
ⒸChris J. Nelson
心理カウンセラーのさえみ先生が
ストレス・フリーな暮らしをサポート
セレブに見る心の病 ケース・ファイル
セレブ・ゴシップなどでは目にするものの、直接自分には関係ないとついつい無関心になりがちな心の病のこと。中身をひも解いてみれば、意外と身近な存在である可能性も。心身ともにより快適な毎日を送るため、その症状や対処法を正しく紹介する。
近年、社会不安障害だったことを公表し、一時はインタビューの時でさえヘルメットを被っていた、アメフトのスーパー・スター、リッキー・ウィリアムズが、治療を受けて完治 !
Social Anxiety Disorder(SAD):社会不安障害
いじめや人前での恥ずかしい経験などのトラウマがきっかけに…
人と関わる状況で強い不安が生じ、ついその場を避けてしまうのが社会不安障害の大きな特徴です。人の視線が異常に気になったり、恥をかかないか心配で話しができなくなったり、人前で赤面してしまったりするなどの症状が現れます。リッキーもそんな1人。
口数の少ない青年だった彼が、フットボールの才能を認められてプロ入りし、一躍スターに。ところが苦労の多かった半生で、もともと人前に出るのが苦手だった傾向に拍車がかかり、その後ファンに見つかるのが怖くて外に出られなくなりました。
SADは、小さいころからシャイな性格だったこともありますが、いじめに遭ったことや、人前でとても恥ずかしい経験をした時のトラウマがきっかけとなって起こります。特に、“苦手な場面”に対する不安や恐怖がコントロールできなくなり、普段の社会生活に支障が出始めたら要注意です。
自分自身が納得して積極的に治療に取り組むと効果も上がる
リッキーは心配した友人に勧められて専門医を訪れ、薬物療法と精神療法でこの病気を克服しました。これは典型的な治療法です。周囲の理解も大切なので、SADで悩んでいる知人がいたら、次のように接してみてください。
1. 「恥ずかしいのでしょう」とダイレクトに指摘することは避けて、「こういう時は結構緊張するよね」と“共感の言葉や姿勢”を示す。
2. 何かを躊躇している時に「こんなのは慣れだから」と無理を強いることはせず、“プレッシャーをかける状況を作り出さない”ように配慮する。
SADで悩むのは向上心のある人が多いので、自分自身が納得して積極的に治療に取り組めば効果も上がります。完治したリッキーは、「苦戦の後にタッチダウンを決めて、勝利を手にした時の気分だよ」と語っています。

馬場佐英美(ばばさえみ)
Town Hall Clinic
プロフィル◎国際基督教大学教養学部卒。Australian College of Applied Psychologyで心理カウンセラーの資格を取得。NSW州カウンセラー&サイコセラピスト協会臨床会(CAPANSW)、オーストラリア・サイコセラピー&カウンセリング連盟会員(PACFA)。シドニー市内でさまざまな心の悩みの相談に応じている。