デザート・ワイン

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

デザート・ワイン

どうしてデザート・ワインは甘く、そして高いのだろう。皆さんは考えてみたことはあるだろうか。実は、興味深いことに甘さと値段の高さは関連している。

まず甘さについてだが、ワインが甘く感じられる理由はいくつかある。ブドウは、収穫されたばかりの時に圧搾されると自然な甘さが生じる。ブドウ糖の甘さだ。この糖分は発酵の行程でアルコールに変わる。たいてい糖分のほとんどがアルコールに変わるため、辛口(ドライ)のワインができ上がるが、発酵行程を途中で止めれば甘さが残り、アルコール度が低いワインに仕上がる。モスカートなどがその例だ。こうして「甘いワイン」を作ることができるが、一般的にこの方法では「デザート・ワイン」にふさわしいコクと深みのある味を出すことができない。ただし、発酵過程ですべてアルコールに変えることができないほど糖度の高いブドウを使用すれば話は別だ。

これを作るには、ブドウ(この場合セミヨンかリースリング)を通常の収穫時より数週間長く置いておく。するとブドウはさらに熟し、糖度が増し、乾燥してレーズンのようになり始める。収穫せずに置いておくと、良質のチーズのように1種の菌が乾燥し始めたブドウに繁殖し、それが味を濃縮させ、深みを出す。この菌はボトリティス・シネレアといって、「貴腐」と呼ばれている。この菌が繁殖し「腐った」ブドウが収穫され圧搾されると、発酵後も甘さがふんだんに残り、豊かな香りを兼ね備えたワインができ上がる。これがデザート・ワインだ。

では値段の高いのはどうしてだろう。消費者は、物の価値を見出すことができればそれに見合った値段を支払うことに抵抗することはなく、むしろ異常な値段に同意することもある。「ブランド料」と言っていいだろうか。しかしブランド価値のほか、実際に生産するためのコストもある。デザート・ワインの場合、その生産コストは平均よりも高い。

ワイナリーでは、機械やその運営費、労務費など、ビジネスを運営するための固定コストが生じる。そしてそのコストは、ワインの生産量が多ければ多いほど、減ることになる。しかし、水分が蒸発し、糖分が凝縮されたブドウから造られた少量の液体しか含まないボトリティス・ワインの場合、リットルあたりの生産費は当然上がる。中には本当に「腐った」ブドウを房ごと丁寧に選りすぐっているワイナリーもあり、それにはさらに人件費がかかる。これらすべてのことが、最終的な商品の金額を左右するのである。

そのようなわけで、甘さと値段の高さには関係があるのだと思う。しかし大事なのは、デザート・ワインを冷やしてバニラ・アイスの上にかけ、値段のことを忘れて、相手との甘い時間を楽しむことだ。


 
ベン・ホルト

オーストラリア政府観光局日本地区マーケティング本部長。クイーンズランド大学で文学修士(日本語と韓国語)ならびに科学修士を取得後、在豪日系企業などで食品輸出、商品取引、マーケティングに従事。2002年から07年9月までオーストラリア・ワイン事務局日本代表を勤めたのち、現職。

Web: www.australia.com

(オーストラリア政府観光局)

Twitter: Mr_Riesling

www.facebook.com/Ben.Holt.69

 

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る