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「家賃値上げはようやく沈静化しそうだ」 オーストラリアの金利打ち止めの観測で

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不動産情報会社アナリストが展望示す

 家賃の値上げに苦しんできたオーストラリアの賃貸生活者には朗報だ。昨年以降、急激な勢いで続いてきた家賃の上昇圧力が、ようやく沈静化しそうだという。背景には、激しい利上げがもうすぐ打ち止めとなり、金利がピークを打つとの観測がある。19日付の公共放送ABC(電子版)が、不動産情報会社コアロジックのアナリストの話として伝えている。

グラフ作成:©守屋太郎

利上げはまもなく打ち止め

 中央銀行の豪準備銀(RBA)は昨年5月以降これまで15カ月間に12回利上げを行い、政策金利を4.1%まで引き上げ、住宅ローン金利もこれにともなって急上昇。しかし、ここにきてインフレの鈍化が顕在化していることから、RBAが利上げを近く停止するとの見方が強まっている。

 ナショナル・オーストラリア銀(NAB)とウェストパック銀は「政策金利は9月までに4.6%で頂点を打つ」(利上げは0.25ポイントずつあと2回)と予測している。コモンウェルス銀は「8月までに1回0.25ポイント引き上げて4.35%で打ち止め」、ANZ銀は「もう利上げはなく、現行の4.1%で据え置き」との見通しをそれぞれ示している。その後は「2024年のある時点でRBAが利下げに転じる」というのが、各行の一致した見方だ。

家賃と金利の相関関係とは?

 コアロジックの調査部門の責任者を務めるエリザ・オーウェン氏によると、家賃と金利の上昇にはこれまで相関関係が見られる。このため、政策金利がまもなくピークアウトすると見られることから、家賃の上昇も頭打ちとなる可能性があるという。

 オーウェン氏は、金利と家賃が連動している背景には、いくつかの要因があると指摘する。1点目は、家賃上昇がインフレを押し上げるため、中央銀行の豪準備銀(RBA)による政策金利の引き上げにつながる、という仕組みだ。

「2点目は、金利が家賃に与える影響です。金利が上昇すると、投資物件の魅力が低下します。そうすると、賃貸物件の供給が減少するため、家賃の上昇につながります」(オーウェン氏)

 また、利上げは金利変動型住宅ローン利率の上昇に直結するため、ローンを組んで物件を買い、人に貸している不動産投資家が、膨らんだ利払いのコストを家賃に転嫁しようとする。

 さらに、ローンの残金が少ないか、または既に物件を100%所有しているオーナーは、賃貸住宅市場の受給ひっ迫を利用して家賃を値上げし、収益をより高めようという意欲も高まる。

結局は賃貸需給のバランス次第?

 ただ、結局のところは、家賃は需給のバランスで決まる部分も大きいという。オーストラリアの大都市では、コロナ後の移民受け入れ再開で急増している賃貸需要に対し、空き物件の在庫や新築物件の供給が著しく不足。空室率が記録的な水準まで低下している。

「住宅ローンのコストにかかわらず、賃貸住宅市場が貸し手にとって有利な時、借り手がより安い物件を探すのが困難な時にしか、家賃が急激に上昇することはありません。つまり、賃貸物件の需要が供給を上回っている時に、家賃は上昇するものなのです」(オーウェン氏)

■ソース

High rental growth likely to ease from 2024 as RBA reaches end of interest rate hikes(ABC News)

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