No.59 フリンダース島のダイヤモンド

タスマニア再発見
キリークランキー・ビーチ

タスマニア再発見

No.59 フリンダース島のダイヤモンド

文=千々岩健一郎

シドニーからの直行便でホバートに向かって飛んでくると、タスマニアの本島に到達する少し手前の洋上に無数の群島が目に入る。バス海峡のタスマニア北東部に存在するファーノー諸島(Furneaux Group)である。その中の最大の島がフリンダース島で、人口が900人、面積1,333平方キロ。日本で言えばちょうど淡路島の2倍ぐらいの大きさであろうか。島の名前は、1798年に初めてタスマニアの島を1周探検した英国の探検家マシュー・フリンダースに因んでいる。

今日紹介するのは、この島で採れるダイヤモンド。これは通称、「キリークランキー・ダイヤモンド(Killiecrankie Diamonds)」と呼ばれるものだが、実は本当のダイヤではなく、トパーズのことである。この島の北部にある美しい海岸キリークランキー・ビーチで採れるので、このような名前が付けられている。

フリンダースを中心にするこの群島付近は花崗岩の岩盤が露出する古い地質。トパーズは花崗岩などの火成岩の中にプリズム状の結晶として産出される。このキリークランキーのビーチには、花崗岩が風化してできた砂礫が広がり、スコップで掘り出して軽く水洗いをするだけで原石の粒が発見できるのだ。太陽にかざすと磨く前でもキラキラとしたその輝きの片鱗がうかがえる。

トパーズはモースの硬度表で、ダイヤモンド、サファイアなどに次いで3番目に硬い宝石である。石の性質によって、透明のもの、やや青みがかったアイス・ブルー、赤みがかったピンク・ゴールドといった色合いのものがある。ビーチの近くで、この宝石を採取して加工し、販売をしている人がいて、訪問すれば磨き上げて加工した製品を購入することも可能だ。

ビーチに行ってちょっと探るだけでこんな宝石が簡単に見つかってしまうというのは、まさにタスマニアならではというところだが、フリンダース島は、訪問するのがまずそんなに簡単な所ではない。ロンセストン空港から1日数回の定期航空便がある(またはメルボルンからの航空便)。しかしこのビーチは、空港のあるホワイト・マークから北に50キロ近く離れているので、何らかの形で車の確保が必要になる。数少ないレンタカーを借りるか、現地でツアーをやっているおばさんに連れて行ってもらうか。

フリンダースには、南方にタスマニアの国立公園では最小かつ最も訪問客の少ないストルゼレッキー(Strzelecki)国立公園があるが、私自身まだ訪問したことがない。そのほか、島の東岸にあるいくつかのラグーンや湿地は、野鳥、野生動物の保護区になっていて面白そう。また、空港からほど近いところにある「Walkers Lookout」に登れば、島の周囲360度を展望できる。


タスマニア再発見

 

千々岩 健一郎 プロフィル

タスマニア在住21年。1995年より旅行サービス会社AJPRの代表として、タスマニアを日本語で案内する同社の運営を行なうとともに、ネイチャー・ガイドとして活躍。特に植物関係の造詣が深く、その専門知識をもとに各種の自然観察ツアーやメディアのコーディネートなどを手がけている。北海道大学農学部出身。

新着記事

新着記事をもっと見る

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る