第5回 腰痛

 

第5回 腰痛

東洋医学は難しい、分かりづらいといったお話を聞くことがあります。これには、まず使われている言葉が古い(「五臓六腑」「気血」など)ために耳慣れない、ということがあります。もう1つは、東洋医学独特の考え方「陰陽五行」についていけない、と言うことのようです。

真にもっともなのですが、近代科学技術以前に作られた医療システムなので、現代的な意味では矛盾するようなことも普通に述べられることが多いのです。分析・垂直思考の現代医療に対する、直観・水平思考の東洋医療とも言えますので、本コラムも皆さんのカンを働かせて読んでもらえればありがたいです。

さて、腰痛は、一生のうちで経験しない人はいない、と言われるほどありふれた病気です。原因も、単純な労作性のものから内臓性、心因性によるものまで、またそこから発する症状も多彩であり、一概に腰痛の治療はこれでOKというわけにはいきません。

ただし一般的な傾向として、運動不足やメンタル・ストレスによるものは増加傾向にあります。セルフ・ケア指圧としての最終目的は、発症前の予防−未病治—にありますから、そのような観点から治療を考えていくことにします。

腰という漢字は、月に要(かなめ)と書くように上半身と下半身をつなぐ役割を持ちます。直立姿勢を保つため、微妙なバランスをここで支えなければならず、常に無理がかかりやすい所です。とても重要であるのに気血の滞りが発生しやすいのです。「腰は腎の府」ともいわれるように、腎臓との関係が深く、腎気の衰えは腰椎の変形や歩行機能の衰えにつながります。

まず腎気の調整のために、志室(ししつ)、腎兪(じんゆ)、腰眼(ようがん)を入念に押圧します。下腹部も腎の領域なので、大巨(だいこ)、衝門(しょうもん)も痛みの出ない程度、気を補うように押圧します。陽陵泉(ようりょうせん)、三陰交(さんいんこう)、湧泉(ゆうせん)は下半身全体の調整と筋肉バランスを整えるために取穴します。

痛みは基本的に「冷え」から来るものなので、ここはやや強めに圧迫し「気」を通じさせます。

腎兪:腹ばいで、肋骨下端の線と腰椎との交点より外側2横指
志室:腎兪の外側2横指
腰眼:第4、5腰椎間の外側約3横指半の陥凹部
大巨:へその外下方約3横指
衝門:恥骨結合部の外側4横指、動脈拍動部
陽陵泉:下腿の外側、腓骨頭の突起の前下際
三陰交:内くるぶしの上際より上方に3横指、脛骨の後ろ際
湧泉:足裏中央よりやや前方、足指を屈すれば陥凹し押せば痛む所

印藤裕雄(いんどうひろお)
1991年北里研究所付属東洋医学総合研究所および間中病院東洋医学科を経て開業。2004-08年メルボルンの国立モナシュ大学日本研究センター客員研究員(伝統医療の研究および技術指導)。森ノ宮医療大学講師(東洋医学)。09年茨城県土浦市に、新しい時代ニーズに合った総合的東洋医療を目指し、東洋医療センターを開業。11年から東京での診療活動も開始。日本統合医療学会評議員、全日本鍼灸学会会員など。著書『癒しの芸術と科学‐身体・心・魂の調和』三恵社、『潜在能力の科学』など。コラム・診療についての質問は、facebook:hiroo.indo@facebook.comまたはwww.facebook.com/CentreForEasternMedicineJapanまで。

 

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