条約あっても 新保有国は続々と

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条約あっても 新保有国は続々と
米ロ首脳、核軍縮合意
文=青木公
 4月初め、米国のオバマ新大統領はロンドンのG20から独、仏、チェコ、イラクを歴訪して、ニューアメリカ外交を展開した。最大の収穫は、米ロ首脳会談で、核軍縮の新条約への道を開いたこと。「核を使用した唯一の核保有国としての道義的な責任」というが、インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエルと核拡散の乱世。包括的核実験禁止条約(CTBT)や核不拡散条約(NPT)は、生き返るのか--。


 原子力発電所や核施設のお目付け役、国際原子力機関(IAEA)は、オーストリア・ウィーンのドナウ河沿いの国連ビルの中にある。北朝鮮やイラクの原子力施設に査察官を送り、開発や実情に目を光らせている。北朝鮮は、ミサイル発射を国連で非難され、IAEA査察官を追放。核の無力化をやめた。
冷淡だったブッシュ政権
 数年前、ウィーン滞在時に、核外交の担当者と話したことがある。
「核大国の米国・ブッシュ大統領は、核不拡散のテーブルにつかないのですから、いくら国際会議をやっても意味がない。無力感に陥りますよ」。
 その一方で、米国は、イラク(フセイン時代)や北朝鮮の査察にもっと力を入れろとIAEAに圧力をかけるので…と米国への不信と不満は強かった。
 単独行動派のブッシュ(共和党)時代8年が終わって、国際協調派のオバマ大統領は4月1日、メドベージェフ・ロシア大統領との首脳会談で核軍縮に力を合わせて取り組む。12月までに米ロ間の戦略兵器削減条約を新条約に切り替え、戦略核弾頭の数をさらに減らす--で一致した。
 米国発の金融危機をどう収めるかで開いたロンドンG20首脳会議が決定的な対策を打ち出せなかったのに比べて、核軍縮で米ロ合意は、明るい国際ニュースではあった。
 欧州歴訪のチェコ・プラハで、「核のない世界」演説をした4月5日は、北朝鮮が人工衛星と称する長距離ミサイルを発射した日だけに、唯一の被爆国、日本での反響は大きく、広島や長崎の被爆者は核廃絶へ久しぶりの前進と発言した。

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保有国本位の条約に不満
 米ロ合意と言っても、そう楽観的になるわけにはいかない。核兵器をめぐる国際的な取り決めは、いくつもある。例えば、核不拡散条約(1970年発効)。核保有国が米ロ英仏中5カ国以外に増えるのを防止する条約で、非保有国には核兵器の生産・製造を認めないのは差別的だと反発を招き、98年に未加盟のインド、パキスタンが核保有国となり、有名無実に--。
 96年にできた包括的な核実験禁止条約は、原子炉を持つ44カ国の条約批准が必要だが、爆発を伴わない核実験は認めるというのは、5カ国の核独占で尻抜けではないかと批准は難航。米国は上院で批准案を否決。これも立ち往生している。
 隙間を埋めようと、兵器用の核分裂物質生産停止条約(カットオフ条約)をクリントン米大統領(当時)が提唱したが、条約案のまま宙に浮いている。
 もたつく間、条約に入っていない国の核保有は進んだ。領土問題で対立するインド、パキスタン。軍独裁の北朝鮮、パレスチナ問題でアラブ諸国と対決するイスラエルが核保有国となってしまった。イスラエルに対抗するリビア(放棄)、イラク(発見されず)、イランと、核疑惑が続いている。イスラエルはシリアにも核疑惑がありとして空爆までやり、核は平和を脅かし続けている。
それでも数千発ある米ロ
 米、ロは、これまでの削減条約で、核弾頭数を各6,000発に減らした。新条約では1,700~2,000発に減らすとしている。もちろん、悪くない成り行きではあるが、国際社会が脅威と感じるのは、むしろ後進の核保有国だろう。
 中東であれば、イスラエル。アジア太平洋であれば、北朝鮮が、核使用の火元になるのではないかと危惧される。核保有の先進5カ国は、ともかく広島、長崎以降64年間、核兵器は抑止力として機能してきた。軍事力と言うよりは外交力の一部になっている。しかし新保有国には、歯止めが利かない恐れを感じる。
 日豪間で見れば、ラッド首相は初訪日を、広島の原爆慰霊碑への参拝で始めた。オーストラリアとニュージーランドは、南太平洋の非核地帯化で旗振り役だった。昨08年9月、広島で主要8カ国下院議長会議が開かれた。平和派の河野洋平・衆院議長の呼びかけで催されたが、米国のナンシー・ペローシ下院議長(民主党)も、原爆慰霊碑に詣でた。原爆投下国として、ペローシ議長の参拝は最高位の米国人と、広島では注目された。
生きているうちは無理 ?
 オバマ大統領は「核兵器を使った唯一の核保有国として道義的な責任がある」とプラハ演説で述べ、他国に同調するよう呼びかけた。もし、オバマ大統領が訪日時にヒロシマ詣すれば、チェンジ(変革)の言行一致となるだろう。また、「私が生きているうちは無理だろう」とも、核廃絶についてオバマ氏は述べているが、削減への流れに期待したい。


筆者紹介・青木公(あおき・ひろし)朝日新聞社友。日豪プレス創刊時に朝日新聞シドニー支局長。定年後、東南アジア、中南米、アフリカ大陸などの途上国を毎年、訪問・取材。現在、国際協力機構(JICA)サポーター。著書に『ODA最前線』『中高年、はつらつと海を渡る』『ブラジル大豆攻防史』ほか。海外日系紙に寄稿


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