オーストラリアで話す日本酒のお話 新潟県の話

オーストラリアで話す日本酒のお話

第10回:新潟県の話

19年10月に開催されたシドニー酒祭りにて(右端が吉乃川の小野さん)
19年10月に開催されたシドニー酒祭りにて(右端が吉乃川の小野さん)

2020年の初めを飾る今回は、日本酒の蔵元数、そして1人当たりの消費量で堂々1位の新潟県のお話です。新潟の酒が日本全国で広く知られるようになったのは1980年代中頃から。この頃既にアルコールに親しんでいた世代の読者の方なら「端麗辛口」というフレーズが思い浮かぶのではないでしょうか。しかし「端麗辛口」とは何ぞや? と改めてオージーに聞かれたら、即答はちょっと難しいところ。そこで分かりやすいのが、灘(兵庫県)の酒と比較しての説明です。

米:灘は山田錦、新潟は五百万石

山田錦は酒造好適米の花形ともいえる人気の酒米です。兵庫県が主産地の山田錦は、華やかでふくよかな日本酒に生まれ変わります。一方で新潟の天候と風土が生んだ酒造好適米の五百万石を原料とする酒は、すっきりとした「麗しさ」。精米歩合も60%以下の物が多いため、お米の優しい香りと甘みを感じます。

水:灘の伏流水、新潟の雪解け水

灘の水は六甲山を水源とする硬水です。ミネラル分が高く、また酒造りの発酵速度も速いので、結果、後味に厚みのあるキレを感じる酒が多くみられます。新潟の酒にもキレはありますが、クリーンかつ軽やかな辛さが続く後味です。カルシウムやマグネシウムの少ない雪解けの軟水で地元の米を仕込み、ゆっくりと醸して仕上げるのが新潟のスタイルです。

端麗辛口だけでない、新潟の魅力

「端麗辛口」はすっきり、麗しい口当たりと軽やかなキレ。とは言っても、新潟のお酒の魅力は多様であり、その奥深さを極めたい日本酒ファンとプロの間では「新潟清酒達人検定」も人気です。その新潟で1番歴史の古い蔵「吉乃川」は1548年創業。徳川家康が生まれた頃(1542年)に始まったブランドが現代に引き継がれていると考えるだけで気が遠くなりそうですが、吉乃川は470年の歴史に甘んじることなく、令和そして将来の消費者を迎える最新施設「醸蔵(じょうぐら)」をオープンしました。立ち飲みバー、酒造り体験ゲーム、デジタル映像による酒造りの紹介など、新たな日本酒好きを開拓するため、いろいろな工夫が取り込まれています。

10月にオーストラリアを訪問した営業部の小野邦浩さんによれば、吉乃川のキーワードは「いつものうまい酒」。雪国らしい、控えめでシンプルな一言ですが、その奥に品質への自信と誇りを感じますね。


雄町稲穂
在シドニー歴20年以上。日本での仏・独・豪ワインの輸入販売を経て、シドニーのブティック・ワイン専門会社に入社、日本やアジア諸国へ豪州プレミアム・ワインを輸出。現在は豪州食材を世界に広める企業に勤務。日本酒は2017年にWSET(Wine & Spirit Education Trust)のSake Level 3、19年にSSI(Sake Service Institute)国際唎酒師を受講・合格。引き続きスキルアップのため「テイスティング」に励んでいる

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