危険が潜むコアラの繁殖シーズン/オージー・ワイルドライフ診療日記

オージー・ワイルドライフ診療日記 第90回
危険が潜むコアラの繁殖シーズン

母親にしがみ付く赤ちゃんコアラ。誤って木から落ちてしまい、けがすることも
母親にしがみ付く赤ちゃんコアラ。誤って木から落ちてしまい、けがすることも

 保護される野生動物の数が少なく比較的静かだった2カ月を経て、今年もコアラの繁殖シーズンがやって来ました。毎年8月から1月にかけて、繁殖のためコアラの行動が活発になります。そのためけがをしたり、コアラがいるはずのない場所で発見され、保護される数が格段に増えてしまう時期でもあります。

 生殖年齢に達したコアラたちは繁殖の相手を見つけるため行動範囲を広げ、交通量の多い道路を横切ったり、民家や牧場に迷い込んだりしてしまいます。生殖年齢に達していない若いオスのコアラが、成熟したオスのコアラに棲んでいた森を追い出され、高速道路やショッピング・センターで発見されることもしばしば。

 また、昨年の繁殖期に産まれたコアラの赤ちゃんはまだ母親の背中で過ごしている時期ですが、オスはそんなことお構いなしにメスに接近します。その際、赤ちゃんが誤って木から落ちたり、オスに攻撃されてしまうこともあります。

 自宅の裏でコアラが争っている様子を見ていたら、高い木の上からコアラの赤ちゃんが落ちる所を目撃した、と野生動物保護団体ワイルド・ケアのホットラインに連絡が入りました。すぐにボランティアが現場に向かい、赤ちゃんを保護し、木を降りてきた母親も捕獲して、カランビン野生動物病院に連れて来ました。木の上には大きなオスの姿が見られ、赤ちゃんは繁殖行動に巻き込まれてしまったのでしょう。

 母親は無傷、赤ちゃんは腹腔内に少し出血があるものの軽症で、1週間ほど入院して治療を受けました。赤ちゃんは順調に回復し、母親と共に野生に返されました。

 繁殖シーズンはまだ始まったばかりですから、また同じような状況に陥ってしまう可能性はあります。それでも私たちにできることは限られていて、けがをしてしまった際の治療、そして、コアラの生息地が狭くなって縄張り争いが激化しないよう、森林を守ることの大切さを訴え続けるのみです。

このコラムの著者

床次史江(とこなみ ふみえ)

床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。小動物病院での勤務や数々のボランティア活動を経て、現在はカランビン・ワイルドライフ病院で年間1万以上の野生動物の保護、診察、治療に携わっている。シドニー大学大学院でコアラにおける鎮痛剤の薬理作用を研究し修士号を取得。

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