【豪経済】たばこ箱規制、合憲

経済ハイライト

小平直樹・時事通信社シドニー特派員
オーストラリア経済の動き

宣伝色一掃のたばこ箱規制、合憲−最高裁判断

豪連邦最高裁判所は8月15日、喫煙抑制を目的に昨年成立した、たばこ箱からロゴ表示などの宣伝色を一掃する「プレーン・パッケージ」法は合憲だとの判断を下した。日米欧のたばこ大手4社が豪政府を相手取って同法は違憲であり無効だと主張する訴訟を起こしていた。「世界初」の厳しい規制は英国など世界に広がる可能性がある。

同法の規制により、たばこメーカーは、10月1日から規制に準拠した共通包装で製造しなければならず、12月1日からは共通包装のたばこしか販売が認められなくなる。違反には罰金が科される。たばこ箱は共通包装化され、色、位置、大きさ、字体もすべて規定された商品名表示でしかほかのブランドと区別できなくなる。

喫煙による健康被害を警告する文言や、肺がんなどに侵された病変部写真は、これまでより大きく印刷される。若者ら新たな喫煙者を抑制することなどを狙ったものだ。豪政府は最高裁判断後の声明で、「子どもの喫煙を懸念する親に安心を与える判断だ」と歓迎。たばこメーカーに残された「最後の宣伝手段」を排除する意義を強調した。

 

◇9月から入国時たばこ免税枠縮小

豪政府は、たばこ関連の病気により国内では毎年1万5,000人が死亡していると推定。これらは「防げる死であり病気だ」としている。2010年時点での喫煙者数は330万人で、これは14歳以上の人口の15.1%に相当する。1988年時点には30.5%だったことを考えると、かなり抑制が進んできている。

豪政府は、たばこ規制の強化を推進してきた。10年にはたばこへの課税を25%引き上げたほか、広告規制をインターネット上にも拡大した。今年9月からは入国時のたばこの免税枠が1人当たり50グラムと、従来の250グラムから削減される。政府は18年には喫煙率を10%へ低下させたい考えだ。

 

◇WHOは規制の世界的拡大を期待

豪州と同様なたばこ箱の規制は、英国のほか、欧州連合(EU)、ニュージーランドなどでも検討されていると伝えられている。世界保健機関(WHO)のチャン事務局長は、豪最高裁の判断を強く歓迎する声明を発表。「ドミノ効果」的に規制が世界に拡大することへの期待を示している。

プレーン・パッケージ法をめぐり豪政府を提訴したのは、米フィリップ・モリス、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ、英インペリアル・タバコ、日本たばこ産業(JT)の大手4社。たばこ大手は、同法について、ロゴなど知的財産上の権利を政府が補償なく奪うものであり違憲だ、などと主張していた。

JTは、最高裁判断後の声明で遺憾の意を表明。同様な規制の豪州以外への波及の可能性について、他国での「合憲性を示す指標や決定要因とならない」と強調しつつも、動向を注視していく考えを示した。また、同法が「公衆衛生目的の達成に有効であるとする確たる証拠は提示されていない」とも指摘した。

 

◇国際的な争いは継続

同法をめぐる法的紛争は国内的には決着したが、国際的にはまだこれからだ。ウクライナ、ホンジュラス、ドミニカ共和国は、同法が知的財産権に関する国際ルールに違反するとして、豪州を世界貿易機関(WTO)に提訴している。このWTO提訴の背景には、規制の世界的拡大を阻止したいたばこ業界の存在があるともされている。

また、フィリップ・モリスの香港法人が豪州と香港の投資協定に基づいて豪政府に補償の支払いを求める国際調停手続きを起こしている。投資家が投資先の規制などで被害を受けた際に政府を訴えることができる「投資家・国家紛争解決(ISDS)」条項によるものだ。

豪政府は、過去に結んだ投資協定などでは同条項を導入していた。しかし、自国企業より大きな法的権利を外国企業に与え、規制導入を制約する恐れがあるなどとして方針を転換。目下の環太平洋連携協定(TPP)拡大交渉では、米国が主張する同条項の盛り込み要求を拒む姿勢を鮮明にしている。

 

◇政策金利、当面据え置きか

豪準備銀行(RBA、中央銀行)は8月10日に公表した金融政策に関する四半期報告で、今年の年間平均の豪GDP(国内総生産)成長率予測を3.75%とし、前回5月時点の3%から上方修正した。今年上半期の成長が予想よりも強かったためで、下半期は上半期と比べて「幾分減速する」との見通しを示した。

RBAは、8月7日の理事会では2カ月連続で政策金利を3.5%のまま据え置いた。議事録要旨では、「インフレが目標に沿い、成長がトレンドに近いものの、国際的な見通しが数カ月前に比べて弱まる中で、理事会は(現行)金融政策スタンスが引き続き適切だ」と説明。RBAが懸念しているのは主に国外の経済動向だ。

R BAは、住宅市場では6月までの利下げ効果の暫定的な兆候が見られるとしつつ、その利下げ効果が完全に現れるには「まだある程度時間が掛かる」との見通しを示した。一方、消費の伸びは強まったが、政府の給付金支給効果が要因だろうとした。市場ではなおも年内利下げ予想が根強いものの、目先の利下げ観測は後退している。

 

◇海外からの豪国債購入が豪ドル高要因に

豪ドル高が続いている。豪ドルは8月上旬に対米ドルで1豪ドル=1.06米ドル台と3月中旬以来の高値、8月21日には対円では1豪ドル=83円台半ばと4月末以来の高値を付けた。資源国通貨とされる豪ドルは、商品相場が下がると下落することが多かったが、最近は少し違うようだ。

RBAは、世界的経済見通しの弱まりや豪州の主要輸出品である鉄鉱石などの価格下落にもかかわらず、豪ドルは「比較的高い水準」にあると指摘。資源開発ブームに下支えられトリプルAの最高格付けを維持する豪国債に対する「海外から購入」に伴う豪ドル買いがその一因になっているとの認識を示している。

報道によれば、ロシアやドイツ、スイス、カザフスタン、チェコ、ベトナムといった国々の中央銀行が、外貨準備資産多様化などで豪ドル建て資産の購入に動いている。RBAは議事録で、スイス中銀が、スイス・フランの上限レート維持のため市場介入で買ったユーロの一部を豪ドルに転換したと指摘した。

豪ドルには比較的金利が高いという魅力もある。欧州中央銀行(ECB)や米連邦準備制度理事会(FRB)が事実上のゼロ金利政策を取り、市場にはなおも追加金融緩和期待がある一方で、豪州の政策金利は3.5%。RBAが利下げ効果の見極めなどで様子見姿勢を継続する中、金利差はまだ続きそうだ。

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