北、情報管理が武器 南、保革でゆれ大きく 北東アジアの不安「朝鮮半島」

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 米国発の金融危機で、資源高騰で潤っていたオーストラリア経済も8年ぶりの不況。しかし、不況より恐ろしいのは戦争ごっこだ。朝鮮半島に不穏な風が吹いている。朝鮮戦争から半世紀以上経つが南北分断は続いている。イラク、アフガニスタンに次いで新しい戦争の火種になっては困る。その背景は。


 今年になって北東アジア発のニュースで、北朝鮮をめぐるものが増えていた。欧米の英字紙を読んでいると、
「北朝鮮、日本へ向けミサイル発射へ」
 といった見出しの記事に出くわした。米国などの偵察衛星による写真で、北朝鮮にミサイル様の飛翔体が見えたので、上記のような推測記事になったのだが、3月12日になって、北朝鮮は4月初旬に秋田県沖の日本海上と太平洋上に人工衛星と称する長距離弾道ミサイルを打ち込むと国際的に通報した。
ミサイル発射3回目でやっと公表へ
 米国も、中国も、かつて中部太平洋や南太平洋へ弾道ミサイル試射を予告して行っている。公海への長距離ミサイル試射は、弾道ミサイルを持っていないオーストラリアや日本のような国には不快なことだが、北朝鮮は1998年にテポドン1号を予告なしに発射、06年には2号が失敗した。国際ルールに反した行為だった。今回は3度目、やっと予告した。 北朝鮮は、情報管理を武器にする国だ。核開発やミサイル発射でも、秘密のベールの中で進め、世界の関心を集めることで、不安がらせ、国際交渉で有利な立場に立とうとする。
 長距離ミサイルの政治的な標的は米国、核兵器も積めると誇示することで、6カ国協議を飛び越えて、米国と直接交渉できる国家という地位に立ちたい、という野望のためだ。
 野望の主は、金正日(キム・ジョンイル)総書記。情報コントロールの要の人物だ。昨年末の健康不良も灰色のベールの中、ミサイル騒ぎの3月8日の国会議員選挙で投票姿が国営通信社TVの映像で公表された。右手ばかり映り、左手は見えない。こういった情報操作が、実像と虚像をないまぜにさせる戦術だ。 北東アジアの安定を目指しながら、延々と続く6カ国協議。議長役は中国、ほかにロシア、北朝鮮、韓国、日本、米国がテーブルについてきたが成果は出ない。核疑惑やミサイル発射について中国は、「北朝鮮は伝統的な友好国」と煮え切らない。

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北朝鮮が2006年7月5日未明から夕方にかけてキッテリョンと舞水瑞里(ムスダンリ)から計7発の弾道ミサイルの発射実験を実施。図はそれぞれの着弾としたと推測される海域



南は17代目、北は親子2代
 韓国は、17代目李明博(イ・ミョンバク)大統領。北朝鮮は、金日成(キム・イルソン)、正日と親子総書記2代。南北の首脳が会ったのは近年では2000年に金大中(キム・デジュン)と金正日の1回だけだ。金大中、次の盧武鉉(ノ・ムヒョン)は革新派で、北朝鮮を支援しながら、南北統一を狙った。08年からの李明博は保守派で親米路線をとる。米韓日で北に圧力をかける外交戦略だ。
 南の変化に南北協調のシンボルだった、38度線近くの工業団地にいる韓国人を追い出したり、ミサイル発射に反対なら南を攻撃する、と北はいら立っている。南の首都、ソウルは、38度線間近だから脅威といえよう。
 戦争の発火点が身近な日本は…というと、半世紀前の朝鮮戦争は、戦争需要で日本経済の復興にチャンスを与えた。韓国への賠償といえる3億ドルの経済支援は、韓国の工業化の資金になった。
金正日の誤算、拉致を認知
 北朝鮮は、小泉訪朝時に、日本人拉致と一部の死を認めた。金正日総書記としては、それまで情報管理で認めなかった拉致を公式に認めたのだから一件落着。次は、日本による統治謝罪と経済支援を狙ったと推察できる。過ちを認めない北の体質からすれば、逆転ホームランのはずだったが、日本の政府、国民の総反発をくらったのは、大きな計算はずれだった。かえって国連、日米などの経済封鎖はきつくなった。
 こういった南北関係と日韓関係の中で、拉致家族と、元北朝鮮工作員との面談が、3月11日に韓国・釜山で急に行われた。人間ドラマとしては注目されたが、国際情勢の力学が生んだ演出の結果だ。20年以上前の北朝鮮工作員が、どれだけ真実を知っていたかは、金総書記親子の情報鎖国下では、もともと疑問だった。
朝鮮戦争は続いている
 北朝鮮は、どこへ行くのか。国際社会で孤立するかに見える中で、生き残っているのは、独裁体制と情報管理が続いているからだ。脱北者といわれる亡命者が1万人を超えているのに、北朝鮮の実態はつかみにくい。
 脱北者の証言や著述は少なくないが、金正日一族や、政権を支える軍部の全体像は不透明だ。推測、憶測がメディアを賑わせるほど、北朝鮮は安泰なのではないか。
 南アジアでは、ミャンマーの軍事独裁政策が封国状態の中で続いているが、近隣や国際社会に脅威を覚えさせるほどではない。国連の介入も、北朝鮮では効果が上がっていない。韓国常駐の米軍も、朝鮮戦争以来の国連軍の名残りで、戦後60年以上経っても、朝鮮半島では平和は虚構の上に保たれてきた。
 独裁者の死しか、和平の道は開けないのか。核開発や弾道ミサイルに使うカネが、朝鮮半島の人々の暮らしにまわる日は遠い。


筆者紹介・青木公(あおき・ひろし)
朝日新聞社友。日豪プレス創刊時に朝日新聞シドニー支局長。定年後、東南アジア、中南米、アフリカ大陸などの途上国を毎年、訪問・取材。現在、国際協力機構(JICA)サポーター。著書に『ODA最前線』『中高年、はつらつと海を渡る』『ブラジル大豆攻防史』ほか。海外日系紙に寄稿


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