OP評価からATAR評価へ – 2020年から始まる 新QCEシステム

オーストラリアの教育最新事情2019

文=堀千佐子
※当記事の掲載情報は2019年9月時点のもの。

OP評価からATAR評価へ – 2020年から始まる 新QCEシステム

前述の通り2020年からQLD州は、シニア・スクールにおける大学及び高等教育へ進学するための新しいQueensland Certificate of Education(QCE)システムへ移行する。これに伴い、1992年から続いてきたOP評価システムを廃止しATAR評価のシステムを導入し、QLD州も他州と同じ“スタンダード・パスウェイ”と言われるシステムで統一される。導入を目前に控えた今、ATAR評価による新しいQCEシステムについて更に詳しく見ていこう。

●なぜ新しいシステムへ移行されるのか

現在のQCEシステムは、92年に導入され、QCSと呼ばれるクイーンズランド・コア・スキルズ・テストを軸にOverall Positions(OP)によってシニア・ハイスクールの生徒たちの進学コースのランク付け(=評価)を行ってきた。しかし、時代と共に21世紀に対応したテクノロジー分野や科目の細分化が進んでいる現状に、現在のシステムで今後対応していくことが極めて困難であるということが、新しいシステムへ移行する最大の理由である。Queensland Curriculum and Assessment Authority(QCAA)では21世紀に必要とされるスキルを身に付けることを大きな目標にしながら、子どもたちの将来のキャリアを決定付ける大切なポジション確定には、OP評価ではなくAustralian Tertiary Admission Rank(ATAR)を適用して、もっと正確で細かいランク付けが必要であるという判断があったためだ。

また、QLD州の学生が他州の大学のコースへ進学を希望する場合や、他州からQLD州の大学のコースを選択したい場合にも、QLD州以外の州都では既にATAR評価のシステムが採られているため、QLD州でのATAR評価システムの適用によって、進路選択がより明確になり手続きも簡単になることが利点とされている。

この新しいQCEシステムは、19年現在、イヤー11(11年生)の学年から適用され、この生徒たちが新システムの下でイヤー12(12年生)を卒業する最初の学年となる。

●OP評価とATAR評価は何が違うのか

新しく導入されるATAR評価もOP評価と同様に、個人の成績結果を他の生徒の成績と総合的に比較して個人のランク(=ポジション)が計算される。しかし、OP評価が生徒の評価を1から25(OP1が最高)までの幅広いバンドでランク付けをしていたのに対し、ATAR評価は0.05単位刻みで0から99.95(最高得点)までの細かなランク付けを行うことができる。このことによって、より正確かつ明瞭に希望する大学やコースを識別することができるようになるというシステムだ。

また、進学希望のイヤー12(12年生)の生徒に一斉に行われてきたクイーンズランド・コア・スキルズ・テスト(QCS)はOP廃止と共に姿を消す。その代わりに、インターサブジェクト・スケーリングという方法を用いて、選択科目と組み合わせ、その難易度などから生徒の成績を測るスケーリングが行われ、その総合された結果がATAR評価のランキング・スコアとして算出される。

●インターサブジェクト・スケーリングとは

前述したように、シニア・ハイスクールでは学習分野の広がりと共に科目も多様化し、それに合わせて、生徒は自分の得意とする科目、そして進学したい方向性に沿った科目を、QCEシステムの規定を満たしながら、それぞれに異なる組み合わせで選択している。その結果、生徒の成績結果を同等の基準で公平に測定するために、インターサブジェクト・スケーリングという複雑な方法が採られている。

例えば、「ジェネラル・マス」という一般の数学を選択したAさんと、「スペシャリスト・マス」というハイ・レベルの数学を選択したBさんのそれぞれのテストの結果が同じ85点をマークしたとする。しかし、それぞれ選択した数学の難易度に差があるためスケーリングされると、Bさんの方が難易度の高い数学であるため、最終的にはBさんの方がAさんよりも5点高い90点のスコアを得る結果となる。

また、別の例として、同じ「化学」と「歴史」を選択したAさんとBさんのテストの結果を見てみるとしよう。

◎実際のマーク◎
Aさん⇒化学80点、歴史90点、合計170点
Bさん⇒化学90点、歴史85点、合計175点

2人とも同じ90点を取っているが、科目が違うのでどちらが良いとは言えず、点の異なる別科目においてもどちらが良いとはこの時点では判別がつかない。しかし、もしも全体の「化学」の平均点が70点と低く難易度が高かった場合、平均点を20点上回るBさんがマークした化学90点は、スケーリングされると5点付加されて最終的なスコアは95点の結果となった。そして、Aさんの化学80点はスケーリングされて2点付加され、最終スコアは82点の結果となる。一方、「歴史」の平均点が90点と高かった場合、Aさんのマークした90点は平均点にとどまり、スケーリングされて1点のみ付加され最終スコア=91点となり、Bさんのマークした歴史85点は2点マイナスされて、最終スコア=82点となる。

スケーリングの結果として、以下のように実際のマークと点数が変わってくる。

◎スケール後のマーク◎
Aさん⇒化学82点、歴史91点、合計173点
Bさん⇒化学95点、歴史82点、合計177点

選択する科目の生徒数や平均点、科目の組み合わせなどのさまざまなパターンの結果から統計的に比較と調整を加えて、公平で正確な総合評価を出していくのが、インターサブジェクト・スケーリングの役目である。過去の統計データから、スケールの評価が高くなる傾向にあるパターンは、「STEM」と言われる科学、テクノロジー、エンジニアリング、数学、そして、難易度の高いエクステンション科目とされている。

参考ウェブサイト
■Web: www.qtac.edu.au/atar-my-path/atar
■Web: www.qtac.edu.au › Article Documents › Overview of Inter Subject S…

●新QCEシステムのガイドライン

科目選択

イヤー11(11年生)からイヤー12(12年生)の2年間を通して履修する科目の選択は、卒業後の方向性に直接影響してくるため、とても重要である。そして、ATARのランキングを得るには5科目(一般)の成績か、4科目(一般)プラス「Applied Subjects」と呼ばれる実用科目、もしくはVocational Education and Training(VET)コースの1選択の成績が必要となる。どちらも英語は必修科目だが、ATAR評価の5科目に加えなくても構わない。

将来の方向性が未確定の場合も、卒業後のコース選択にフレキシブルに対応できる科目を注意深く検討して選ばなければならない。QCAAは選択の際に、下記の点を重視した科目選択を奨励している。

◎生徒が楽しんで学べる科目
◎生徒が好きであり得意とする科目
◎自分の将来のゴールと関連する科目
◎人生に役立つスキルや知識を身につける科目

しかし、将来進みたいコースや仕事によっては、決められた科目を選択して履修しなければならない「Prerequisite subjects」と呼ばれる必須科目や、必須ではないが、事前の履修が望まれる「Recommended subjects」などがあるので、Queensland Tertiary Admissions Centre(QTAC)のウェブサイトで必ずコース・ガイドを確認しなければならない。

参考ウェブサイト
■Web: www.qtac.edu.au/courses-institutions

シラバス

一般科目は4つのユニットから構成された1つのコース・スタディーの形態になっている。ユニット1と2では基礎となる内容を学び、スクール・アセスメントは1科目4つが上限とされ、1ユニットにつき少なくとも1アセスメントが義務づけられている。ユニット1と2を終了するとユニット3から4に進むことができる。

ユニット3と4では更に専門的で高度な内容を学習していく。ここでは、1科目につき3つのスクール・アセスメントとQCAAによる外部アセスメントが1つ加わって計4つのアセスメントを行う。QCAAはスクール・アセスメントと外部アセスメントの結果を合算して科目ごとの最終評価を行い、この結果はQCAAからQTACへ提供され、OPに代わるATARに換算されてランキングが決定される。

アセスメント

スクール・アセスメントは、学校が作成し評価採点する従来の形に変わりはないが、QCAAがより具体的なパラメーターを学校側に提供するのが新しいシステムの特徴である。ユニット3と4で実施する3つのスクール・アセスメントには、実施前にQCAAに内容の承認(Endorsement)を受け、採点後、再びQCAAが評価の確認(Confirmation)を行うという、今までにない新しい機能が用意されている。

これは、学校で行われる全てのアセスメントが各科目の学習内容をきちんと網羅しているかどうか、矛盾のない厳密な評価がなされているかどうかの確認と同時に、質の良いアセスメントを作成していかなければならない学校側の質の向上も意図されている。

QCAAによる外部アセスメントは、QLD全ての学校で同時に実施され、QCAAの特別なトレーニングを受けた採点者が採点を行う。外部アセスメントの成績結果の割合は、3つのスクール・アセスメントと合わせた全体成績の25パーセントに値する。しかし、数学と科学においては、外部アセスメントの成績結果の割合は全体の50パーセントの値を占める。

ATARはスクール・アセスメントと外部アセスメントの累計をスケールして、成績の良いベスト5科目(一般)の結果が使われる。一般科目以外にVETコースを履修している場合も、ディプロマ及びサーティフィケイトⅢ以上の結果とスケールした4科目のアセスメント結果と合わせてATARが計算される。英語はコース・スタディとして必修科目だが、QCAAの合格基準を満たせば良いとされている。

●新システムでどう変わっていくのか?

新QCEシステムは、QLDが21世紀に適応したナショナル・スタンダードの教育制度に追い付いたという意味がある。優れた点やプラス面が多く見られるが、中でも、ATARによって正確でより細かなランキングが計算されることや、スクール・アセスメントの内容や評価に対してもQCAAによる見直しと調整が入ることで、今までにない一貫性のある質の高い内容と、信頼性と透明性のある結果を得ることができるようになるのは着目すべき点だ。その他にも、各科目のアセスメント数が削減されることで、学校側も教える時間が増え、生徒側も学ぶ時間が増加するので、学習全体の質の向上にも期待できる。

参考ウェブサイト
■Web: www.qcaa.qld.edu.au/senior/senior-qce


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