ジム・ランビーの「Wool Painting (Everything Flows), 2019」

ルーシーのアート通信

オーストラリアのアート業界で活躍中のコラムニスト・ルーシーが
オーストラリアを中心に活躍するアーティストと彼らの作品をご紹介。

第12回 ジム・ランビー
(Jim Lambie)

「Wool Painting (Everything Flows), 2019」


Wool Painting (Everything Flows) 2019, Wool on canvas, 76 x 60.5 x 3.5 cm, courtesy of the artist and Roslyn Oxley9 Gallery, © Jim Lambie, photo: Malcolm Cochrane Photography

1964年、スコットランドのグラスゴーに生まれたジム・ランビーは、家具やポスター、スーツケース、アームチェア、更にはじゃがいもを入れるずだ袋など、身近にある物を活用し、色彩豊かな作品を数多く生み出してきた世界的アーティストの1人だ。元来、スコットランド人は質素・倹約を重視する気質を持つことで知られるが、身の回りにある物を収集し改造するジムの制作のプロセスにはその傾向が顕著に現れている。

大きな称賛を浴びた彼の代表作の1つが98年に完成した『Zobop』というインスタレーションだ。これは蛍光色のビニール・テープを床一面に隙間なく張り巡らせた、目にも鮮やかな作品で、以来この作風が彼の代表的なスタイルとして世界中の美術館・ギャラリーで見る人を魅了し続け、国際的に高い評価を受けている。

オーストラリアでは、2014年に開催された「シドニー・ビエンナーレ」(1973年から続く大規模な現代美術の展覧会)、15年にシドニー近郊パディントンにある「ロズリン・オックスリー9・ギャラリー」で披露されたが、今回、再び同ギャラリーで新たな作品が展示されることとなった。

新しい作品の中で特に注目したいのは、ユーモアと想像性に富んだ『Wool Painting(Everything Flows),2019』。色とりどりの羊毛を使い、慎重に“描いた”この作品は彼の他の作品同様、瞬間的なビジュアル・インパクトを与えてくれるが、同時に、遊び心や独創力も呼び起こさせる作品ともなっている。

ウールという素材からは心地良さ、親近感、安らぎ、郷愁などを想起させられるが、そこには物質と色の相互作用に注目するジムの探求心が表れていると言えるだろう。

ジムは素材や塗料で表現された空間と色彩が人の心理に与える作用について非常に熱心に研究をしている一方で、音楽やポップ・カルチャーにも造詣が深い。ミュージシャンやDJとして活動する音楽家としての一面を持っていることから、音を聞いて色が頭に浮かぶという知覚現象「シナスタジア(共感覚)」も制作時に手法として取り入れているという。『Wool Painting』を含む新たな作品が展示される「Everything Flows」は11月1日~23日、「ロズリン・オックスリー9・ギャラリー」で開催。忙しい日々の中、しばしば孤独を感じさせられることもある現実社会とは対照的に、未来への不安を払拭するような平静と安息に満ちたジムの世界観が感じられるこの機会をお見逃しなく。

Web: www.roslynoxley9.com.au/artists/308/Jim__Lambie


ルーシー・マイルス(Lucy Miles)
オーストラリアと日本のアート業界で25年以上の経歴を持つ。クイーンズランド・カレッジ・オブ・アート並びにグリフィス大学でファイン・アート(ペインティング)の美術学士、クイーンズランド大学では美術史の優等学位を取得。現在、QLD州のサウスポートを拠点にファイン・アート・コンサルタントとして活躍中。
■Instagram: lucy_nsky
■Web: www.luceartbrands.com.au

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