孤児となった赤ちゃんコウモリ

オージー・ワイルドライフ診療日記 第81回
孤児となった赤ちゃんコウモリ

保護された赤ちゃんコウモリ
保護された赤ちゃんコウモリ

 夏に向け日が長くなり、夕方、たくさんのコウモリが空高く飛ぶ様子が見られます。ゴールドコーストに多いクロオオコウモリ(Blackflying fox)とハイガシラオオコウモリ(Greyheaded flyingfox)は例年11月ごろに出産シーズンを迎え、生後間もない赤ちゃんは、飛行中落ちないよう母親の体にしがみ付いています。

 カランビン野生動物病院では、毎日たくさんの赤ちゃんコウモリが治療を受けています。コウモリの赤ちゃんが孤児となる経緯はさまざまです。母コウモリがケガや病気で亡くなった場合が大半ですが、妊娠後期で致命傷を負った母コウモリを安楽死させる直前に、お腹から帝王切開で赤ちゃんを取り出すこともあります。

 あるコウモリの親子は有刺鉄線に引っ掛かり、動けなくなっているところを救助されまし
た。母コウモリは両翼が鉄線に絡まって身動きが取れず、口を使って鉄線から逃れようとしたのでしょう。

 両翼の飛膜にはたくさんの小さな穴が開いていた他、致命傷となったのは、鉄線のトゲが幾つも深く刺さってできた、口蓋から鼻腔にかけてのひどい裂傷でした。赤ちゃんコウモリも目の上に鉄線が深く刺さり、右目が開けられない状態でしたが、幸い頭蓋骨も眼球も無事でした。傷は奇麗に洗い、すぐに鎮痛剤と抗生物質の投与を始めました。

 こうして孤児となってしまった赤ちゃんコウモリは、コウモリ保護団体であるBats Queenslandの保護士さんの元へ送られ、同じく孤児となってしまったコウモリの赤ちゃんたちと一緒に育てられることになりました。

 赤ちゃんコウモリは常に母親と一緒にいるものなので、もし赤ちゃんだけを見つけたら、母親に何かあったか、親から落ちてしまったと考えるべきです。その場合はすぐに地域の野生動物保護団体に連絡してください。

 赤ちゃんは攻撃的ではありませんが、人間にとって危険な感染症ウイルスを所持している可能性があるため、直接コウモリに触れることは控えてください。

このコラムの著者

床次史江(とこなみ ふみえ)

床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。小動物病院での勤務や数々のボランティア活動を経て、現在はカランビン・ワイルドライフ病院で年間1万以上の野生動物の保護、診察、治療に携わっている。シドニー大学大学院でコアラにおける鎮痛剤の薬理作用を研究し修士号を取得。

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