2019年10月 ニュース/総合

来年3月、羽田増便で訪日が便利に

新発着枠、豪州線は1日4便割り当て

来年3月29日から、豪州線の発着枠が4便増える羽田空港
来年3月29日から、豪州線の発着枠が4便増える羽田空港

東京国際空港(羽田空港)と豪州を結ぶ航空便の発着枠が来年3月29日以降、日豪の航空会社で合わせて1日当たり4便増えることが決まった。日本の国土交通省が9月2日、発表した。このうち日本の航空会社に2便割り当て、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)にそれぞれ1便ずつ配分した。

羽田と豪州間の航空路線の発着枠はこれまで、深夜早朝(23~6時)の時間帯に限られていたが、今回の決定で、新たに昼間の運航が認められた。現在、ANAとカンタス航空がいずれも週7便で羽田−シドニー線を運航しているが、JALの羽田—豪州線への参入が可能となる。各社の新ルートの詳細は、年内の早い時期に発表される可能性がある。

豪航空2社が発着枠競う

一方、豪州に割り当てられる2便の発着枠を巡っては、豪国際航空サービス委員会(IASC)が17日、カンタス航空による2便の申請を受理したと発表した。ロイター通信によると、カンタスは羽田−シドニー便の増便(1日2便)と、成田−メルボルン便の羽田への移管を計画しているという。

ヴァージン・オーストラリアも17日、1便の発着枠獲得をIASCに申請すると発表した。豪州側の発着地は明らかにしていない。業績が低迷している同社は路線網の見直しを進めており、収益が見込める羽田線で自社直行便の日本初就航を目指す。

日豪交流の拡大に弾み

東京都心に近い羽田への増便によりビジネスや観光で利便性が増し、選択肢も広がる。日豪間では近年、豪州人の訪日客が急増していると共に、豪州を訪れる日本人観光客も回復基調が鮮明となっている。羽田発着枠の拡大で、人の流れの拡大にいっそう弾みが付きそうだ。

日本政府は首都圏空港の機能強化を図るため、羽田空港の国際線発着回数を現在の年間約6万回から約3万9,000回増やし、約1.7倍の約9万9,000回に拡大する。今回の決定により、同空港の昼間国際線発着枠は全体で1日当たり合計50便増える。25便がANAとJALの日本の航空会社に、25便が相手国の航空会社に配分された。国別配分数は表の通り。

羽田空港は2010年に国際線定期便の運航を開始して以来、国際線の発着枠を拡大してきた。日米両政府が今年1月、民間航空機が従来迂回していた米軍横田基地の航空管制空域に新たな飛行ルートを設定することで合意。東京五輪・パラリンピックを前に大幅な増便が可能となった。

羽田空港の昼間時間帯1日当たり発着枠 国別配分数(2020年3月29日〜)

国名 日本の航空会社 相手国の航空会社 合計
米国 12便 12便 24便
中国 4便 4便 8便
ロシア 2便 2便 4便
豪州 2便(ANA1便、JAL1便) 2便 4便
インド 1便 1便 2便
イタリア 1便 1便 2便
トルコ 1便 1便 2便
フィンランド 1便 1便 2便
スカンジナビア※ 1便 1便 2便
合計 25便 25便 50便

※デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの3カ国


スノーウィー・マウンテンズの水力発電所建設をはじめ、国家的プロジェクトに貢献したトヨタ・ランドクルーザー
スノーウィー・マウンテンズの水力発電所建設をはじめ、国家的プロジェクトに貢献したトヨタ・ランドクルーザー

豪州で世界最多の100万台超販売

トヨタ「ランクル」、悪路で定評

豪州の農村のクルマ社会を象徴する存在となっているトヨタ自動車の4輪駆動車「ランドクルーザー(ランクル)」の累計販売台数がこのほど、全世界で1,000万台を突破した。このうち豪州では、世界の国・地域で最も多い106万5,000台(全体の10.6%)を販売した。トヨタ自動車の在豪現地法人、トヨタ・オーストラリアが9月20日、発表した。

ランクルは1951年以来、世界の約170カ国・地域で販売されてきた。豪州でも輸入開始以来60年の歴史がある。日本の自動車メーカーの海外生産が進んだ現在も、ほぼ全量が日本国内の工場で生産される「メイド・イン・ジャパン」の代表的ブランドだ。

ランクルには用途別に3車種がある。豪州での累計販売台数のタイプ別内訳は、「70系」などのヘビー・デューティー系が39万7,000台、「200系」など大型ステーション・ワゴンが36万2,800台、中型ステーション・ワゴン「ランドクルーザー・プラド」が30万5,500台だった。

豪州での昨年の販売台数は4万2,267台。世界販売台数(31万8,000台)の13.3%を占めた。

国家的インフラ事業で活躍

ランクルが豪州で初めて上陸したのは1959年。戦後の経済発展を支えた国家的インフラ事業、NSW州のスノーウィー・マウンテンズ水力発電所建設工事の現場に導入された。工事の作業用車両として酷使され、悪路での走破性や耐久性が評価された。

以来、豪州では農村部の未舗装路での移動手段としてだけではなく、過酷な自然環境で鉱業・農業の作業機械として使用されている。トヨタ・オーストラリアによると、豪州では地下1,600メートルにある亜鉛・銅鉱山での作業や、面積8,000平方メートルの広大な放牧場で牛を集める馬の代わりに使われている例もあるという。一方、都市部では、人や荷物がたくさん積めるファミリー・カーとして使用されている。

同社のショーン・ハンリー副社長(販売・マーケティング担当)によると、最初に輸入されたランクルがスノーウィー・マウンテンズ水力発電所建設工事の悪路で故障した際、トヨタの技術者が日本から駆けつけ、現場に住み込んで対応に当たったという。同副社長は「トラブル解決に全力を挙げた当時の姿勢が、豪州でのトヨタ・ブランドの成功に重要な役割を果たした」と話している。


9月8日、シドニー市内のNSW州議会前の路上を行進する参加者
9月8日、シドニー市内のNSW州議会前の路上を行進する参加者

気候変動対策訴えデモ行進

全豪各地で約30万人が参加

気候変動対策の強化を訴えるデモ行進が9月20日、シドニー中心部で行われた。22日に米ニューヨークで開かれた国連気候変動サミットに向けた世界的な抗議行動の一環。市内エリザベス・ストリートにあるNSW州議会前では、参加者が「アダニ(QLD州で大規模な炭鉱開発を進めているインド企業)を止めろ」「地球を救え。プラネットB(地球に代わる星)はない」「海水面ではなく声を上げよ」などと書いたプラカードを掲げて練り歩いていた。

化石燃料を燃焼することで排出される二酸化炭素や家畜から出るメタンなどの温室効果ガスは、人為的な地球温暖化の原因とされる。参加者は、温室効果ガス削減策の大幅な強化を訴え、①石炭・天然ガス開発の中止、②再生可能エネルギー比率を2030年までに100%に引き上げること、③化石産業の開発に従事する労働者に代替の仕事を保証すること、などを政府や企業に要求した。

環境保護の活動家や労組など左派系組織だけではなく、平日にも関わらず参加した制服姿の児童・生徒も目立った。子どもたちは「試験に落ちるよりも、私たちの地球がダメになる方が悪い」と声を上げた。子どもを巻き込んだ抗議活動を巡っては「教育現場に政治を持ち込むな」との批判も出ていた。

公共放送ABCによると、シドニーのデモ参加者数は8万人(主催者発表)。シドニーなど8州都と104の地方都市でも行われ、全豪の参加者数は主催者発表で最大30万人、少なく見積もっても18万人に達したという。ストには2,500社以上の会社や商店が参加し、自発的に休業したり、従業員の仕事を休むことを許可したりした。


試運転を行うライトレール
試運転を行うライトレール

ライトレール試運転始まる
路面電車が58年ぶりに復活――シドニー中心部

シドニーの目抜き通りジョージ・ストリートで8月28日、路面電車「ライトレール」の昼間の試運転が始まった。路面電車が市内中心部に復活するのは58年ぶり。シドニーでは19世紀から路面電車が網の目のように走っていたが、モータリゼーションを背景に1961年に全線が廃止されていた。

市内北部サーキュラー・キーと南東郊外を結ぶ新しいライトレールは、建設工事が当初の計画から大幅に遅れていたが、これまでに線路の設置が100%終了。旅客を乗せた営業運転は、サーキュラー・キーからランドウィックまでの区間が今年12月、キングスフォードまでの全線が来年3月に、それぞれ始まる予定だ。


オパール・カードはもう要らない?
クレジット・カードなどで全線乗車可能に――シドニー

シドニーのバス、鉄道、路面電車、フェリーの全線が9月23日から、非接触型ICカード「オパール・カード」の代わりに、クレジット・カードやデビット・カードをかざすだけで利用できるようになった。使用できるのはアメリカン・エキスプレス、マスターカード、ビザのクレジット・カードまたはデビット・カード。スマートフォンやタブレット、スマートウォッチなどのウェアラブル端末も、キャッシュレス決済のアプリを備えた対応機種であれば利用できる。


ニュース解説

豪米同盟の結束と信頼をアピール

モリソン首相訪米――13年ぶり国賓訪問

スコット・モリソン首相は9月19日から約1週間、米国を国賓として訪問した。ワシントンのホワイトハウスで現地時間20日(豪州時間21日)に行ったドナルド・トランプ米大統領との首脳会談では、豪米同盟の結束と同大統領との個人的な信頼関係をアピールした。一方、緊張が高まるイランへの軍事攻撃の可能性や、米国との貿易戦争が激化している中国への認識を巡っては、モリソン首相とトランプ大統領の間で微妙なズレも表面化した。

米東部時間の9月20日、ホワイトハウスで記念撮影を行うモリソン首相夫妻とトランプ大統領夫妻 ©AFP
米東部時間の9月20日、ホワイトハウスで記念撮影を行うモリソン首相夫妻とトランプ大統領夫妻 ©AFP

2017年1月のトランプ大統領就任以降に国賓として訪米した外国首脳は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領に続いてモリソン首相が2人目だ。豪州の首相としては、06年のジョン・ハワード首相以来13年ぶり。20日夜には、ホワイトハウスの大統領職務室に隣接する庭園「ローズ・ガーデン」で公式晩餐会が開かれ、モリソン夫妻は手厚い歓迎を受けた。

公共放送ABCなどの報道によると、晩餐会にはヘンリー・キッシンジャー元国務長官、ルディー・ジュリアーノ元ニューヨーク市長、豪州出身プロ・ゴルファーのグレッグ・ノーマン氏、メディア大手フォックス・コーポレーションのラクラン・マードック最高経営責任者など、トランプ大統領に近い著名人が参席した。サンチョーク(北米原産の根菜)のラビオリ、ドーバー海峡産シタビラメ、リンゴのタルトの3コース・ディナーと、米カリフォルニア州ナパ・バレー産の白ワインが提供されたという。

モリソン首相は晩餐会のスピーチで「私たち(豪米)は多くの戦争を一緒に戦い、平和の恩恵を実現するために立ち上がってきた」と語り、1世紀にわたる両国の軍事協力を称えた。また、「100年のマイトシップ(友情)と、今後100年のために」と述べ、乾杯の音頭を取った。

豪州は第1次世界大戦中の1918年、フランス北部アメルで史上初めて米国との共同作戦を実施した。ドイツ軍に勝利したものの、800人(豪戦争記念館より)の犠牲者を出した。以来、第2次世界大戦から朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争、対「イスラム国」空爆に至るまで、米国が関与したほとんどの戦争に参戦。安保面では米国と一蓮托生の関係にある。

首相:中東での軍事行動は「未定」

晩餐会に先立って20日に行われた豪米首脳会談。共同記者会見の質問は「イラン」と「中国」に集中した。

サウジアラビアの油田に対するドローン攻撃(14日)で緊張が高まる中東情勢を巡っては、トランプ大統領は、関与が疑われるイランへの報復について「一番簡単な方法だ。今この場で攻撃許可を出すこともできる」と述べた。ただ、軍事攻撃は可能な限り避けたいとの考えも示した。

これに対し、豪州軍のイラン攻撃参加の可能性について聞かれたモリソン首相は「計画もないし、支援も要請されていない。質問の答えは未定ということだ」と述べるにとどめた。豪州は8月、ホルムズ海峡で航行の自由を確保するため米国主導の有志連合「海洋安全保障イニシアチブ」に参加し、哨戒機とフリゲート艦を派遣すると発表している。

ただ、現時点ではあくまでも船舶の安全な航行を守るのが目的で、軍事作戦とは一線を画している。首相は「問題が起きた場合、(攻撃の)要請があれば同盟国として検討するが、豪州の国益に合致するかどうかを判断する」と説明した。

一方、米国との貿易摩擦が激化している中国への対応を巡っては、トランプ大統領が「中国は誰よりも早く軍備を拡大しており、世界にとって脅威だ」と指摘した。これに対して、モリソン首相は「豪州は中国との間で、包括的・戦略的パートナーシップを結んでいる。中国とはうまくやっている」と語った。

首相は、中国に知的財産権の侵害を止めること、国際ルールの遵守などを求めているものの、中国は豪州にとって最大の輸出先であり、本格的な対決は避けたいとの本音が透けて見える。

なお、首相は21日、月と火星への有人宇宙飛行を計画している米航空宇宙局(NASA)と連携し、豪国内の宇宙関連事業などに5年間で1億5,000万ドルの予算を投じると発表した。連邦政府は昨年、豪宇宙局(ASA)を新設して宇宙開発に力を入れている。30年までに宇宙産業の規模を120億ドルと現在の3倍に拡大し、2万人の雇用創出を目指す。

イラン、中国次第で豪経済に打撃

保守系の全国紙『オーストラリアン』は23日付の社説で、首相が盲目的な米国追従ではなく「豪州の国益を第一に、対中・対イラン政策を決定すると表明した」ことを高く評価した。その上で「強固な同盟関係で結ばれた両国の絆に焦点が当たり、大きな成功を収めた」と解説した。

一方、リベラルな論調で知られる地方紙『シドニー・モーニング・ヘラルド』は24日付の社説で、次のように論じた。

「モリソン氏は同盟国・米国との連携を強調しながらも、対中政策などでは(米国と)利益が異なることを丁重に説明する必要があった。同時にトランプ氏との個人的関係を築きつつも、無条件に追従することは避けなければならなかった。モリソン氏は安全に乗り切ったようだが、今後は分からない。(中略)トランプ氏を敵に回してはいけないが、あまり近付き過ぎるのも良くない」

いずれにせよ、ホルムズ海峡で一旦戦火が開かれれば、既に有志連合に参加を表明している豪州が戦闘から距離を置くことは難しそうだ。中東からの原油供給が滞れば、原油や石油製品の備蓄が少ない豪州国内では、エネルギー危機のリスクも高まるだろう。

一方、米中貿易戦争の長期化で中国経済が打撃を受ければ、対中輸出への依存度が高い豪州経済も窮地に陥る。トランプ大統領は、米中が貿易協議に合意すれば「豪州のメリットは非常に大きい」と強調したが、来年11月の米大統領選までに合意に至らない可能性も示唆した。

モリソン首相は、ひとまず訪米を無事に乗り切ったように見える。だが、今後の展開次第では、中東での軍事作戦、米中貿易戦争の泥沼化、国内経済の減速という3つの内憂外患に苦しめられることになりそうだ。

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