ケガした動物を助ける、その前に

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第18回 ケガした動物を助ける、その前に

昨年1年間に「Currumbin Wildlife Hospital」で治療を受けた動物の数は8千超。1匹の動物の命を助けるために直接または間接的に関わる人の数は、その何倍にもなります。ケガした動物を発見した人、現場に赴いたレスキュー、応急処置をした一般動物病院、動物専用救急車で当院まで搬送したボランティア、直接治療に当たったスタッフ、退院後のリハビリを続けた保護士、そして、動物のために寄付をしてくださった人たちと、本当にたくさんの人の力で野生動物保護は成り立っています。

もしケガした動物を見つけたら誰しもが、まず「何かしなければ」と思うのではないでしょうか。自分で最寄りの動物病院に連れて行く人も、RSPCAやWildcareなどの団体に保護を依頼する人も、皆さんに1番最初に考えてほしいのは、「自分に危険が及ぶ可能性がないか」ということです。

野生動物には、厳しい環境で生き抜くための防衛本能が備わっていて、危険が迫っていると感じたら自分の身を守るために攻撃的になることがあります。こちらがどんなに愛情を持って近づいても、動物たちにとって人間は外敵とみなされ、保護する際に噛まれたり引っ掻かれたりしてケガする可能性があります。一見可愛らしいコアラでさえ、その力強い顎で噛み付かれたら、入院が必要なほどのケガを負うことになります。

自宅の庭で飼い犬が襲っていたヘビを助けようとして、逆にヘビに噛まれてしまったという話もよく耳にします。これがもしも毒ヘビだったら、命に関わる一大事です。

路上でケガをした動物を助けようとしている最中に車に轢かれてしまった、ということもたびたびニュースになります。

動物を助ける時、まず周囲に危険がないことを確認してください。次に、その動物を自分で保護することが安全かどうか考えてみてください。小さな鳥であれば、タオルにくるんで箱に入れることは容易ですが、それでも噛まれたり爪が皮膚に食い込んだりする危険が伴います。最善策は、野生動物保護団体に連絡をして指示を仰ぐことです。安全な保護の仕方を教えてもらえますし、危険が伴う場合はレスキュー・スタッフを派遣してくれるでしょう。

目の前の動物を助けたいと思ったら、まずは自分の安全第一を心がけましょう。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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