【新年恒例企画】回顧と展望2018/日豪ビジネス(中里浩之)

日豪ビジネス

日本貿易振興機構(ジェトロ)
シドニー事務所長

中里浩之

プロフィル◎早稲田大学法学部卒。2017年8月下旬から現職。直近3ポストは、本部総務部長、北海道地域統括センター長、本部海外調査部調査企画課長。シドニー事務所では、企業の海外展開支援サポート、日本産農林水産物・食品の輸出促進、対日直接投資の促進、調査・情報発信に取り組む。座右の銘は一期一会

日豪ビジネス関係は拡大と深化

2017年は、世界を取り巻く環境の変化も加わり、日豪の関係が更に深化した年だったと言えるだろう。17年1月に安倍総理が豪州を訪問された際も、「日豪の特別な戦略的パートナーシップは、これまでになく強く、また重要」という共同会合成果文書が出された。また、17年は1957年に日豪通商協定が締結されてから60周年という記念すべき年で、AUSTRADE(オーストラリア貿易投資促進庁)から、日本の対豪投資に関わる報告書も発刊されたが、豪州への外国からの直接投資の中で日本の投資残高が2位にあり、豪州経済にいかに重要であるかなどが述べられた。

豪州経済に目を向けると、91年7~9月期から2017年7~9月期まで、105四半期連続で景気後退がなく、世界最長記録を更新中だ。IMFが17年10月に出した経済見通しにおいては、同年の実質GDP成長率は、4月に出した3.1%の予想を0.9ポイント下回る2.2%となったものの、18年の実質GDP成長率は2.9%の予想で、その後22年までの見通しにおいても、各年2%後半の成長が予想されている。人口は、自然増、移民増共にネットで増加しており、豪州政府から56年には3,572万~4,534万人になるとの予想も出されている。このように、豪州市場は堅調さを維持しており、また、市場も拡大基調にある。このような状況下、日豪のビジネス関係について概観する。

まず、日本からの農林水産物・食品の輸出に関してだが、19年に日本からの農林水産物・食品の輸出を1兆円にするというのが、日本の政府目標だ。16年は7,502億円で、そのうち豪向けは124億円で第9位。17年1~9月までを見ると、全体では前年同期比5.4%の伸びとなっているが、豪州向けは、21.4%増と好調で、中でもアルコール飲料が34.6%の大幅増だ。19年の目標に向けてあと2年となる中、豪州での日本食の普及に、皆様にもご協力頂ければ大変ありがたい。

日本からの直接投資については前述したが、17年には、金融機関の新たな進出やM&Aによる進出、また、人材派遣・紹介会社やIT関係の大規模なM&Aなどがあった。豪州の成長性や高い購買力に着目した投資は、今後も継続すると思われる。他方、豪州企業の日本への進出例を見ると、世界100カ国以上で2,000種類以上の小規模グループ・ツアーを提供している、豪州の大手旅行会社Intrepid Groupは、17年3月に京都にPEAK DMC JAPAN株式会社を設立したが、豪州の旅行代理店としては初めての日本進出となった。

観光客の往来に関しては、日本政府観光局(JNTO)によると、豪州からの日本への訪日客数は、17年1~10月で、前年同期比10.4%増の39万8,300人と順調だ。44万5,332人と過去最高を記録した16年を超えることは間違いないだろう。19年のラグビー・ワールドカップ、20年のオリンピック・パラリンピックの日本開催に注目しているオーストラリアの方たちも多く、今後も増加傾向をたどるだろう。

他方で日本からの豪州への観光客数を見ると、16年は前年比22.2%増加し、41万7,900人となったものの、ピーク時の90年代後半の水準に比べるとほぼ半減している。豪州側は、観光客数のみならず、観光部門への投資も重視している中、日豪双方の観光面での魅力をうたうことに相互協力していくことも重要だろう。先日、ケアンズに出張した際、ベテランのタクシー運転手が、「以前のように、ぜひまた多くの日本人に来て欲しい」と何回も言っていたのが印象的だった。

最後に、日豪の今後のビジネス関係でキーワードの1つとなるイノベーションについてだが、豪州は、実にイノベーティブな国ということを改めて感じている、デュアル式トイレ、フライト・レコーダー、Wi-Fi、グーグル・マップ、リレンザ、長期装用コンタクトレンズなど、豪州が発祥というものが数多くある。学校教育、政府の支援、産学連携での取り組みなど、イノベーションを生み出し、また支援する環境が充実していることが背景にある。日本とのイノベーションに関する協力の推進については、日豪両首脳との間、及び第55回日豪経済合同委員会でも確認されているが、18年2月には、準天頂衛星の利活用を含む宇宙協力を推進するため、豪州でワークショップを開催することを検討中だ。

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