サッカーで多いヒザのケガ

フィジオ セラピスト に聞こう

体の痛み改善法


第40回 サッカーで多いヒザのケガ


▶▶▶フィジオセラピストは、筋肉や関節の痛みや機能障害、神経系機能障害や呼吸器系疾患などの治療やリハビリを行う専門家で、必要に応じてMRIや専門医を紹介し、包括的な治療を行っている。さまざまな体の機能を知り尽くした奥谷先生に、体の痛みの原因や改善法について聞いてみよう !

 

アジア・カップが盛り上がっていますね!私自身、25年間サッカーをしてきて、その間いろいろなケガを経験しました。スポーツをする限り、ケガとはいつも隣り合わせです。そこで今回は、特にサッカー選手に多いヒザの靭帯損傷についてご紹介します。

 

致命傷になるのはヒザのケガ

脚をメインに使うスポーツなので、ケガはやはり圧倒的に下肢に集中しています。とりわけ致命的になりやすいのは、膝の各種靭帯や半月板のケガでしょう。

膝関節は人が前進するために、若干のねじれ運動と屈伸運動を主目的にデザインされた関節です。サッカーは真横や斜め後ろなど、急な方向転換を絶えず行うスポーツです。しかも、これを高速で連続して行うため、膝関節のねじれ領域を制限する靭帯やショック吸収効果のある半月板に負荷がかかります。そして、加重を支えきれなくなった時にケガをしてしまうのです。それに加え、タックルなどで膝に横から力が加わることも大きな原因の1つです。残念なことに靭帯や半月板には血管があまり通っていないため、一度ケガをすると回復に時間がかかる上、完全治癒は難しいのです。骨折の場合は激しい出血がありますが、血液が十分に流れているためしっかりと治癒します。

 

靭帯損傷には日にち薬

損傷の度合いにより手術が必要な場合もありますが、一般的には靭帯を一定の角度で6〜8週間固定します。その間も筋トレなどのリハビリは続けますが、この間は決してスポーツを再開してはいけません。選手にはこれが一番辛い様です。固定期間終了後は、損傷した靭帯を補う筋トレを6〜12週間かけて行い、ようやくグラウンドに戻れるようになります。以前は、なるべく早く選手を復帰させられるよう、我々も競うようにリハビリを行っていましたが、最近は再発防止に重きを置き、治療に十分な時間をかけるようになりました。これは解剖学的にも靭帯の治癒には一定の時間が必要とされているからです。

しかし将来的には、再生医療の進歩により靭帯の治癒にかかる時間が劇的に短縮されることが期待されています。具体的には、ケガをした直後に幹細胞注射をして靭帯細胞の再生を促します。これが可能になれば、今までは手術を余儀なくされていた大ケガも、リハビリだけで治るようになるかもしれません。

ケガから回復してアジア・カップのピッチに立っている選手を見ると、彼らの並々ならぬ努力を思い、心からの敬意を抱きます。


 

奥谷匡弘(おくたに・ただひろ)

シドニー大学理学療法学科卒業後、西オーストラリア大学で理学療法修士号取得。ダーリングハーストのセント・ヴィンセント病院で5年間勤務し、プライベート・クリニックでは財界の著名人などの治療に多く携わる。オーストラリア・フィジオセラピー協会公認筋骨格系理学療法士。
www.metrophysiotherapy.com.au

 

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