座談会②バイリンガル教育のポイント

子どもの将来を考える バイリンガル教育のススメ

国語を学ぶか、継承日本語を学ぶか

(提供:フォレスト日本語学校)
(提供:フォレスト日本語学校)

――日本語学校とひと口に言っても先生も違えば生徒も違うわけで、それぞれ異なる特色があるのではないかと推察していますが、そのあたりはいかがでしょうか。

知子:大きく分けると2タイプに分かれます。1つは日本語の教科書を使って、日本の学習指導要領と教育概要に沿って授業を行う学校。もう1つは継承語として日本語教育を行う学校です。日本への帰国が決まっていて帰国後に日本の学校での授業についていくことを目的にされている場合は前者の学校を選ぶご家庭が多いと思います。一方、国際結婚などでオーストラリアをベースに暮らしているものの、日本語、また日本の文化などをしっかりと継承していってもらいたいというようなご家庭では後者を選ばれます。

――日本の教育課程の「国語」を学ぶか、海外をベースにした立場から「継承日本語」を学ぶかという違いですね。

美咲:はい、そうです。目的によって選ぶ学校も異なってくると思うので、ぜひ学校のポリシーをしっかりと見てから選んで欲しいと思います。

――言語は、伝達手段であると同時にカルチャーの体現でもあります。その面では、学校もただ言葉を教えれば良いというだけでは当然ないと思いますし、特にアイデンティティーの形成に関して重要な役割を担っていると推察します。

美咲:アイデンティティーは読み書きと同じくらい大事な要素です。私の所属する学校では、机に向かって勉強する時間ももちろんありますが、縦割り学習をやりながら、日本人の方を招いた朗読会を開催したり、剣道のデモンストレーションを観に行ったり、高学年になったら茶道の体験をしたりなど、日本文化に触れる体験を授業に組み込んでいます。小さいうちから日本人のアイデンティティーをしっかり学んで欲しいと思います。

「その言葉に触れられる環境を親がどのくらい用意してあげられるかが重要」と話す知子さん
「その言葉に触れられる環境を親がどのくらい用意してあげられるかが重要」と話す知子さん

知子:加えて、ご両親の方でも、日本にコンスタントに連れて行く、日本人の友達をキープしておくなど、日本文化に触れる機会を用意してあげることができます。日本が好きだと思えるように、学校も一丸となって頑張っていきたいと思います。

美咲:日本に行くと子どもは全然変わりますよね。1カ月行っただけで変わりますし、そういう機会をできる限り作ってあげることが大事ですね。

両親から寄せられる相談

――これまでいろいろなケースをご覧になられて来たと思いますが、よくあるケースやユニークな事例があったらぜひ教えてください。

美咲:子どもは1人ひとり全く違うので一概には言えませんが、親が2人とも日本人で日本語が流暢な一方、英語が苦手という子が意外に少なくありません。そういった子の場合は逆に日本語の宿題を減らすなどして英語にフォーカスできる環境を半年でもいいからとりあえず作ってみたりします。週末、日本語学校で友達に会えることを楽しみにしながら、平日は英語を頑張るという形を取り、英語が追いついてきたら、日本語もまた勉強するようにして両立を図っていきます。
 また、すごく面白かったのは、両親共オージーなのですが、お母さんが日本が大好きというご家庭です。お母さんも子どもも日本語能力がゼロという状態で入学されました。家の壁いっぱいに日本語を貼ってお母さん自身も熱心に子どもと一緒に勉強し、1年後にはしっかりと話せるようになって本当にすごいなと思いました。

――ご両親から相談を受けることも多いと思いますが、どのような内容がありますか。

美咲:先ほど知子先生のお話にもありましたが、日本語で話し掛けても英語で返ってくるという相談が本当に多いです。これに対する答えは「話し掛け続けてください」です。子どもの中にあるコップがいっぱいになって溢れるまで話し続けてくださいと。1回自信がつけば子どもも話し始めます。とにかく話し掛け続けるしかないのでお母さんも大変ですよね。

知子:あとは宿題をやりたがらないという相談も多いです。その場合はとりあえず一緒に座って色塗りでもいいですし座る習慣に身につけさせてあげてください。宿題はお母さんが手伝っても構いません。1日5分でも一緒に座ることで、座って宿題をする習慣が身につきます。お母さんの忍耐も必要なのですが、積み重なって習慣化すると、あとが楽になります。もちろん、どうしてもできないという場合には簡単な宿題にしたり、量を少なくしたりして対応します。

「子どもが大好き」

――お2人は、元々子どもの教育に興味があってこの世界に入られたと聞いていますが、何かきっかけのようなものはあったのですか。

知子:私は自分が小さいころから子どもの面倒を見ることが好きで、近所の子と遊ぶ時にも年下の子の世話をしていました。そんな中、近所のおばさんが私に「幼稚園の先生にぴったりだね」と言ってくださったんです、それが強烈な印象として残っています。今でも違う職業というのは考えられないですね。

美咲:私も子どもが大好きというのが一番です。母親が助産師だったので、家にいつも子どもがいたのも影響していると思います。小さい頃から天職だと思っていましたし、大変な仕事ですが、やりがいを見つけて続けられていますし、好きじゃなかったら続けられないです。

――お2人とも子どもが大好きということで預けられるご両親も安心ですね。最後に、お2人が子どもに日本語を教えていく中で心掛けていることがあったら教えてください。

知子:楽しく学び、友達と仲良くすることが一番です。友達がいることで学校に来たいという気持ちにつながります。また、日本が大好きだと思ってもらえるように心掛けています。例えば日本語を勉強することで、「おじいちゃん、おばあちゃんと話ができるね」とか、「日本に行った時に日本語ができた方がもっと友達できるよ」とか、「日本の絵本、読めると楽しいよね」とか声を掛けてあげています。

――モチベーションを高めてあげるということですね。

知子:週1回なので、できる、できないということよりも楽しく過ごしてもらうことを心掛けています。

美咲:読み書きだけではなく、自分が伝えたいことを日本語で伝えられる、自己表現ができる、アイデンティティーとして文化を理解するなど、そういうところを大切にしながらバランス良く授業を組み立てられるように気を付けています。そしてゲームをたくさん取り入れて楽しく過ごせるようにしていますね。モチベーションを保つことを意識しながらバランスとニーズに合わせて、試行錯誤しながら私自身も楽しんで取り組んでいます。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

(9月17日、日豪プレスオフィスで)


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