ワインは歌う、音楽のように

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ワインは歌う、音楽のように

 シドニーのラッパー、Skaseは若くて オーストラリア人であることを誇りに 思っている。そんな彼の思いは歌詞や オージー訛りに表れている。Michael、 ラッパー名「Skase」はアメリカ人にな りたいなんて思わない、生粋のオージー だ。Skaseがどんなワインを飲むのか知ら ないけど、僕にはSkaseの曲に合わせて飲 みたくなるワインがある。
 Skaseは自分に正直で、レビューや評論 にもよく耳を傾け、自分自身と向き合う ことを恐れない。彼の歌詞を聞いている と、それと同じくらい表現力があって、 正直なワインが思い浮かぶ。白なら絶対 リースリング。複雑なワイン醸造工程の 陰に隠れてしまうことなく、表現力に富 み、産地の特徴をよく反映している。 味わうのは潰れて発酵したブドウそのま ま。それでいいんだ。リースリングには 酸味もあるから、Skaseのパンチの効いた 歌詞とよく合う。
 こんな風に考えていくと、想像は無限 に広がる。アメリカやイギリスのラップ ではどう ? ジンファンデルや骨太のシ ラーズなんて合うんじゃない ? もしパス タを食べるなら、パバロッティを聴いて モンテルプチアーノを開ける ? スタン・ ゲッツにはシェリー、マドレデウスには “スティッキー”(貴腐ワイン)、ジャッ ク・ジョンソンにはロゼ ? まあ、皆さんに
お任せします !
 音楽とワインの面白い接点は、ムード を出すということ。皆さんが僕みたいに ちょっぴり敏感なら、レストランやコー ヒー・ショップでかかっている音楽によっ て、客の会話と店全体の雰囲気がどう弾む のか気になることでしょう。
 僕の場合、音楽とムード、ワインのす べてがそろった最も思い出深い体験は、 アデレードのペンフォールド・ワイナリー にある素晴らしいレストラン、「ザ・グラ ンジ」でのこと。良質のワインを楽しむ にふさわしい一流プロならではのサービ ス、そしてそれにマッチする選び抜かれ た音楽…。ゴティエやシガー・ロス、クラ シックなカフェ・デル・マー、ほかにも、 たくさんの曲がワインに幅と含みを持た せてくれた。
 ワインは歌う――。まあ、カラオケの ようにとはいかないけど、口の中でワイ ンはメロディーを奏で、何層もの刺激と メッセージを放つ。口をつける前から、既 にメッセージは届いている。ボトルとラベ ルを見て、スクリュー・キャップがカチン と音を立てる。ソムリエが赤ワインをデカ ンターするのを見て、アロマをかぐために グラスをくるりと回す。この複雑な曲は、 ボトルが空になるまでしばらく続く。そし て、その晩、ともにワインを飲んだ人の心 の中で鳴り続けるんだ。


ベン・ホルト
オーストラリア政府観光局日本地区マーケティング本部長。クイーンズランド大学で文学修士(日本語と韓国語)ならびに科学修士を取得後、在豪日系企業などで食品輸出、商品取引、マーケティングに従事。2002年から07年9月までオーストラリア・ワイン事務局日本代表を勤めたのち、現職。
Web: www.australia.com
(オーストラリア政府観光局)
Twitter: Mr_Riesling
Facebook: http://bit.ly/crsglP

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