QLDではどう違う?教育事情2019

オーストラリアの教育最新事情2019

文=堀千佐子
※当記事の掲載情報は2019年9月時点のもの。

QLDではどう違う?教育事情2019

教育制度改正の背景

オーストラリアの教育制度は、各州都の教育行政部門(The Department of Education and Training)が管轄しているため州都ごとに特徴があり、学校教育制度も多少異なっている。しかし、各州とも国レベルでの大枠に従い、教育改革方針にも準拠して教育行政がなされている。

2008年から始まった全国レベルでの学力考課テスト「NAPLAN(The National Assessment Program Literacy and Numeracy)」の実施に伴い、クイーンズランド(以下、QLD)州では柱となる学習内容とその教育課程において、クイーンズランド・カリキュラムから全国統一基準のオーストラリアン・カリキュラム(The Australian Curriculum)への移行が進んだ。

14年から「コア・サブジェクト」と呼ばれる主要科目(英語、数学、科学、社会)において、オーストラリアン・カリキュラムが導入され、現在、他州と同じ履修内容が実施されている。15年からは、イヤー7(7年生)の学年は、中学・高校に当たるセカンダリー・スクール枠に組み込まれ、国の標準教育となるオーストラリアン・カリキュラムに対応するために大きく改正がなされた。

来年20年からは、大学及び高等教育へ進学するための考課査定である「Overall Position(以下、OP)」が廃止され、「Australian Tertiary Admission Rank(以下、ATAR)」による評価システムが新しく導入される。QLD州内で1992年から適用されてきたOP評価システムは、評価のバンド幅が1から25までと大きく、時代と共に各分野における履修及び選択科目の細分化が進んでいる現状に、今後適応することが難しくなると判断されたからだ。21世紀を担う子どもたちの将来を決定付ける大切な進学コースの確定には、スケーリングと0.05数値刻みでの細かなランク付けができるATAR評価のシステムが必要不可欠となる。この新しいシステム導入によって他州と同様に、より正確で公正な評価を出すことができると言われている。

このQLD州で初めてのATARは今年19年にイヤー11(11年生)である学年から適用され、この生徒たちが20年に新システムの下でイヤー12(12年生)を卒業する学年となる。

学校教育制度の概要

QLD州の大学までの通常の学校制度は、キンディ/プリ・プレップ(保育園、幼稚園)、プレップ(準備教育)、プライマリー・スクール(小学校)、セカンダリー・スクール/ハイ・スクール(中学・高校)に分かれ、セカンダリー・スクールは厳密に言うと、ジュニア・セカンダリー(ミドル・スクールとも言う)とシニア・セカンダリー・スクール(シニア・スクールとも言う)から構成されている。

学年は、プライマリー・スクールからセカンダリー・スクールを卒業するまでの12年間を通して数えられ、小学校1年生に値するイヤー1(1年生)から、高校3年生に値するイヤー12(12年生)まで「イヤー○」と呼ばれる。2017年からプライマリー・スクール入学前のプレップ・イヤーが義務付けられ、大学入学までの学校教育は13年を通して行われる。ただし義務教育は、プレップからイヤー10(10年生)までの11年間になる。基本的な就学年齢として、その年の6月30日までに5歳になる子どもはプレップに入学することができ、週5日の午前9時から午後3時までのフルタイム・プログラムとなる。

1学年は4学期制で、学期はターム(Term)と呼ばれる。通常1タームは10~11週間で構成され、各タームの間にスクール・ホリデーが挟まれる。新学期は1月下旬から始まり、その年の12月中旬で学年度が終了する。

QLD州の学校教育制度

参考ウェブサイト
■Web: www.qcaa.qld.edu.au
■Web: www.australiancurriculum.edu.au
■Web: www.education.qld.gov.au

選択肢の広い学校選び

現在QLD州には、1,230の州立校(State School)と約470のカトリック校(Catholic School)を含む私立校(Independent School)が存在している。それぞれの学校には地域性や特色があり、子どもにどのような環境でどのような形態の教育を受けさせたいかによって、学校の選択肢は変わってくる。理想の学校選びをするためには、まず学校の内容を理解してどのような選択肢があるのかを知っておくことが大切だ。ここでは、特徴のあるいくつかの州立校を紹介する。

●エクセレンス・プログラムを持つ州立校

イヤー7(7年生)から始まる州立校ハイ・スクールでは、普通クラスとは別に、よりアドバンスな内容を提供するさまざまなエクセレンス・プログラムを設けている。総合的なアカデミック・エクセレンスだけでなく、ダンスや演劇、音楽などのパフォーミング・アーツやスポーツなど、実施しているエクセレンス・プログラムの分野や種類が学校によって異なり、それぞれに特化された持ち味がある。

また、第2外国語(LOTE=Languages other than English)で全ての授業を行うイマージョン・プログラム(バイリンガル・プログラムとも言う)を持つ州立校も現在11校ある。そのうち日本語クラスを実践している学校は、ブリスベン近郊にあるプライマリー・スクールのウェラーズヒル・ステート・スクール(Wellers Hill State School)、ゴールドコーストにあるロビーナ・ステート・ハイスクール(Robina State High School)の2校である。両校とも日本語でオーストラリアン・カリキュラムを実施している。

州立校へ入学するに当たっては、居住地の学区(Catchment area)制限があり、その指定学区外からの入学は基本的に認められていない。そして、入学申し込みの際には、住所を証明する書類の提出が必要となることを覚えておこう。自分の住んでいる地域の指定学区にある州立校が、どのような特徴がある学校なのか、どのような内容のエクセレンス・プログラムを提供しているのかを調べてみよう。

●州立校の中のセレクティブ・スクール

州立校でありながら指定学区外からも、アカデミック、パフォーミング・アーツ、スポーツなどの分野で優秀な成績を収めた実績のある生徒が選ばれて入学を許可される、いわゆる「セレクティブ・スクール」と呼ばれるハイスクールがQLD州にも数校存在する。

ブリスベン中心から程近いブリスベン・ステート・ハイスクール(Brisbane State HighSchool)、ケルビン・グローブ・ステート・カレッジ(Kelvin Grove State College)、ゴールドコースト南にあるパーム・ビーチ・カランビン・ステート・ハイスクール(Palm Beach Currumbin State High)は、通常の指定学区内から通う生徒の他にも、部分的に学区外からも学業、スポーツ、芸術など、いずれかの分野で成績優秀な生徒に入学を許可する、言わば“半”セレクティブ州立校である。いずれも学校の総合レベルが高く人気があるため、子どもを入学させるために学区内へわざわざ引越しをする家庭も多い。

一方、ブリスベンに2校、ゴールドコーストに1校あるクイーンズランド・アカデミーズ(Queensland Academies)は、入学試験と面接を受けて合格した生徒のみが入学できる100パーセントのセレクティブ州立校で、イヤー10(10年生)からイヤー12(12年生)が対象のシニア・ハイスクールである。

クイーンズランド・アカデミー・オブ・サイエンス・マスマティクス・テクノロジー(Queensland Academy of Science, Mathematics and Technology)、クイーンズランド・アカデミー・フォー・クリエイティブ・インダストリーズ(Queensland Academy for Creative Industries)、クイーンズランド・アカデミー・フォー・ヘルス・サイエンシズ(Queensland Academy for Health Sciences)の3校は、特に科学、数学、テクノロジー、デザインに特化した学校であるため、将来的にもその分野に興味がある優秀な生徒たちがクイーンズランド州内から集まってきている。今年19年から、ブリスベン西部にあるクイーンズランド・アカデミー・オブ・サイエンス・マスマティクス・テクノロジー(Queensland Academy of Science, Mathematics and Technology)のみ、イヤー7(7年生)からの受け入れを開始してミドル・スクールの門戸を広げている。

クイーンズランド・アカデミーズの特徴は、クイーンズランド大学(UQ)、クイーンズランド工科大学(QUT)、グリフィス大学とのパートナーシップが組まれていること、そして、通称IB(アイビー)と呼ばれている、国際バカロレア(International Baccalaureate)の教育プログラムを採用していることである。この教育プログラムはスイスのジュネーブに本部を置くIBO(International Baccalaureate Organization/国際バカロレア機構)が提供しているプログラムで、国際的な視野を持つ人材の育成を目指している。イヤー11(11年生)からイヤー12(12年生)の2年間で所定のカリキュラムを履修し、最終試験を経て所定の成績を修めると、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)が取得できるディプロマ・プログラムを提供している。

参考ウェブサイト
■Web: www.ibo.org
■Web: www.ibaustralasia.org/schools/Qld


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