
オーストラリア本土で、鳥インフルエンザ(H5)がキツネから確認されたことを受け、都市部でのキツネ対策を見直すべきだとの声が上がっている。専門家は、農家だけでなく都市住民も害獣対策やバイオセキュリティーの一端を担う必要があると指摘している。
8月下旬、南オーストラリア州アデレード都市圏で見つかったアカギツネからH5型鳥インフルエンザが検出された。オーストラリアで陸上哺乳類から同ウイルスが確認されたのは初めて。その後、ビクトリア州でもメルボルン南西部のトーキーで死亡したキツネから鳥インフルエンザが確認された。
現時点で当局は、キツネからキツネへ鳥インフルエンザが広がることについては懸念していない。一方、感染した鳥などの死骸をキツネが運ぶことで、ウイルスが別の場所へ拡散する可能性があるとして注意を呼びかけている。
都市部には農村部以上のキツネ
オーストラリアには推定170万匹のキツネが生息しており、意外にも都市部では農村部より1平方キロメートル当たりの個体数が約2倍、場所によっては3倍に達するという。
メルボルンの一部の郊外では、1平方キロメートル当たり16~23匹のキツネが確認される地域もある。
野生動物・害獣対策の専門家リゼット・ミル氏は、都市にはゴミ箱やコンポスト、庭に置かれたペットフードなど、キツネが食料を得られる場所が多く、「都市はキツネにとって食べ物にあふれた場所になっている」と指摘する。
また、病気やけがをしたキツネは、食べ物を簡単に得ようとして住宅や物置など人間の生活圏に近づくこともあるという。
庭の飼育動物にも注意を
ミル氏は、今回の鳥インフルエンザの感染確認を「オーストラリア全体がキツネ対策を考え直す機会」と表現。都市住民にも対策への協力を求めている。
家庭で飼育するニワトリやモルモット、ウサギなどはキツネの獲物になる可能性があるため、庭に食べ物を放置しない、ゴミ箱をしっかり閉める、ペットとキツネが接触しないようにする、といった対策が重要だという。
また、海外ではH5型鳥インフルエンザが猫や犬に感染した例もあるが、感染は主に病気または死亡した鳥との接触によるものとされている。オーストラリアの首席獣医官ベス・クックソン氏は、今回のキツネからの検出について「懸念される事態だが、予想外ではない」とし、現時点でオーストラリア国内において哺乳類同士の感染が確認された証拠はないと説明している。
農業や野生動物への被害も
キツネは鳥インフルエンザだけでなく、疥癬(かいせん)などの病気を媒介するほか、在来野生動物や家畜にも大きな被害を与えている。
オーストラリアでは、キツネによって年間約3億匹の在来動物が殺されているとされ、国内でも特に深刻な侵略的外来種の一つとされている。
全国農業者連盟(National Farmers’ Federation)は、連邦政府が鳥インフルエンザ対策の一環として害獣管理に拠出した資金について、各州・準州政府にも同様の支援を求めている。
専門家は、鳥だけでなくキツネ、野生化した豚、ネコなども感染症を広げる可能性があるとして、農業や食品生産、野生動物を守るためにも、継続的な害獣対策が必要だと訴えている。