教えて、校長先生!

QLD日本語補習授業校の窓辺から

「教えて、校長先生!」

第1回 在留子女の母国語教育

ブリスベンやゴールドコースト周辺には、多くの日本人の方が暮らしています。ブリスベンには駐在の方も多く見られますが、全体に永住の方や国際結婚家庭の割合が高いのが現状です。子どもの日本語教育はそのようなご家庭の切実な悩みであるに違いありません。子どもたちは現地校に通い、毎日英語だけで生活しているので、日本語に触れる機会は意図的に作ってあげなければ、皆無となってしまいます。実は、この「意図的に」という点がとても重要です。

日々の生活の中で日本語学習の必要性を感じない子どもに日本語教育をするのは簡単ではありません。日本語教育をめぐって繰り返される子どもとの親子げんかや仕事の忙しさ、教え方の難しさなどから子女への日本語教育を断念してしまっているご家庭もあると思います。理解できることです。現地校にはない不必要な科目である日本語の勉強を要求することは、遊び盛りの子どもには大変苦痛なことです。

そのような中で、補習校のお母様やお父様が日本語教育について強い意志を持ち、子どものために絶対に諦めまいとしている姿を見ると、本当に頭が下がります。子どもの将来を考え、心を鬼にしていることが痛いほど分かります。

滞在の長いご家庭や国際結婚家庭の子女は、自分の精神的な居場所に思い悩む日が来るかもしれません。自分は本当に英語を母国語とするオーストラリア人なのか、顔は日本人なのに日本語のできない自分はいったい何人なのか、日本語が話せても日本人としての人格形成がなされていない自分は本当に日本人なのか。年ごろになり、このような悩みに苦悩するかもしれません。人間は固定した落ち着き場所がないととても不安を覚えるものです。

在留子女が、将来、自分はどこにも属していない、でもどこかに属したいと思った時、心の置き場を見つけることができるようにしてあげるためにも、日本語教育や日本人としての人格形成は大切なものだと思います。


丸山吉信
■プロフィル

日本で大学院修了後、小学校、中学校、高等学校で合計30年間に渡り、帰国子女教育、国際教育に従事。2012年3月文部科学省派遣教員として来豪。現在、在外教育施設クイーンズランド補習授業校ブリスベン校およびゴールドコースト校校長。

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