている人気作品で、「セビリアの理髪師」の続編でもある。さまざまな人物が登場し、めくるめく人間模様が描写される。複雑に込み入ったストーリーだが、至るところに「笑い」が取り込まれていて、何度も観ても楽しい。
 音楽は有名な序曲に始まり、フィガロのアリア「もうとぶまいぞ、この蝶々」、ケルビーノのアリア「自分で自分がわからない」「恋とはどんなものかしら」など、数々の素晴らしいアリアが散りばめられている。よく知られたアリアが多いことと、二重唱、三重唱、七重唱ありで、フィナーレを飾るアンサンブルなど聴きどころたっぷり、見どころたっぷりの不朽の名作と言える。
 劇やオペラの演出で才能を発揮するニール•アームフィールドが、2001年に演出•初演したプロダクションのリバイバル作品である今回のオペラ点オーストラリアの公演は、豪華スター級のオペラ歌手による共演でも注目されている。
 フィガロ役は歌も演技も抜群のバリトン歌手、テディ•タフ•ローズ。持ち前の声量を発揮してアリアを歌い、役をひょうきんに演じる。スザンナ役は歌唱力•演技力とも備わったソプラノ歌手のタリン•フィービッグが、かわいい召使いを上手く表現。この主役2人の息の合ったパフォーマンスが見ものだ。
 浮気心旺盛な伯爵を演じるバリトン歌手のペーター•コレマンーライトは権威者を演じれば抜群の歌手だが、間の抜けた伯爵を巧みに演じて笑いを誘う。
 また、デール•ファーガソンによる、キャンバス地のカーテンを大胆に舞台いっぱいに使った効果的な舞台デザインと、豪華でエレガントな衣装がセンスよくマッチ。優れたキャストによる歌と演技、パトリック•サマーズ指揮による音楽性に炊けたオーケストラの演奏ー。ドラマ性に優れた音楽で綴るオペラ•オーストラリアの「フィガロの結婚」は一見の価値がある。
◆ストーリー
 元は理髪師で今は伯爵(Peter Coleman-Wright)の従僕であるフィガロ(Teddy Tahu Rhodes)が、伯爵夫人(Rachelle Durkin)の侍女のスザンナ(Taryn Fiebig)と結婚をする日。夫人とは愛が冷めた伯爵がスザンナに逢い引きをしようとすることから大きな波乱を招くことになる。フィガロと伯爵夫人は伯爵に仕える恋多き思春期の少年、ケルビーノ(Sian Pendry)も巻き込んで浮気者の伯爵をこらしめようとする。不倫騒動から次々と起こるドンデン返しの連続。しかしやがては愛の本質が見出される。
information
▼歌:イタリア語、英文字幕付
▼上演時間:20分の休憩を含む3時間20分
▼上演:8月4ー7(マチネ)、10•14•16•18日、9月14•17•22•25•30日、10月2•7•9•14•16•20•23日(マチネ)
▼時間:7:30PM、マチネ1PM

The Girl of the Golden West
今月のシアター・レビュー
Photo: Branco Gaica


プッチーニの音楽で綴る西部劇
西部の娘「The Girl of the Golden West」



「トスカ」「蝶々夫人」「ラ•ボエーム」「トゥーランドット」などに代表されるプッチーニ作曲のオペラは、悲劇のヒロインを主役としたロマンチックなストーリーを叙情的な旋律で描いたものが多い。
 そのプッチーニがアメリカの西部劇に注目して作曲したのが、この「西部の娘」。1910年にニューヨークのメトロポリタン劇場で初演されたものの、プッチーニのオペラとしてはあまり人気がなく、広くは上演されていない。ゴールドラッシュ時代のアメリカ西部の金鉱山町を舞台に酒場の女主人ミニーを描いたこの作品は、叙情的な音楽でありながらも有名なアリアがなく、しかも西部の荒くれ男たちを演じる16人の男性オペラ歌手が登場することと、大型オーケストラと大掛かりな舞台セットが必要であることも影響してか、上演回数が少ないようだ。
 オペラ•オーストラリアで「西部の娘」が上演されるのは21年ぶりのこと。今回の公演、ナイジェル•ジェミソン演出による新しいプロダクション。マイケル•スコットーミッチェルによる舞台デザインは実に機能的で、床、天井、壁のすべてを灰色の太長の木材で作り、天井を上下に稼働させることで、光景を変える。
 ゾエ•アトキンソン•デザインによる衣装は、主役のミニーだけがカラフルな衣装をまとい、残りのキャストはすべてベージュや灰色などモノトーンにまとめて、鉱山町の飾りのない単調な生活を描き出す。
 登場する女性は主役のミニーとインディアンの女性ワウクルの2人で、ほかはすべて男性だ。ミニーを演じるアンケ•オプナー(Anke Hoppner)は、オペラ•オーケストラではおなじものドイツ人歌手。恋する女性、ミニーを持ち前の声量で時に甘く、時にパワフルに歌い、観客を魅了する。8月公演ではミニー役をジャクリーン•マバーディ(Jacqueline Mabardi)が代わって演じる。
◆ストーリー
 カリフォルニアの鉱山の町にある酒場「ポルカ」の女主人ミニーは荒くれ男に囲まれた生活をしているが、世話好きで皆から信頼されている。保安官のジャック•ランス(John Wegner)は結婚してほしいとくどくが、相手にされない。ある日、デック•ジョンソン(Carli Barricelli)という流れ者が酒場に来て、ミニーと意気投合し2人は恋に落ちる。しかし実は彼は盗賊の首領ラメレスであり、強盗殺人の罪で追われている身。ジョンソンは捕らわれ、死刑を執行される日がやってきた…。
information
▼歌:イタリア語、英文字幕
▼上演時間:20分の休憩を2回含む3時間
▼上演:8月3•6日
▼時間:7:30PM
【上記2作品】
▼会場:Opera Theatre, Opera House
▼料金:$65~$297
▼予約:(02)9318-8200 (Opera Australia Ticket Services) またはwww.opera-australia.org.au/ (02)9250-7777 (Sydney Opera House Box Office)

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