【インタビュー】草刈民代×周防正行

第16回日本映画祭スペシャル・ゲスト
特別インタビュー

俳優・草刈民代さん

周防正行監督

今年の日本映画祭のスペシャル・ゲストとして、俳優・草刈民代さんと監督・周防正行さんご夫妻が11月25日、シドニー市内イベント・シネマズで行われる上映会に登場。草刈さんが重度のぜんそくを患う患者自身から最期の時を託される女医・折井綾乃役を演じ、周防さんが監督を務めた最新作『終の信託』が上映されるとともに、両者は舞台あいさつを行う予定。司法と冤罪に焦点を当て、世界中で話題を呼んだ『それでもボクはやっていない』に続く社会派映画である同作は、人の死や命、医療、愛などをテーマに、観る者をぐいぐいと映画の世界に引き込む秀逸作。主演と監督の2人がオーストラリア上映を前に感じることとは? 本インタビューでは、2人の来豪を目前に、新作の誕生秘話や制作への意気込み、そして2人の素顔を少しだけご紹介しよう。

 

——『終の信託』が日本では10月27日に公開とのことで、国内各地でPR活動をされていたそうですね。観客の皆さんの反応はいかがですか。
 

周防監督(周):皆さん、映画での出来事を自分のことのようにとらえて観ていらっしゃいました。
草刈さん(草):いろいろ考えさせられた映画だったと言う方が多いですね。観る視点もそれぞれ違ったようです。
 

——周防監督はこの作品を制作するにあたり、「映画らしい映画を作る」ことが目標とおっしゃいましが、そもそも今作が生まれたきっかけとは?
 

周:弁護士の朔立木さんの(同名の)小説を読んだのがきっかけです。『それでもボクはやっていない』(2007年)の脚本を書く時に弁護士の先生方の勉強会に参加させていただいたのですが、そこで知り合ったとある弁護士の先生がペンネームで小説を書いていらっしゃることを知りました。その後、何冊か送っていただいた小説の中に『終の信託』があったんです。それを読んだ時に、大人同士が向き合って話すことで、2人の間に関係が生まれていく、その濃密な空気感を映像で表現してみたいと思いました。
 

——草刈さんは原作についてどう思われましたか?
 

草:すごく心を打たれました。また、綾乃役を演じるのはすごく大変だなとも思いましたが、医者は専門家であるように私もバレリーナというプロフェッショナルだったので、1つのことを目指す孤独感や競争を勝ち抜くことなど、自分のメンタルや経験と重なるように感じられました。
 

——この作品を制作するにあたり、常に心掛けていたことは何ですか?
 

周:人間の関係性ですね。今までの映画では、皆さんの知らない情報を重ねていくことで物語を進めていたのですが、今回の作品では、登場人物の立場や気持ちをはじめ、人と人が正直な姿で向き合って、関係を築いていく様子を描くようにしました。
草:今回の作品は人の尊厳に関わることですし、常に演技にはリアリティーがあるように気を付けていました。それがないと最後の取り調べのシーンも生きてこないと思います。
 

——今まで『シコふんじゃった』(1992年)などのコメディー作品を作られていましたが、冤罪と刑事裁判をテーマにした『それでもボクはやっていない』あたりから作風が社会派へと変化しつつあるように感じられます。これには何か理由があるのですか。
 

周:特に移行しているという感覚はなく、自分が驚いたり感動したりしたことを映画にしています。例えば、『それでもボクはやっていない』では刑事裁判について怒りに近いことを感じたため映画にしましたし、今回は小説を読んで、僕自身が医療と司法に興味を持ったためにこのテーマを取り上げました。ただ、興味の対象が変わりつつあるのは、僕自身が年を重ねてきているためかもしれません。
 

——『Shall weダンス?』以来、役所広司さんと3人でお仕事をするのは約16年ぶり。久々のタッグはいかがでしたか?
 

周:草刈に関しては、以前、バレリーナとして映画に出演しましたが、今回は女優として生きていくことを決めた後に出た作品なので、「これから女優としてやっていくんだ」という彼女の気迫を感じましたね。役所さんからは、16年間のキャリアの積み重ねや、人としての重みが感じられました。
草:前回は「役者ってこういうもんなんだな」といろいろ発見しながら撮影しましたが、今回は役所さんの根本的なものは変わらないとしても、16年間の積み重ねが感じられましたね。
 

——バレリーナとしてのキャリアで築いた感情の表現方法を、草刈さんは今回の演技でどのように生かされましたか。
 

草:表現方法は踊りの蓄積から得たもので、今回はその土台が踊ることから芝居に代わっただけだと思います。
 

——日本では、先生と患者の間には距離感があるように思われますが、オーストラリアでは比較的フランクな関係であるように感じられます。その異文化環境で、この映画を上映することについてどう思われますか。また現地の人に何を感じ取っていただきたいですか。
 

周:日本での人間関係や文化を、人の命などの普遍的なことを通して理解していただけるというのは、とても嬉しいことだと思います。
草:日本人が作った映画らしい映画ということで、今までにないタイプの作品だと言ってくれる方が多いのですが、私自身も今回、制作スタッフ一同が新たな挑戦に挑んだ作品だと思います。大人のラブ・ストーリーを描いた今作を通して、映画でしか味わえないものを十分に味わっていただきたいと思います。
 


——最後にオーストラリア在住の皆さんにメッセージを!
 

周:日本文化について考えていただくことに加えて、文化は違うけれども、同じ人間として”最期の時”にどう向き合っていくのか、そしてオーストラリア在住者としてどう考えていくのか、いろいろ感じていただければと思います。
草:映画らしい映画として楽しんでいただける作品だと思いますので、より多くの方々に見ていただければと思います。


■終の信託 
呼吸器内科のエリート女医・折井綾乃は失恋から自殺未遂を起こすが、重度の喘息を患う患者・江木泰三に励まされ、2人は深い絆で結ばれる。そして病状が悪化する江木は、綾乃に「最後の時は早く楽にしてほしい」と懇願。ある日、心肺停止状態に陥った江木を前に、綾乃は「愛」と「医療」の狭間に揺れながら重大な決断を下す!
 
▼日時:11月25日(日)3:30PM
▼会場:Event CinemasGeorge Street
▼監督:周防正行
▼キャスト:草刈民代、役所広司ほか(Unclassified 15+、2012年)

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