日本で人気を誇る気鋭の壁画アーティストMULGA(モルガ)

シドニー在住、日本で人気を誇る

壁画アーティスト
MULGA(モルガ)さん

インタビュー

 シドニー、メルボルンを中心としたオーストラリア国内の至るところで見かけるモルガさんの壁画。その名を知らなくとも作品を観れば多くの人がどこかで目にしたことがあると気付くことだろう。昨今は大手スポンサーとのコラボレーションを行うなど更に露出の機会が増え、日本にもその活躍の場を広げている。日本、オーストラリアの両国で話題となっているアーティスト、モルガさんにインタビューを行った。
(インタビュー:馬場一哉、撮影:伊地知直緒人)

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プロフィル
シドニー南郊、クロヌラ在住のストリート・アーテイスト、イラストレーター。本名、ジョエル・ムーア(Joel Moore)。2012年よりアーティストとしてのキャリアをスタート、14年にファイナンスの仕事をリタイアしアーティスト業に専念。その明るい作風に注目が集まり、またたく間に話題のアーティストの仲間入りを果たした。
■Mulga The Artist: mulgatheartist.com.au/

──ボンダイ・ビーチやダーリング・スクエアなど、オーストラリア国内の人気観光地から地方都市まで、さまざまな場所でミューラル・アートを手掛け、昨今はセブンイレブンで人気のシャーベット状のソフト・ドリンク「スラーピー」のカップ・デザインを始め、数多くの企業とコラボレーションするなど活動の幅を広げています。そんな中、日本でも人気の高まりを見せていますが、アーティストとして活動されるまでのバック・グラウンドからお話をお聞かせください。

「僕はもともと現在拠点としているクロヌラ近くの病院で生まれ、そのままここを地元に育ちました。両親ともオーストラリア人ですが、祖先にマオリがいるため、私にもその血が多少入っています。アーティスト活動を始めてからよく聞かれるようになったのですが、僕の周囲にはクリエーティブな職業の人やアーティストなどは全くいませんでした」

──それは意外ですね。

「はい。若い頃はカーペット業者をしていた父の仕事を手伝ったりしていましたがそれはそれは大変でした。休みの日に一緒に仕事をすることは彼にとっては良かったみたいですが、僕は体力的に大変だったので正直やりたくないと思っていました」

自分の好きなものを描く.その繰り返しが僕の作風を作り上げた

ファイナンシャルの世界からアートの世界へ

──アーティストになられる以前はファイナンシャル業界で働かれていたそうですね。

「仲の良かった知り合いの家族にファイナンシャル系の会社でCEOをやっている人がいたことから、お金の仕組みを知りたいと考えるようになったのがきっかけだったと思います。ただ、今思えば単純にお金を稼げるようになりたかったというのが正直なところかもしれません。細かい動機はともかく、大学では経済や金融の勉強をし、卒業後はファイナンシャル系の企業の事務仕事に就きました。ただ、じっと机に座っている仕事はあまり性に合わず、好きではなかったですね。10年間続けましたが、同じことの繰り返しの毎日に飽きてしまい、多くの時間、スケッチブックを広げて絵ばかり描いていました。机の上に鏡を置いて、ボスの姿が見えた時には隠すなどしていました(笑)。ティーンエイジャーが家で隠れて遊んでこっそりと成長していくみたいな感じですよね」

── そんな状況下、絵を描くことに没頭していったのですね。

「はい。ファイナンシャルの会社で頭を使うだけの仕事も、父がやっていたような体力だけの仕事も僕にとってはいまいちに思えました。脳の2つの部分のうち、アーティスティックな能力の部分、そしてファイナンシャルなど論理的に頭を使う部分、その2つの狭間で揺れ動いているような感じでした。そんな中、フルタイム・ワーカーとして働きながら、日曜日には自身でデザインしたTシャツをボンダイのマーケットで売るという生活を2年間ほど実践しました。今思えば、このような異なる2つの部分をクロスオーバーさせながらの活動は結果的には良かったかもしれません。というのも多くのアーティストは脳のアーティスティック・サイドばかりを使っているため、金銭面での成功がなかなか難しいからです」

──モルガさんの場合は、ファイナンシャルの知識を生かせる強みがあったわけですね。

「はい、僕の場合はファイナンシャル・プラニングという業務で、お金を作る(make money)ことを仕事にしていたので、どうやったら僕のアートでそれができるか、どうやってそれを収入源にして家族を支えられるかを考えました。そこでまずはTシャツを売ってみようと思ったのです。それくらいであればフルタイム・ジョブをしていても可能だと考えました。こう言うと意外に思われる人も多いと思いますが、どうやったらアートで稼げるかということは日々模索しています」

好きなものを明るく楽しく描くこと

──もともと絵を描くことが好きだったと思いますが、今のスタイルはどのように確立されたのですか。

「昔から絵を描くことは好きでしたがもちろん今のスタイルとは全然違います。子どもの頃はペンを使ってマーベルのコミックスに出てくるようなマッスルマンを描いたり、シンプソンズに出てくるようなキャラクターなどを描いていました。ただ、いつも何かを描き続けているというのは昔も今も変わりません」

──現在の作風のコンセプトとして、意識されていることはありますか。

「とにかく明るい色を使って、人を楽しくさせること。そして人を笑わせるようなキャラクターを生み出すことです。最初のうちは、アートで生計を立てて暮らすことをゴールにしていましたが、最近になってやっと自分のために自由に描けるようになりました」

──サングラスを付けたイルカ、足の生えたバナナなど、さまざまなキャラクターを生み出されていますがこれらはどのようなところから着想を得ているのですか?

「何を書きたいかな、と自分に問いながら、好きなものを考えるところから始まりますね。サングラスは元々大好きで、今では僕の作品のシグネチャーになっています。サングラスの中に描かれているパームツリーも大好きな植物です。好きなものを題材に、時間をかけていろいろと実験を繰り返しながら描くことで作品が出来上がります。皆さんも、もし何かを描きたいというのであれば、自分が、更に皆が好きなものを描くのが良いと思います」

──サーフィンをこよなく愛しているそうですが、やはり作風にも影響していますよね。

「それは間違いないですね。ビーチ、サーフィン、水泳が大好きで、サングラスもパームツリーも、どれもそれらから喚起される夏のイメージから来ています。僕はずっと住み続けている地元・クロヌラのビーチが一番好きですが、他の国でもサーフィンをします。今年7月にはバリに行く予定でした。過去にはフィジーに行きましたし。基本的にホリデーはいつもほとんどサーフィン三昧です」

──モルガさんの作品はポスカを使って描かれていますが、どういったこだわりから使い始めたのでしょう。

「10年前くらいにポスカのマルチパックを買って使ってみたら、すごく簡単に早く描けるのでそれ以来使い続けてるという感じです。アーティストとして活動を始めた最初の頃はebayで買って日本から配送してもらっていた記憶がありますが、今はスポンサーになって頂いているのですごくラッキーです」

高まる日本での人気

コロナの収束への願いから無償提供された「手洗い推進」のイラストは、日本国内でも玉川髙島屋、渋谷ヒカリエShin Qs、大塚家具ほかさまざまな施設や企業などで使用され話題となった。コロナ禍において、ともすれば暗くなりがちなストーリーも明るいタッチで自然に伝えられるのはモルガさんならではだ。

コロナの収束への願いから無償提供された「手洗い推進」のイラストは、日本国内でも玉川髙島屋、渋谷ヒカリエShin Qs、大塚家具ほかさまざまな施設や企業などで使用され話題となった。コロナ禍において、ともすれば暗くなりがちなストーリーも明るいタッチで自然に伝えられるのはモルガさんならではだ。

──新型コロナウイルスの収束を願い無償で提供された「手洗い推進」のイラストは、日本でも多くの施設で使用されました。モルガさんの人気は日本でも高まる一方ですが、どのようなきっかけで活動を始めたのですか。

「現在、日本で僕のブランドの管理をしている会社があるのですが、その会社の担当者が僕の絵を見て連絡をくれたことがきっかけです。熱心に僕のアートが日本のシーンに合うと言ってくれたのでお願いすることにしたんです。日本の子どもたちにもきっと好かれるだろうと言って頂いたのはうれしかったですね」

──モルガさんのアートが日本で人気を博している理由をどう思われますか?

「マネジメント会社が頑張ってくれているのだと思います。僕のアートはカラフルでファニーで、そしてちょっとクレイジーで面白いとは思いますが、日本にはそもそも強いビジュアル・カルチャーがありますよね。漫画やイラストなどでもキャラクターが強いものが多いですし、マネジメント会社の担当者は毎回イベントを成功させるために苦労していると思います」

──イベントで日本を訪れた際、どのような印象を抱かれました?

「東京と横浜を訪れましたが、オーストラリアとは全く違う文化を感じました。めちゃめちゃ安全で、街はクリーン、全てがしっかりとオーガナイズされていてトレンディだと思いました。また、道行く人がみんなおしゃれでファッショナブルという印象でした。食べ物もおいしいし、非常に好きな国です。何より、みんな僕の絵を観て『かわいい』と言ってくれるのがうれしいですね。ただ、人が多過ぎるかな(笑)」

アートと音楽に通ずるもの

──2018年には日本で『リラクシング・ライフ』(モルガ・ジ・アーティスト・プレゼンツ)というコンピレーション・アルバムをリリースされました。ジャケットにモルガさんのイラストが使われた世界初のCDで、ご自身の楽曲も入っているようですね。

「大学時代に友人と組んだバント『MULGA’SROOM』の曲が入っています。ただ、僕は最近はアートにフォーカスしているため、バンド活動はさほど真剣に行っていません。僕はギターを弾きますが技術面では優れていないし、声もひどいものです(笑)」

──それでも音楽を続けるのはやはりアートと共通する何かがあるからですか。

「クリエイティブという面ではキャッチーなメロディーやコーラスは、アートが人を引きつける要素と似ています。例えば僕のアートで描かれるサングラスのフレーミングや黒い線は、音楽におけるキャッチーなメロディーのようです。先日、コロナ禍で演奏する場所がないオーケストラの演奏家が家族のために演奏するドキュメンタリーを観ました。僕もそれにインスパイアされ、うまい、ヘタなど気にせず音楽活動も楽しもうと思っているところです」

──アート、サーフィン、そして音楽と好きなものに存分に取り組んでいることが、たくさんの人に元気を与えられる源になっているのかもしれないですね。そんなモルガさんの作品、どこを訪れれば手に取ることができますか?

「シドニーのシティ近郊だとニュータウンにあるポスター・ショップ『Blue Dog』で実物を見られると思います。ただ、ほとんどの方は最近はウェブサイトで購入されます。ぜひ一度サイトで作品を観て頂けるとうれしいです」

──本日はありがとうございました。(8月17日、クロヌラのモルガさん自宅で)

モルガ特製ウォッシャブル・マスク3名にプレゼント
 モルガさんのイラストがプリントされたウォッシャブル・マスクを本紙読者3名様にプレゼント。
絵柄は3種類あるが、どの絵柄が届くかは当選してからのお楽しみ。どれもカラフルで魅力的なデザインで、道行く人を明るく楽しませてくれるだろう。
応募は下記より。

▼応募先Web: nichigopress.jp/campaign
▼応募締切: 11月25日(水)


 幌北学園 blancpa novel-coronavirus nichigowine  kidsphoto

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