
今月の品種:ヴィオニエ
日豪プレス読者の皆様、こんにちは。今月ご紹介したい品種は、「ヴィオニエ Viognier」。甘美でつややかな白ブドウです。
魅惑の香りと味わいを持つ

ヴィオニエの魅力は、まずは何といってもその華やかな香り。「アロマティック」という言葉を、そのまま体現したような芳醇な白ワインです。アプリコットや黄桃のようなまろやかでコクのある果実の香り、ユリやジャスミンのようなお花の香り、生姜のような、甘い、少し鼻をツンとつく香りなど、とにかく香り高いワインです。英語ではよく“Heady”と表現されます。味わいは、一言でいうと「まろやか」。酸味は控えめで、アプリコットのような芳醇な果実味と、少しトロリとした舌触りがします。温かな口当たりは、やや高めのアルコールからくるものです。
シラーズとは同郷
ヴィオニエの故郷は、オーストラリアの赤ワインの主力品種でもあるシラーズと同じフランスの北ローヌ地方です。北ローヌの「コンドリュー」という小さな地域は、ヴィオニエ100パーセントから作られる高級白ワインの産地として世界的に有名です。かつてはヴィオニエは、このコンドリュー以外ではほとんど生産されていませんでしたが、現在ではフランスの他の地方や、オーストラリア、アメリカなど、数多くの国々で生産されています。
オーストラリアにヴィオニエが最初に植えられたのは1972年頃ですが、本格的な生産が始まったのは、その少し後のこと。1990年代、南オーストラリア州バロッサ・ヴァレーの老舗のワイナリーであるヤルンバ(Yalumba)が先駆者となり、オーストラリアでの本格的な研究や生産が始まりました。そしてここ10年ほど、ヴィオニエの人気はさらに高まっています。ヤルンバは現在でも良質なヴィオニエの作り手として、オーストラリア国内・海外両方で高く評価されています。
シラーズとのブレンドにも注目
お店で、ラベルに「シラーズ・ヴィオニエ Shiraz Viognier」と書かれた赤ワインを見かけたことはありませんか? これは黒ブドウであるシラーズに、白ブドウであるヴィオニエを少量(5〜20パーセント程度まで)ブレンドしたものです。実はこれは、北ローヌ地方の「コート・ロティ」という地域のワイン作りにならったもので、オーストラリアでもこのスタイルのワインを作る生産者が増えてきました。

重厚なシラーズに、ヴィオニエを少量加えて発酵することで、ヴィオニエのふわりとした花のような香りが重なり、ボディも軽やかに、はつらつとした赤ワインに仕上がります。
このスタイルの赤ワインで成功したオーストラリアの作り手は、前述のヤルンバの他、キャンベラ地区のクロナキラ(Clonakilla)、バロッサ・ヴァレーのトーブレック(Torbreck)などで、オーストラリアの生産者の中でも、特にローヌ地方の品種やスタイルに強い思い入れのある作り手たちです。
食べ物との相性は?
ヴィオニエは、白ワインとしては酸味が穏やかでまろやかです。軽めでさっぱりとしたものよりは、リッチでコクのある食事、あるいはスパイスの効いたお料理が合います。
クリーム・ソースのお魚やロブスターなどの甲殻類、マイルドなカレーや、レモンとスパイスを効かせたモロッコ料理や、インド料理も良いでしょう。マンゴーやライチなど、フルーツの入ったサラダなども良いですね。
日本食なら豚のショウガ焼き、甘海老やホタテのお刺身、カボチャやニンジンのようなほっこりと甘いお野菜との相性もグッド。もちろん、ヴィオニエ独特の香り高さを楽しむために、そのままワインだけでじっくりと味わう、というのも粋なもの。ぜひお気に入りの1本、見つけてみてください。

魅惑の香りを持つヴィオニエ
梅:平日おうちディナーに
Yalumba Organic Viognier 2015 South Australia/15.95ドル
根菜系のお料理、パンプキン・ポタージュ、インドカレーなど
Web: www.yalumba.com
竹:週末デート、女子会ランチに
Yalumba Eden Valley Viognier 2015/23.95ドル
マンゴスチンのサラダ、モロッコ料理
Web: www.yalumba.com
松:大切な方への贈り物に
Clonakilla Viognier 2015 Canberra District/50ドル
何も合わせずこのままで
Web: www.clonakilla.com.au

<著者プロフィル>
フロスト結子
◎日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diploma in Wine & Spiritsを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でアカウント・マネージャーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかく美味しそうに書く」がモットー。Web: auswines.blog.jp