引くことを覚える

福島先生の教育指導

福島先生の人生日々勉強
引くことを覚える

自分の生活や環境、人間関係に対する不満が募っていると、周りの人間を否定したくなります。人生そのものとまではいかなくとも、相手の些細な言動をとらえて、いちいち否定するようになります。否定することで、勝利に酔い、心の安定を得ようとするのです。

「それ、間違ってるよ」「悪いのはそっちでしょう」「君なんかに言われたくないね」などと、不満や怒りを並べ立てることで相手より上に立とうとする人は、自分が度々そういう言行をしていることに気付いていません。あるいは、気付いていても、正当な理由があってそうしているのだと思っているので、1歩も引きません。何か自分にとって貴重な意見や経験を得られるような場面でも、相手を貶めるために捨て台詞を言って立ち去るなど、相手の気持ちを学ぶ機会も、何もかもを台なしにすることが多くなります。

こうした言行が対話の中に入り込んでくると、喧嘩やいざこざが発生しやすく、言い負かすための言葉を言えば言うほど、相手の感情を逆撫でし、怒りを増幅させてしまいます。ここで「素直になって自分から引く」と、相手も寛容になります。「必ず言い返す」という習慣をやめ、「そうかもしれない」「分かった。ごめん」ということができれば、揉めごとがすっと収まり、自分も助かることができます。

自分から引くのは難しいと思うかもしれませんが、意識すれば次第にできるようになり、パターン化します。普段から、相手を肯定するように心掛けるといいでしょう。「痛い」と言われれば「痛そう」と、「つらい」と言われれば「つらいでしょう」と、相手が言ったことをただそのまま肯定するのです。ばかばかしく思えるかもしれませんが、自分が言われた場合、相手に肯定される嬉しさは格別であることが分かります。「痛い、痛いっていつも言ってるし」「そんなこと言っててもどうにもならないよ」などと否定するのではなく、全面的に寄り添う方が相手の心も和らぎ、無用の言い争いをすることもなくなります。

言葉は、言ってしまった後にも響きが残り、消えてなくなることはありません。ですから、かりそめにも、相手の心を傷つけ、喜びを奪うような言葉は言うべきではありません。特に、心身に痛みを伴っているような時には、心が極度に消沈しているのが普通です。そうした相手の心をさらに傷めるような言行は、絶対にすべきではありません。相手の幸福をともに喜び、相手の不幸をともに悲しみ、善い行いを祝福し、悪い行いに憎悪を持たない、澄み切った心を目指しましょう。すべては、自分にかかる靄、エゴを取り除き、精神的に成長していくための修行です。


教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。29年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。19 92年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。

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