雨上がりのアマガエル/オージー・ワイルドライフ診療日記

オージー・ワイルドライフ診療日記 第85回
雨上がりのアマガエル

保護されたアマガエル(Photo: Currumbin Wildlife Hospital)
保護されたアマガエル(Photo: Currumbin Wildlife Hospital)

 南半球に位置するオーストラリアでは12月から2月が夏、サイクロンが発生しやすい季節です。今年はラニーニャ現象もあり、集中的な大雨が続いています。

 野生の鳥や哺乳類たちは雨が降っている間はあまり巣穴から出て来ませんが、ここぞとばかりに活発になるのがカエルです。同じく雨で行動範囲を広げるカタツムリ、ナメクジ、ミミズなどを狙って捕食します。

 足にけがをしている、目が開いていない、近づいても全く動く気配がないなど、連日さまざまな理由で保護されてくる、アマガエルたち。夏休みにキャンプに出掛け、家に帰ってからキャンプ用品に紛れ込んでいたカエルを見つけた、ということも何度もありました。

 そのどれもが、程度の差はありますが脱水症状を起こしています。カエルは肺だけでなく、皮膚でも呼吸することができます。そのため皮膚はとても薄く、粘液で守られています。しかし、長時間水にありつけずにいると、体内の水分が減って粘液の分泌も少なくなり、皮膚から水分を失ってしまうのです。

 カエルが保護されると、まず脱水の状態を確認し、生理食塩水と電解質を調合した液体に浸からせて水分補給するfrog bath(フロッグ・バス)を行います。他の動物だったら点滴や皮下注射での捕液が普通ですが、カエルの何でも吸収してしまう皮膚の特徴を利用した、とても合理的な方法で行います。また、私たちの手に残っている薬品や洗剤などがカエルの皮膚に触れてしまわないよう、カエルを触る時はゴム手袋を着用します。

 折り畳まれたテントに紛れ込んでいたというこのアマガエルは、300キロメートルもの距離を移動してきてしまいました。左前足と背中に負った擦り傷は短期間の治療で治りましたが、キャンプ場に送り返す手段が見つかるまでに2週間も掛かってしまいました。元いた場所で、もう少し続く雨季を謳歌しているはずです。

このコラムの著者

床次史江(とこなみ ふみえ)

床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。小動物病院での勤務や数々のボランティア活動を経て、現在はカランビン・ワイルドライフ病院で年間1万以上の野生動物の保護、診察、治療に携わっている。シドニー大学大学院でコアラにおける鎮痛剤の薬理作用を研究し修士号を取得。

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