映画『Queer Japan』マルディ・グラ映画祭上映記念インタビュー|舞踏家・松田篤史さん

映画『Queer Japan』マルディ・グラ映画祭上映記念インタビュー|舞踏家・松田篤史さん

今年もシドニーで2月に開催されたLGBTQIの祭典「マルディ・グラ」。その一環として、シドニーの映画館3会場で第27回マルディ・グラ映画祭が開催された。そこでは70本以上ものLGBTQI関連の映画がスクリーニングされ、その中の1本として、現代日本におけるLGBTQI+カルチャーを追った長編ドキュメンタリー映画『クィア・ジャパン(Queer Japan)』が上映された。日本の舞踏集団「大駱駝艦(だいらくだかん)」のパフォーマーで、同作に出演した松田篤史さんに撮影時のエピソードなどについて話を伺った。(文・インタビュー=石神恵美子)

松田篤史(まつだあつし)
神戸に生まれ、物心ついた時にはゲイ。Queerな友人に恵まれ、気が付けば19歳でドラァグ・クイーンに。20歳から刺青・ピアスに興味を持ち、ひょんなことから2000年より舞踏家として活動。

――カナダ人であるグレアム・コルビンズ監督から、本ドキュメンタリー映画を撮影したいと出演依頼があった際、どのようなことを思いましたか。

映画『Queer Japan』より
映画『Queer Japan』より

海外の監督が、日本において、英語で表記される「Queer」という言葉以上の感覚的な題材を、たくさんの人たちのインタビューから浮かび上がらせるというスタイルにとても興味が湧いたのを今でも覚えています。私自身、日本で生まれた「舞踏」というジャンルのダンスを「大駱駝艦」というカンパニーで踊っていまして、海外で上演した際に日本国内とは違った視点での感想を聞くことが多々あります。ですので、映画の中での多くの出演者の方々のインタビューももちろんですが、それ以上に監督が膨大なインタビューをどのように捉え紡ぐのか、とても興味がありました。

――完成した作品をご覧になっていかがでしたか。

「Queer」だな、と思いました(笑)。質問の内容もベクトルもたぶん違うと思うのですが、さまざまな方たちが答える言葉たちが見えないものへと集約していくようで、楽しかったです。同時に、決して正解や解答があるものでもないのだ、と改めて感じました。新しい視点もいただき、自分の中の不明確な部分を知ることもできました。

――監督と、取材対象者の方々の距離を近く感じる映像がたくさんありました。撮影を通して印象的だったエピソードはありますか?

監督にとっての撮影初日だったのかもしれませんが、撮影の初期に桜の木の下で踊ったことが印象的でした。春のお花見シーズンだったのですが、大勢の人がいるところで監督に「ここ、いいね」と言われて、私は「ここ?」と思いながらヒラリと踊り、監督がそれを撮り「オッケー、移動しようか?」「はーい」みたいなやりとりをしました(笑)。その撮影時に、日本のプロデューサーである飯田ひろみさんと初めてお会いしたのですが、何の撮影が始まったのか、びっくりされたのではないでしょうか。監督は私の言葉の扱いの下手さを見抜いてくれていたのか、話すより踊っていた時間の方が長かったような気がします。

――日本におけるLGBTQIを取り巻く現状をどのように思いますか。

ドラァグ・クイーンのヴィヴィアン佐藤
ドラァグ・クイーンのヴィヴィアン佐藤
漫画家の田亀源五郎(左)
漫画家の田亀源五郎(左)

私自身はいわゆるアクティビストではないので、「日本の」LGBTQIを取り巻く現状を把握しきれていません。実際に友人たちの活動を当人から聞いて受ける立場だと思っています。ですが、僕自身の「ゲイ」「刺青」「ボディー・ピアス」「舞踏」という側面に触れた人たちのさまざまな反応は、以前よりだいぶ変わってきていると感じます。日々アップデートされていると感じる固定観念的なものは、誤解を正すと同時に新たな誤解を生み、新たなコミュニケーションの発見へとつながっているように思います。映画の中にもたくさんの表現者が登場していますが、これからもたくさんの表現手段が生まれ、選択の幅が広がると思います。

――作中の「日本は海外からすごく注目されている。日本人がそれに対応しきれていない、日本人が心を開けていない」という松田さんのコメントが印象的でした。日本の人びとが海外に対応していくにはどのようなことが必要だと思いますか。

ひと言で日本人にはこれが必要! と言い切れませんが、「個の自覚」でしょうか。僕自身もとても多くのレッテル(ラベル)を与えられています。自分にないラベルと出会った時や、自分のラベルが違った見られ方をした時の対応能力を磨くために「個を自覚すること」は必要な工程だと思っています。

――本作を鑑賞される方々にメッセージをお願いします。

観る方たちがこの映画を通して自分の中に内在する「Queer」な部分に触れることができればすてきだな、と思っています。僕自身も、監督を始め、この映画を通して出会ったたくさんの人たちと、とても貴重な体験をしました。願わくば、その時に感じたワクワクを少しでも皆様と共有できればと思っています。

<『Queer Japan』作品情報>
マルチに活躍するドラァグ・クイーンのヴィヴィアン佐藤、“ゲイ・エロティック・アーティスト”として世界中をツアーする漫画家の田亀源五郎、トランスジェンダーであることを公表して初当選した議員・上川あやなど、カナダ人のグレアム・コルビンズ監督が3年にわたり日本の各地で撮影した100本超えのインタビューから紡ぎあげた1本。独自のクィアの歴史を持つ日本で、彼らは自分自身の言葉で人生を語っていく。
▼公式サイト:queerjapanmovie.com

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