ペットが野生動物を傷付けてしまったら

オージー・ワイルドライフ診療日記 第83回
ペットが野生動物を傷付けてしまったら

蘇生したアオジタトカゲの赤ちゃん
蘇生したアオジタトカゲの赤ちゃん

 カランビン野生動物病院では、新型コロナウイルス感染防止のための行動制限の下でも、昨年1年で1万3000もの動物たちが保護され治療を受けました。野生動物がけがをする原因で、車両との接触の次に多いのがペットの犬や猫による攻撃です。

 犬も猫も動くものを追い掛けることが好きですから、視界に入ってきた野生動物が気になってしまうのは仕方がないのです。庭や家の中に入ってくるトカゲ、鳥、モモンガなどを捕まえて遊んだり、外を散歩中に見つけたポッサムや鳩に噛み付いてしまったり、ということは飼い主が気を付けていても起こってしまう事故。縄張り意識の強いペットならなおさら、家の庭で野生動物を見つけたら侵入者として捉えてしまうものです。

 こうして猫や犬に噛まれたり爪で引っ掻かれたりした野生動物は毎日のように保護され、病院で治療を受けています。民家の庭でペットの犬に噛まれてしまったアオジタトカゲが保護されました。意識はあり前脚で前に進もうとしていましたが、背中の噛み傷からは出血し背骨が曲がっていて、後ろ脚は動かせません。レントゲンを撮ったところ、背骨は完全に折れており、治療の施しようがありませんでした。お腹にはたくさんの赤ちゃんがいることがレントゲンで判明したため、帝王切開で赤ちゃんを取り出し、仮死状態の赤ちゃんたちを蘇生させる処置を行いました。

 保護された動物たちを治療する際、全く外傷がなくても犬や猫に咥(くわ)えられた圧迫による内出血や、唾液による感染症の心配があります。また、犬や猫による傷と分かっている場合は使用する薬の種類などが変わってくることもあります。

 病院としては飼い主さんの責任を追及することはまずありませんので、飼い主さんからペットの関与を必ず申告するようにしてください。

 ペットと野生動物の共生はとても難しい問題です。夜はペットを外に出さない、散歩中はリードを外さないなど、飼い主としてできるだけのことはやっていきましょう。

このコラムの著者

床次史江(とこなみ ふみえ)

床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。小動物病院での勤務や数々のボランティア活動を経て、現在はカランビン・ワイルドライフ病院で年間1万以上の野生動物の保護、診察、治療に携わっている。シドニー大学大学院でコアラにおける鎮痛剤の薬理作用を研究し修士号を取得。

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