
(文・写真=ランス陽子)
ひき肉にマッシュ・ポテトをのせてオーブンで焼く、寒い日にぴったりのキャセロール料理
イギリス料理の伝統が色濃く残されているオーストラリア。「羊飼いのパイ」と名付けられたシェパーズ・パイ(Shepherd’s Pie)も、そんなイギリスからやってきた料理の1つだ。このマッシュ・ポテトを載せたミート・パイは、「小さな田舎家」という意味のコテージからきたコテージ・パイとも呼ばれ、一般的なイギリスの家庭料理として古くから親しまれている。正しくは羊肉を使用するとシェパーズ・パイ、牛肉を使用するとコテージ・パイと呼ばれるようだが、近年のオーストラリアでは、マッシュ・ポテトが載ったミート・パイはどちらもシェパーズ・パイという名称が使用されることが多いようだ。
今回のレシピを教えてくれたのは、イギリス出身のソニアさん。数十年前にオーストラリアへ移住し、バレエ教師をしながら4人の子どもたちを育てあげたベテラン主婦だ。「シェパーズ・パイは、意外に簡単であっという間にできる、イギリスの伝統的なキャセロール料理なんですよ」というソニアさん。パイ店ではパイ皮を使ったミート・パイ状のシェパーズ・パイを多く見かけるが、家庭料理として食べる際には、パイ皮を使わずにキャセロール料理として調理されることが多いのだそうだ。キャセロール料理は、耐熱の深皿に材料を入れ、オーブンで仕上げる料理。下ごしらえさえしてしまえばあとはオーブンに入れて待つだけなので、常に火のそばについていなくてもOK、という忙しい現代人にもぴったりのメニューだ。
「我が家では、均質化加工がされていない(Non-homogenized)昔ながらの低温殺菌の牛乳を愛飲しています。昔ながらの牛乳はクリーミ-な上澄みができるので、その部分をマッシュ・ポテトに使うと美味しいですよ」とソニアさんは教えてくれる。普通の牛乳しか手に入らない場合は、市販の生クリームを少々加えても良いそうだ。
「牛ひき肉は、必ず脂の少ない『Lean Beef』と書かれたものを使用しましょう。でないと、ギトギトとした仕上がりになってしまいます。ポテトを載せたら、その上にチーズを削って載せるのもお勧めです」
寒い冬には、部屋が優しく温まるオーブン料理が嬉しい。熱々のシェパーズ・パイを囲んで、身も心も暖まろう。
(4人分) | ||||
バター | 25グラム | ミックス・ハーブ | 小さじ1/2 | |
玉ネギ(荒みじん切り) | 大1個 | 塩・コショウ | 少々 | |
ニンニク(みじん切り) | 1片 | |||
ニンジン(小いちょう切り) | 2本 | ■マッシュ・ポテト | ||
牛ひき肉(Lean-Beef) | 500グラム | ジャガイモ | 4~5個(約500グラム) | |
小麦粉 | 大さじ1 | バター | 25グラム | |
ビーフ・ストック | 300ml | 牛乳 | 約100~150ml | |
ウスター・ソース(Worcestershire-Sauce) | 小さじ2 | 塩・コショウ | 少々 | |
トマト・ピューレ | 大さじ2 | 生クリーム | 少々(あれば) |
作り方
① フライパンにバターを溶かし、ニンニクを入れる。ニンジン、玉ネギを加え、玉ネギが少しアメ色になるまで炒める。牛ひき肉を加え、ひき肉の色が完全に変わるまで炒めたら、次に小麦粉を加えて手早く混ぜ、さらに1分ほど炒める。
② ビーフ・ストックをよく混ぜながら少しずつ加えていく。トマト・ピューレ、ウスター・ソース、ミックス・ハーブを加えて塩・コショウで味を調えたら、フタをして弱火で15分ほど煮る。オーブンを220度に予熱する。
③ 皮をむいて茹でたジャガイモにバターを加え、少しずつ牛乳(あれば生クリームも少々)を加えながらつぶしてマッシュ・ポテトを作る。塩・コショウで薄めに調味。
④ 耐熱皿に②、③の順に入れ、表面に焼き色がつくまでオーブンで20~30分焼く。

ソニア・ヨーク・プライスさん
イギリスのロイヤル・バレエ・スクールなど各名門校で学んだバレリーナ&コンテンポラリー・ダンサー。彫刻や美術、彫金、写真、映像など幅広いジャンルで表現するアーティストでもある。
■Web: www.soniayork-pryce.com