シドニー日本人学校 菊地謙二・教頭インタビュー

シドニー日本人学校

菊地謙二・教頭に聞く

2つの文化を理解し幅広い視野を育み

語学力と国際感覚が「生きる力」に

豊かな大自然に恵まれたシドニー北部テリー・ヒルズにあるシドニー日本人学校。両親や子どもの状況やニーズに合わせて「日本人学級」または「国際学級」を選択できるのが特徴だ。同校に子どもを通わせることの利点などについて菊地謙二・教頭先生に聞いた。

 

——秋田県の小学校に勤務して32年目を迎えた今年初め、新しい教頭先生としてシドニー日本人学校に赴任しました。海外での日本人の教育に携わろうと思ったきっかけは?

きっかけの1つは、子どものころからの漠然とした想いでしたが、父親がかつて東南アジアに駐在していた影響で、いつかは海外で仕事をしてみたいと思っていたことです。2つ目は、40代後半に日本人学校に勤務していた先生と同職し、その先生から体験談を聞くうちに、これまでの教職経験を国際貢献に生かしたいと具体的に考えるようになったこと。そして3つ目は、文化や言語が異なる日本人学校での貴重な体験を帰国後の国際理解教育に生かし、国際性豊かな日本人の育成に貢献したいと思うようになりました。

 

——日本の学校と比較してシドニー日本人学校の印象はいかがですか?

空気がきれいで空が透き通るように青く、1年を通してほとんど好天に恵まれています。緑あふれるシドニー北部郊外の雄大な大自然の中にあり、学習や運動に適した環境が整っています。

施設や設備のハード面では、オーストラリアらしい広大な敷地内に全天候型グラウンド、ホールだけでなく、PCルームやスマートボードといったIT機器なども充実しています。

ソフト面では、「日本人学級」(小学部と中学部)に加えて「国際学級」(小学部)を併設しているのが最も大きな特色でしょう。日本人学級は日本の文科省の学習指導要領に準拠したカリキュラムに加えて、週4〜5時間の英語の授業や国際学級と合同の「ミックスレッスン」も行っています。海外居住中に学力の伸びが停滞することなく、同時に語学力や国際感覚を身に付けることが可能なのです。

一方、国際学級はNSW州の教育課程に沿った現地向けの授業を行う中で、週4時間の日本語授業を行い、さらにミックスレッスン、学校行事などを通して日本人学級の子どもたちと交流しています。国際学級を併設している日本人学校は世界でもシドニーだけです。バイリンガル、バイカルチュアルな人材の育成を目指していることに驚きと新鮮味を感じました。

 

——シドニー日本人学校の新しい教頭先生としての抱負をお願いします。

1つ目は、「生きる力」を育むという理念のもと、知(確かな学力)、徳(豊かな心)、体(健やかな体)の調和のとれた教育を目指した「新学習指導要領」の完全実施に伴ってカリキュラムも大きく変わりました。例えば、言語活動の充実、算数・数学、理科などの授業時数の増加、外国語活動の導入などが挙げられます。そこで、指導要領に沿ったカリキュラムをきちんと編成する必要があります。また各教科においては、言語活動の充実を通して思考力・判断力・表現力の育成が求められています。授業のスタイルもこれまでとは変わってきます。そうしたことに対応できるように校内研修を充実させ、教師の授業力を高めていかなければなりません。

2つ目は、永住している子どもたちだけではなく、いずれ日本に帰国する子どもたちにとっても、せっかくオーストラリアに住んでいるのですから、言語学習のほかにオーストラリアの自然や文化、歴史を学ぶ機会を充実させていきたいと考えています。

3つ目は、子どもたちの「生きる力」を育むには、家庭の教育力も大切です。私はPTAの窓口を担当していますので、保護者の方々との連携を深め、お互いに協力できるような体制作りをしていきたいと思います。

 

——アイデンティティー(帰属意識)や母語は、海外に住む子どもの成長にとってとても重要な要素です。オーストラリアで子どもを育てる日本人の読者にアドバイスを。

いずれ日本に帰国するのか永住するのか。日本人として生きるのかオーストラリア人としての人生を歩むのか。親の仕事の事情や家族関係、教育方針などによって子どもの将来はさまざまですが、いずれのケースにおいても当校ではベストな道を選択してもらえると考えています。

日本人学級では日本と全く同じカリキュラムの授業を受けることができますから、正しい日本語、日本人の生活習慣、道徳性、考え方、生活態度といったものが自然と身に付きます。国際学級はオーストラリアの小学校と基本的に同じです。しかし、どちらの学級も語学学習やミックスレッスン、学校行事などを通して日常的に異文化交流を行っています。

そうした環境の中で、お互いの国のものの見方や考え方を理解し、幅広い視野を身に付けることは、子どもの将来にとって必ずプラスの経験になるでしょう。

きちんとしたアイデンティティーと正しい母語を身に付けた上で、語学力と国際感覚という貴重な能力と資質を持った大人に成長してもらえると確信しております。(インタビュー:本紙編集部)

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