2018年11月 ニュース/総合

党内抗争が補選の敗因と認めたスコット・モリソン首相
党内抗争が補選の敗因と認めたスコット・モリソン首相

与党、下院で過半数割れ確定

補選で自由党候補敗北――新政権に打撃

8月に退陣に追い込まれたマルコム・ターンブル前首相の議員辞職に伴い、シドニー東部ウェントワース選挙区の連邦下院補選が10月20日、行われた。シドニー副市長や豪医師会初の女性会長を務めた無所属のケリン・フェルプス氏が、駐イスラエル大使の経験がある自由党のデイブ・シャーマ氏を破った。

この結果、与党保守連合(自由党、国民党)は定数150の下院で74議席と過半数割れが確定した。少数与党となったことで、ターンブル氏の後継として8月に就任したスコット・モリソン首相の保守連合政権は、下院の少数勢力の支持なしで法案を通過させることが難しくなった。来年5月までに行われる次期連邦選挙に向け、モリソン政権は綱渡りの議会運営を迫られている。

敗因は党内抗争への批判票

連邦選挙管理委員会(AEC)の開票結果(10月25日時点)によると、一次選考票ではシャーマ氏が3万2,348票を獲得し、フェルプス氏(2万1,795票)をリードした。しかし、優先順位付連記投票制の下で下位候補の得票を振り分けた結果、上位2人の得票でフェルプス氏が上回った。地元で人気が高いターンブル氏が失脚したことで、保守票が知名度の高いフェルプス氏や他の野党候補に流れたとみられる。

モリソン首相も20日夜、支持者の前で「数カ月前の出来事によって、自由党は大きな代償を支払った」と述べ、党内抗争による首相交代劇への批判が敗因との見方を示した。

国内有数の高級住宅街がある同選挙区は、伝統的に保守の牙城として知られている。連邦制施行後、自由党の前身政党も含めて、一貫して保守政党が議席を維持してきた。無所属候補が議席を獲得したのは今回が初めて。


資源からスタートアップまで幅広く議論
日豪経済合同委員会会議、シドニーで開催

第56回日豪経済合同委員会会議が10月14~16日、シドニーで開かれた。日本側から三村明夫・日豪経済委員会委員長(新日鐵住金名誉会長)、草賀純男・駐豪大使、財界関係者ら232人、豪州側からロッド・エディントン豪日経済委員会委員長、グラディス・ベレジクリアンNSW州首相、リチャード・コート駐日大使、財界関係者ら224人の合計456人が出席した。

14日にシドニー現代美術館で開かれた歓迎レセプションで開幕した。15日と16日の2日間はシドニー市内のホテルで全体会議を開催。豪ビジネス・カウンシルのグラント・キング会長の基調講演「長期的展望という視点」に始まり、「長期的視点」をテーマに「エネルギー・電力」や「テクノロジー・スタートアップ」、「スマート・シティ」などのトピックをめぐり、議論を深めた。

会議後の産業視察会では、シドニー湾岸の再開発地区であるバランガルーとダーリング・ハーバー、起業家支援の施設「シドニー・スタートアップ・ハブ」を見学した。

東京での1963年の第1回合同会議以来、日本と豪州で毎年、交互に開いている。日豪の経済人が集まり、2国間の貿易・経済関係について意見を交換している。第57回は2019年10月に大阪市内で開催する予定。


シドニー市内の目抜き通り、ジョージ・ストリートのライト・レール建設工事現場
シドニー市内の目抜き通り、ジョージ・ストリートのライト・レール建設工事現場

完成は2020年5月以降に

計画より1年以上遅れ――シドニー路面電車

シドニー市内で建設工事が行われている路面電車「シドニー・ライト・レール南東線」の完成が、2020年5月以降にずれ込む見通しであることが分かった。当初の予定より1年以上遅れることになる。公共放送ABCが10月4日、報じた。

施工会社であるスペイン建設大手「アクシオナ・インフラストラクチャー」の豪州法人で社長を務めるビード・ヌーマン氏が、NSW州議会の公聴会で証言した。同社はNSW州政府との契約内容が「誤解を生んだ」として、州政府を相手に10億ドル以上の損害賠償訴訟を起こしている。州政府との契約後に、路面電車が通るシドニー市内の目抜き通りジョージ・ストリートの電線工事の安全基準が大きく変更されたことなどから、難工事を強いられたという。

州政府が設計段階でガスや送電網、下水道など既存インフラへの工事の影響を見誤ったとして、同社は当初の予定より工事日数が865日伸び、工費だけで4億2,600万ドル増えたと主張。車線や駅の設計変更は全体で60カ所以上に及んだとしている。その上でヌーマン氏は、周辺の住民や事業者に与えた迷惑と工事の遅れについて「心から残念に思う」と述べた。

新路線は、市内北部のサーキュラ・キーから南東部キングスフォードとランドウィックを結ぶ12キロのルートで建設が進められている。既存のバスを大量輸送が可能な路面電車に置き換えることで、移動時間の短縮と渋滞の緩和を図る。市内中心部を縦断するジョージ・ストリートは大半の区間で、通行止めとなり路面電車の路線と歩道だけになるため、市内の風景も大きく変わる。

当初の計画では、19年3月の州選挙前の完成を目指したが、グラディス・ベレジクリアン州首相は今年9月、「19年末までに開業させる」と表明していた。

15年10月に始まった工事が4年目を迎える中、工事がこれ以上遅れ、訴訟が泥沼化するようだと、半年以内に選挙を控えたベレジクリアン政権への風当たりは強まりそうだ。豪州のインフラ事業参入を図る外資企業にも、工事をめぐる混乱は投資へのマイナス要因として認識されかねない。


再生エネで水素製造へ

既存パイプラインにガス供給――シドニーで実証実験

連邦政府の豪再生可能エネルギー庁(ARENA)は10月22日、再生可能エネルギーで水から取り出した水素を都市ガスなどに利用する実証実験に750万ドルを投じると発表した。水素ガスを既存の都市ガス網に提供することで、水素エネルギーの新しい貯蔵方法を検証する。

パイプライン運営会社ジェメナが手掛ける「H2GOプロジェクト」(総額1,500万ドル)を支援する。プロジェクトでは、陽光や風力などの再生エネを使って水を電解して水素と酸素に分ける施設(出力500キロワット)をシドニー西部に建設。取り出した水素を既存の都市ガスと混ぜて供給することで、都市ガスの「脱炭素化」を進めるとしている。

水素エネ、輸出も視野に

発表によると、ガスに占める水素の割合が10%以下であれば、既存のパイプラインや機器をそのまま使用でき、法規制にも対応できるという。実証実験の期間は2年間。製造した水素の一部は、ガス発電に利用して電力網に送電する他、水素を電気に変換してモーターで走る燃料電池車の燃料としても利用する。

豊富な天然資源である水を電気分解して作る水素エネルギーは、究極の再生可能エネルギーとして注目されている。ただ、現状では低コストで供給が安定している化石燃料由来の電力で電解して作る方法が主流であるため、一部には「本末転倒」との指摘もある。水素は気体のままでは体積が大きいため、運搬や貯蔵にはマイナス253度以下に冷やす必要があり、マイナス162度以下の液化天然ガス(LNG)と比較しても技術上のハードルが高い。

再生可能エネルギーのみを使って製造した水素が、ガスの状態で既存のパイプラインを流通するようになれば、水素エネルギーの貯蔵という観点から画期的な技術革新につながるかもしれない。

ARENAは「長期的には、水素は豪州の主要な資源輸出商品となる可能性を秘めている」として、水素エネルギーの実証実験や研究開発に注力。10月初めには、水素輸出に関する豪州の9つの大学と研究機関が手掛ける16件の研究開発プロジェクトに、2,200万ドルの予算を拠出すると発表している。


渋滞がますます悪化しているシドニー市内の交差点
渋滞がますます悪化しているシドニー市内の交差点

大都市の交通渋滞が悪化

2030年の経済損失は最大373億ドルに

豪自動車連盟(AAA)は10月15日、都市部の交通渋滞に関する報告書を発表した。これによると、2018年の各都市圏の主な幹線道路の平均速度を13年と比べたところ、都市部の交通渋滞が軒並み悪化していることが分かった。平均速度の下げ幅は、シドニーが3.6%、ブリスベンが3.7%。メルボルンは8.2%と主要都市の中で最大だった。

主なルート別に朝のピーク時の所要時間を13年と比較したところ、シドニー南郊サザーランドから市内中心部(CBD)までの区間(平均速度が時速47.7キロ)では平均2.7分伸びた。メルボルンでは南東郊外ダンデノンからCBDまでの区間(平均速度時速56キロ)で3.7分余計に時間が掛かった。

AAAによると、15年の交通渋滞による経済損失は165億ドルだったが、30年には最大で373億ドルに達する可能性があるという。

豪州は2010年代に入り、インフラ整備に力を入れる保守連合政権の下で、都市部の道路建設にようやく本腰を入れた。だが、その多くが完成するのはまだ先で、増え続ける都市人口にインフラ整備が追い付いていない。

AAAは燃料税収の50%以上を交通網の整備に拠出するよう連邦政府に要請してきた。しかし、今後4年間の同割合は32%にとどまり、過去10年間の平均である50.3%を大幅に下回る見通しだという。AAAのマイケル・ブラッドリー代表は声明で「悪化する交通渋滞を解消する方策を考える上で、報告書が議論を活発化させるきっかけになって欲しい」と述べた。引き続き道路インフラへの投資を強化するよう連邦政府に働き掛けていく方針だ。


環境負荷低い街造り提案――西シドニー
三菱重工、NSW州政府と覚書

三菱重工は10月15日、西シドニー地域の開発で環境調和型の街造りを提案することでNSW州政府と合意し、了解覚書(MOU)に調印した。シドニーで2番目の国際空港として建設が進められている西シドニー空港や周辺の都市開発、工業団地などで、エネルギー消費や温室ガス排出量の低減など環境負荷の低い「スマート・シティ」の開発を支援する。同社は「エネルギー・マネジメントなどを始めとする三菱重工グループの製品技術やサービスなどを通じた各種ソリューションを提案する」としている。これまでの実証実験の成果も役立て、省エネ・低炭素技術によるビジネス・モデル創出を図る。

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