“せんべろ”特選3店!今宵もチープにほろ酔い – Sydney

番外編
シティから1時間以内で行ける異国
特集 マルチカルチュラル・タウンinシドニー

“せんべろ”特選3店!
今宵もチープにほろ酔い

Sydney

アルコール依存症で入退院を繰り返しながら、『今夜、すべてのバーで』や『ガダラの豚』などの名作を残した作家・中島らも(2004年に泥酔してスナックの2階から転落死)は約20年前、1,000円でベロベロに酔える飲み方、通称「せんべろ」を提唱した。これを実践した共著『せんべろ探偵が行く』は、死後も熱狂的な「らも」ファンのバイブルとして読み継がれている。さて、シドニーには1,000円=約13ドルでベロベロに酔える店はない。が、物価が日本の2~3倍と考えれば、世界中のB級グルメを楽しみながら20~25ドルでほろ酔いくらいになれる店ならある。(リポート:守屋太郎)

アクセス
■VN Street Foods(Wolli Creek店Map①)
11/5 Brodie Spark Dr., Wolli Creek
シドニー中心部タウンホール駅から鉄道「T4」で14分。
ウォーライ·クリーク駅下車すぐ。オパール·カード料金は$3.13(ピーク時$4.48)

■VN Street Foods(Marrickville店Map②)
294 Illawarra Road, Marrickille
タウンホール駅から鉄道「T3」で15分。マリックビル駅から徒歩約4分。
オパール·カード料金は$2.52(ピーク時$3.61)

■Mrs. Chan’s Kitchen(Map③)
631-635 George St., Haymarket タウンホール駅から徒歩約5分

■Old Town Hong Kong Cuisine(Map④)
10A Dixon St, Sydney タウンホール駅から徒歩約7分

「肴はあぶったイカでいい♪」――。北国の酒場の情景を歌った八代亜紀の『舟歌』がヒットしたのは昭和54年。「イカだけでお腹いっぱいになるわけないやろ!」。小学生だった記者はそう思った。

大学時代、建設現場でバイトしていた記者は、仕事が終わると、前職がヤクザだった土方のヤマモトさん(仮名)によく大阪環状線高架下の立ち飲み屋に連れていってもらった。一緒に飲むのはとても楽しかったが、アテはいつもタコブツ一皿だけ。たまに箸を付けるだけで、ひたすら安い二級酒を酔い潰れるまで飲むのだった。若かった記者は「お腹いっぱい食べたいねんけどなあ」と心の中でつぶやいていた。

「昔はキャデラック乗り回して、新地でブイブイ言わしとったんや」――。酔うと昔話を始めるヤマモトさん。池乃めだか(身長約149センチの吉本興業所属の芸人)のマネをして、小さな身体で巨大なアメ車のシートにふんぞり返る彼の仕草には爆笑したものだが、その手には小指がなかった。

空きっ腹の胃壁にアルコールを染み込ませたいから、飲む時はお腹いっぱいになりたくない。ガチな酒飲みの流儀が記者にも分かってきたのは、それからずいぶん歳を重ねてからだ。ところが、オーストラリアの一般的なレストランはボリュームが多く、酔う前に満腹になってしまう。でも、小皿のアテと酒を楽しみながらほろ酔いになれる店は、探せばある。「シドニーでせんべろ」に最適な3店を紹介しよう。

ベトナム弁当をつまみに飲む

「VNストリート·フーズ」のベトナムつけ麺(Map①)
「VNストリート·フーズ」のベトナムつけ麺(Map①)
香港料理店「オールド・タウン」(Map④)の蒸しガキのジンジャー・アンド・シャロットと青島ビール
香港料理店「オールド・タウン」(Map④)の蒸しガキのジンジャー・アンド・シャロットと青島ビール
「ミセス·チャンズ·キッチン」の小皿料理(Map③)
「ミセス·チャンズ·キッチン」の小皿料理(Map③)

新築マンションが立ち並ぶシドニー南郊、ウォーライ・クリーク。没個性な町並みに魅力はないが、中国人が多い駅前には意外とうまい穴場的な店がある。「VNストリート・フーズ」(Map①)もその1つ。酒の持ち込み(BYO)が可能で、酒を飲みながら本場ベトナム料理を安く味わえる。

ベトナム風の豚の角煮、空芯菜の和え物、レンコンの茎の酢の物、スープ、白飯が入ったベトナム弁当
ベトナム風の豚の角煮、空芯菜の和え物、レンコンの茎の酢の物、スープ、白飯が入ったベトナム弁当

スーパー「アルディ」で一番安いシラーズ(2ドル99セント)を、VNの向かいにあるアジア食品店「オレンジ・スーパー」で韓国ビール「ハイト」(3ドル39セント)を買って入店する。玄関のレジで、プラスチックでコーティングされたメニューに油性マジックで印を付けて注文。料金は前払いだ。今日はベトナム弁当「5イン1ミール・ボックス」(13ドル)のおかずをアテに飲む。メイン9品、野菜5品、サラダ4品、スープ4品、ライス4品の中から1品ずつ選び、各品が少しずつチープな弁当ボックスに入って出てくる。今回は、ベトナム風豚の角煮&玉子、空芯菜の炒めもの、レンコンの茎の酢漬け、青梗菜のスープ、白飯をチョイスした。

裸電球がつるされた店内は、牛乳ボックスにベニア板を乗せたイス、中古の配管で作ったテーブルが無造作に並び、東南アジアの屋台を作り込んだ演出が良い。奥の席に陣取り、ビールをのどに流し込む。レンコンの茎はコリコリした食感が最高で、酢も効いていてビールに合う。空芯菜もシャキシャキ感とニンニクの風味が楽しめる。じっくり煮込んだ豚角煮も口の中でとろけるホロホロ感が良い。ゆで卵は衣を付けて揚げてあり、衣に角煮の甘辛い煮汁が絡みついて、これも最高のアテになる。

弁当の他に、生春巻やポーク・ロール(ベトナム風サンドイッチ)といったアラカルト・メニューも豊富。一番のお薦めは「グリルド・ポークとライス・バーミチェリ」(11ドル)だ。米粉の細麺をレモングラス風味の豚肉が入ったスープに付け、コリアンダーやバジルなどの香菜と一緒にいただく。さながら「ベトナム風つけ麺」である。甘辛い濃厚なスープと、あっさりした米粉麺、香菜のコンビネーションは一度食べたら癖になる。同店はマリックビル(Map②)に1号店があり、道端のオープン・テラスで同じメニューが味わえる。

弁当のおかずをアテにチープに飲んだ休日の午後。お会計は合計19ドル60セントと「シドニーせんべろ」の予算内に収まった。

激辛タイ料理にビールが進む

次は、チャイナタウンのジョージ・ストリートにあるパブ「チャーリー・チャンズ」(Map③)。サセックス・ストリート側の狭い路地にある、併設のタイ食堂「ミセス・チャンズ・キッチン」はチープに飲める穴場的な店である。このパブは、ローカル・ビールのハッピー・アワー(時間は頻繁に変わるので注文前に確認を)の価格が今どき5ドルとシドニー中心部では最安の部類に入る。

ハッピー・アワーが終わる直前だったので、「トゥーヒーズ・ニュー」をスクーナー2杯オーダーして、店の奥にあるカウンター席へ。前払いで、おつまみメニューから豚レバーとゆで豚(いずれも5ドル)、「フィッシュ・ケーキ」(タイ風さつま揚げ=4ドル)を注文。1杯目を腹に流し込んだころに、3品が出てきた。豚レバーとゆで豚に付いてくるチリ・ソースはやや甘過ぎ、レバーは少し臭みが気になるが、冷えたビールとの相性は悪くない。予算は24ドルと許容範囲内に収まった。

他にも、焼きそばとゆで豚、豚ミンチのミート・ボール、生もやし、香菜などを激辛のグリーン・チリ・ソースに付けて食す「ダーン・ダン・ヌードル」(10ドル90セント)、生の子ガニが入った「ソムタム」(パパイヤ・サラダ=12ドル90セント)など、ビールが進む本格的ストリート・フードが盛りだくさんだ。

最後は、チャイナタウンのディクソン・ストリートにある「オールド・タウン」(Map④)へ。本格的な香港料理店だが、ボリュームの少ない小皿料理も豊富で、酒を飲みながらつまむことができる。

昔、東京で商売をしていたという経営者のおばちゃんが、いつも温かく迎えてくれる。この日は新鮮なタスマニア産のパシフィック・オイスターがあるというので、「蒸しガキのジンジャー・アンド・シャロット(ショウガとネギ)」(時価=この日は1個9ドル)と青島ビール(9ドル)をオーダー。殻の直径が15センチはありそうな巨大なカキをツルリと口に運び、濃密な「海のミルク」の肉汁に感激した。

その後、「点心5品盛り合わせ」(北京ダックの割包と、蒸し餃子4品=17ドル80セント)とビールを追加。総額44ドル80セントと「せんべろ」予算を大幅に越えてしまったが、まあいい。同店は「豆腐のピータン和え」(9ドル80セント)や「鶏の脚の酢漬け」(9ドル80セント)といった安い小皿メニューが充実しており、居酒屋スタイルで飲むのに最適だ。午前2時まで営業しているので、飲み会の後などに「まだ飲み足りない。小腹も空いている」といった時に、1人で気軽に立ち寄れる。

世界中のさまざまな料理が味わえるシドニー。小皿料理をつまみながらほろ酔いになりたい人は、自分だけの「せんべろ」を探してみてはどうだろう。

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