殺鼠剤を食べたポッサムの赤ちゃん/オージー・ワイルドライフ診療日記

オージー・ワイルドライフ診療日記 第86回
殺鼠剤を食べたポッサムの赤ちゃん

治療を受け、回復したポッサムの赤ちゃん、リリー
治療を受け、回復したポッサムの赤ちゃん、リリー

 オーストラリアには、コアラやカンガルーなど、この国でしか見ることができないオーストラリア固有の動物がたくさんいます。それは、オーストラリア大陸が早い段階で他の大陸から分断され、特殊な生態系が守られてきたからと考えられています。

 しかし、ヨーロッパからの移民と共に外来種の動物が増え、固有種の生存が脅威に晒されてきました。

 国や州の法律で保護されている固有種とは違い、さまざまな外来種の多くは駆除の対象とされています。

 病気の蔓延、家畜や農作物への被害、固有種の捕食などが懸念され、ネズミ、オオヒキガエル、キツネなどのさまざまな動物が、罠や毒餌を使って駆除されています。

 ネズミを駆除する目的で販売されている殺鼠剤には、血液の凝固を妨げる薬品(ワルファリンなど)が使われており、口にしたネズミは体内外での出血により死に至ります。

 殺鼠剤の種類によっては、毒を口にしたネズミを餌として食べた鳥が、同じように毒の作用で死んでしまう二次被害も起こります。

 また、殺鼠剤はネズミを誘き寄せられるように味や匂いが加えられており、ネズミ以外の動物が食べてしまうこともあります。

 屋根裏にまかれたネズミのための毒餌をポッサムが食べてしまう事故は特に多く、毒餌を食べて既に亡くなってしまった母親と共に発見された赤ちゃんポッサムのリリーも、殺鼠剤を口にしており、重度の貧血になりグッタリとしていました。

 今にも消えてしまいそうな命を前に、昼夜涙しながら献身的にお世話をしてくれた保護士さんのおかげで、今では広い小屋を走り回るほど元気になりました。

 外来種の駆除のために毒餌や罠を使用する際は、対象の動物以外がアクセスできないよう、十分に配慮する必要があります。

このコラムの著者

床次史江(とこなみ ふみえ)

床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。小動物病院での勤務や数々のボランティア活動を経て、現在はカランビン・ワイルドライフ病院で年間1万以上の野生動物の保護、診察、治療に携わっている。シドニー大学大学院でコアラにおける鎮痛剤の薬理作用を研究し修士号を取得。

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