【新年恒例特集】回顧と展望2018/連邦政局(松本直樹)

連邦政局

ナオキ・マツモト・コンサルタンシー

松本直樹

プロフィル◎慶応義塾大学商学部卒業後、会社勤務を経て、1987年オーストラリア国立大学国際関係学科修士課程修了。同大学豪日研究センター博士課程中退。92年5月から95年7月まで、在豪日本国大使館専門調査員(豪州内政を担当)。95年8月から97年1月まで、オーストラリア防衛大学国防研究センター客員研究員。96年8月より政治コンサルタント業務を開始。専門領域は豪州政治、日豪関係、安全保障問題など。2014年日本国外務大臣賞受賞

17年は政治が混迷した年でもあった

2017年はターンブル保守連合政府の低迷と、政治の混迷の年であった。周知の通り、16年7月には連邦選挙が実施されたが、予想以上に与党が苦戦したことから、ターンブルの権威は著しく毀損されることとなった。その結果、元々ターンブルに反発していた自由党内の一部右派や、連立先の国民党はターンブルへの抵抗の姿勢を強め、17年に入ってからも保守連合内の求心力は一貫して脆弱なままであった。そして党内不和の政党が国民から評価されるはずもなく、実際に16年選挙の直後を除き、世論調査で与党が野党の後塵を拝する状況が長期にわたり続いてきた。

その状況を政府が打破するためには、何と言っても国民が関心を抱く分野で魅力的な政策を提示し、それが評価されることが肝要となる。そこでターンブルとしても、各種政策分野で積極的な姿勢を見せてきたのだが、効果を上げることに失敗してきたばかりか、逆に政府の低迷状況に拍車を掛けることにもなった。

その理由は、思い付きで政策を提示するため、ターンブルがすぐに変節すること、また政策自体は優れていても、政府にそれを売り込む「セールスマン」がいないからだ。ただ最大の問題点は、17年連邦予算案で如実に示されたように、目先の政治的目的を追求するあまり、経済合理主義者であるはずのターンブルが、自由党の政治哲学や信条にもとるような政策を採用したことである。例えば、「大きな政府」への傾斜や市場介入アプローチの採用である。

その結果、ターンブルの信条とは何なのか、誰を、何を代表しているのかが、国民の目からもますます不明瞭なものとなっているのだ。一方、ショーテン野党労働党だが、政党支持率では一貫して優勢であるものの、「好ましい首相」の項目では恒常的にターンブルにリードを許している。要するに、有権者は「不毛の選択」を迫られていると言えよう。

しかも政府の低迷に加えて、17年は政治が混迷した年でもあった。理由は、グリーンズ党上院議員の辞職を発端として、一挙に拡大した連邦議員の二重国籍問題である。連邦憲法の第44条第1項では、二重国籍者には連邦議員となる資格がないことがうたわれているが、同規定に抵触したとして、何人もの連邦議員が辞職を余儀なくされたのである。この政治事件により、ただでさえ、多くの国民の間に醸成されていた政治家不信、政治不信の感情が一層強化されてしまった。さてこうして迎える18年だが、当面の間注目に値するのは、自由党のリーダーシップ問題と次期連邦選挙の行方であろう。まず前者であるが、前回選挙以降、ターンブルの指導力が弱化していることから、しばしばターンブルへの挑戦問題が取り沙汰され、現時点ではビショップ外務大臣、ダットン移民・国境保全相、モリソン財務相の名前が後継候補として挙がっている。ただ、そもそも上記3人が近い将来にリーダーとなることを狙っているとは思えないし、また誰が後任になったとしても、事態が好転すると断言できる者は少ない。しかも労働党のラッド首相や、自由党のアボット首相の例から明らかなように、任期の中途で、また比較的短期の時点で首相を引きずり下ろすのは、政治的に極めて「高くつく」こととなる。従って歴史に学べば、また合理的に判断すれば、次期選挙がそれほど遠くない時期に、しかも大物の後継候補を欠く中で、再度リーダーを挿げ替えるなど、「常識的」には有り得ないと言える。

しかしながら問題は、最近の豪州政治では前例のない事件がしばしば起こることだ。自由党のリーダーシップ問題にしても、確かに可能性は低いとはいえ、交代の可能性を全否定するのは危険かもしれない。次に次期連邦選挙だが、政局の混迷状況に鑑み、一部では下院の早期単独選挙を予想する向きもあるが、やはり次期選挙の形態は通常のパターン、すなわち下院の解散と上院半数解散の同時選挙となる公算が高いように思える。その場合、選挙は19年5月ごろまで延ばすことが可能だが、一方、最も早ければ今年の8月4日に実施できる。実のところ、選挙が今年の後半に実施されることは大いにあり得るように思える。

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