東京ファッションの現在形─「A New Era of TokyoFashion」シドニーで開催中

感じる服 考える服

東京ファッションの現在形
シドニーで開催中のインスタレーション展に潜入

服は着る物。展示するとしても、マネキンが服を着ているだけで、ただトレンドを伝えるのみ。そんな概念を打ち破る、東京ファッションのインスタレーション展が8月13日にまでシドニー市内パディントンのギャラリーで行われている。普段、服をデザインし販売するファッション・デザイナーたちが、服を通してどのようなことを訴えるのか。そしてそれをどう表現するのか。6月中旬に行われたオープニングで、2人のデザイナーに伺った話の内容とともに、全5作品の概要をご紹介したい。

THEATRE PRODUCTS

TAKEUCHI Akira / NAKANISHI Tayuka / KANAMORI Kao, THEATRE PRODUCTS, 2011 Courtesy Tokyo Opera City Art Gallery, Photo: KIOKU Keizo

お店がまるごと楽器に!

「洋服があれば世界は劇場になる」というコンセプトを持ち、2001年にデザイナーの武内昭さんと中西妙佳さん、プロデューサーの金森香さんが設立した「THEATREPRODUCTS」。ただ服を作って売るだけでなく、それがどのように作られて、人々の手に渡っていくのかというプロセスなどを作品化している。

今回の展示会の作品「La Boutique fantasque」は、一見するとただのブティックのようだが、実は店全体が“楽器”になっている。服やアクセサリーの商品タグにあるバーコードをバーコード・リーダーでスキャンしていくと、アイテムの組み合わせにより異なるメロディーが、店の横に備え付けられたスピーカーから流れてくるという仕掛けだ。


武内さんは、「服を作る過程でも販売する時でも、消費者の皆さんの知らないところで、たくさんドラマチックな出来事が起こっています。この作品では、約20〜30種類の音楽がプログラムされているのですが、いろんなアイテムを手に取ってスキャンし、音楽を耳にすることで、そのたくさんのドラマを感じていただければと思います」と話している。

武内昭さん

シアター・プロダクツ代表取締役/デザイナー。エスモードジャポン卒業後、株式会社コムデギャルソンのパタンナーを経て、2001年に有限会社シアター・プロダクツを設立。現在、京都造形芸術大学空間演出デザイン学科准教授。また、09年からメンズ・ブランド「パスカル・ドンキーノ」をスタート。

SASQUATCHfabrix.

YOKOYAMA Daisuke, ARAKI Katsuki [Wonder Worker Guerrilla Band] SASQUATCHfabrix, 2011, Courtesy Tokyo Opera City Art Gallery, Photo: KIOKU Keizo

社会的なメッセージが込められた

デザイナーの横山大介さんと荒木克記さんが2003年に設立した「SASQUATCHfabrix.」。出展デザイナーの中では唯一のメンズ・ブランドで、東京のストリート系ファッションを原点に、民族的なモチーフを取り入れている。

古着のレザー・ジャケットやパンツなどを解体し、実物大の牛の彫刻に貼り付けた。来豪した荒木さんに作品について紹介してもらうと、こう答えてくれた。「近年、ファスト・ファッションの業界が大きく成長していますが、安くたくさんの服を提供し消費する一方、とても無駄が多いと思います。また海外の紡績工場などから出る環境汚染も問題だと感じています。それらの思いや危機感を込めて、この作品を作成しました。使えなくなった牛革レザー・ジャケットをリサイクルしてあります。これらの問題を軽視するデザイナーたちは、デザイナーとは言えないと思います」

現代の消費社会のデザイナーやクリエーターに、より高い哲学や倫理が求められることをユーモラスに表現したこの作品は、鑑賞する側からしても、日々の消費生活を改めて考えさせられる重要な1作だ。

荒木克記さん

新潟県長岡造形大学でテキスタイル・デザインを専攻。卒業後は3年ほどアパレル会社で勤め、グラフィック・デザイナーとしてキャリアを積んでいた横山大介さんと後にビジネス・パートナーを組み、同ブランドを2003年に立ち上げた。また両者は「Wonder Worker Guerrilla Band」というアーティスト名で、幅広い芸術活動を行う。


Morinaga Kunihiko, ANREALAGE, wideshortslimlong, 2011 Courtesy Tokyo Opera City Art Gallery, Photo: Ishigaki Seija ‘blockbuster’
ANREALAGE

 

 

「real」「unreal」「age」を合わせて、「リアルでありながらリアルでない時代」という意味を持つブランド。「神は細部に宿る」というコンセプトを持ち、独特のスタイルのデザインを提案している。今回展示の作品は、2010/11年秋冬コレクションの「wideshortslimlong」に基づき、「基準の問い直し」がテーマになっている。果たして、今存在する洋服の丈の長さ、太さなどは絶対的か。定義を変えない限り新しい洋服は生まれない、と訴えかけている。


KATSUI Hokuto / YAGI Nao, mintdesigns, 2011 Courtesy Tokyo Opera City Art Gallery, Photo: KIOKU Keizo
mintdesigns

 

 

「服を1つのプロダクトとして提案する」ことをテーマに、遊び心のあるデザインを生み出し、日常生活で長く着られる服作りを目指している同ブランド。今回の作品は、2008/09年の秋冬コレクション「TRASH, SLASH, AND FLASH!」を用いたインスタレーションだ。ゴミ(TRASH)となってしまった紙をシュレッダーにかけ、洋服のデザインの中で再構築している。大量生産・大量消費に対するアンチテーゼを示すとともに、ゴミの中からも美しさを見出し、新たな価値を生み出した。


YAMAGATA Yoshikazu, writtenafterwards, 2011(撮影=編集部)
writtenafterwards

 

 

ファッションをさまざまな媒体で表現するブランド「writtenafterwards」は動物の剥製を用い、ある小屋で動物たちが秘密裏に新しい紙幣「0円紙幣」を織っている、という図を創り出した。ファッションが資本主義の象徴として位置付けられる中、そのイメージを打破し、3万年後のファッションを想像。新しい秩序、新しい紙幣、新しい価値観を表現している。日本ではライオンやリスの剥製が使用されたが、オーストラリアではカンガルーやポッサムが使用されている。


KATSUI Hokuto / YAGI Nao, mintdesigns, 2011, Photo: Brett Boardman

『Feel & Think: A New Era of Tokyo Fashion』

2011年、東京オペラ・シティで行われ、人気を博した展覧会。シドニーの展覧会では、豪州、アジア・太平洋地域、中東地域の現代芸術の保存・振興を目指す非営利組織「シャーマン・コンテンポラリー・アート・ファウンデーション(SCAF)」が、シドニー工科大学とナショナル・アート・スクールの協力の下、開催している。衣服だけでなく、さまざまなマテリアルや音楽を用い、一般的なファッションの概念を越えた芸術作品が展示されている。また、フラワー・アレンジメントのワークショップなどのイベントも開催されるので、こちらも見逃せない。

日時:開催中〜8月13日(火)月〜土10AM〜4PM
会場:National Art School Gallery, National Art School, Forbes St., Darlinghurst NSW
*イベントはSCAFで行われる(16-20 Goodhope St., Paddington NSW)
Web: sherman-scaf.org.au/idea/cultureideas-feel-think-events/

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