2020年4月 ニュース/総合

新型コロナウイルス危機、雇用・生活に大打撃

連邦政府、1,890億ドルの景気対策発表

3月22日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、飲食店や映画館などの不要不急のサービスを禁止すると発表したスコット・モリソン首相(Photo: AFP)
3月22日、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、飲食店や映画館などの不要不急のサービスを禁止すると発表したスコット・モリソン首相(Photo: AFP)

豪州では3月に入って、新型コロナウイルス(COVID-19)の人から人への感染が急速に広がり、24日に感染者数が2,000人を突破した。海外渡航の禁止、国境封鎖、飲食店など人が集まる施設の閉鎖やイベントの禁止、州境の封鎖など、連邦・州政府はあらゆる感染抑止策を総動員しているが、現時点では拡大に歯止めがかかっていない。買い占め騒ぎで空っぽになったスーパーの棚、社会保障事務所に長蛇の列を作る失業者、人影のないビーチ……。目に見えないウイルスとの戦いが、豪州に空前の経済危機をもたらしている。

感染ピークをできる限り遅らせる

連邦保健省によると、3月25日午後3時時点の豪州国内の感染者数は過去24時間で287人増え、2,423人に達した。地域別で最も多いのはNSW州で1,029人。VIC州(466人)、QLD州(443人)がこれに続く。集団感染が広がったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた男性(76歳)が1日、WA州で死亡して以来、これまでに全国で8人が命を落とした。

国内感染者数が100人を超えたのは3月10日。その後わずか2週間で感染者数は20倍以上に拡大した。1日当たりの新規感染者数はほぼ右肩上がりで増加している(グラフ1)。

豪州における新型コロナウイルス感染者数の推移2020年1月20日~3月22日
グラフ1

現時点で1日の新規感染者数がおおむね数十人に抑えられている日本と比較すると、現在の豪州は感染拡大期の真っ只中にあると言える。海外で感染した豪州人の渡航先(グラフ2)を見ると、欧州と南北アメリカ大陸の合計で全体の4分の3以上を占め、発信源の中国などアジア諸国はむしろ少ない。豪州は初動で中国からの入国を禁止して感染阻止に注力したが、対策が手薄だった欧米への渡航者から感染が広がった格好だ。

海外で新型コロナウイルスに感染した豪州人の渡航先
グラフ2

連邦政府は現在、感染者の増加ペースをできる限り緩やかにすることを最優先に取り組んでいる。感染者数が医師や病院の処理能力を超過すれば、「医療崩壊」が起き、重篤な患者の治療に手が回らなくなるからだ。「エピデミック」(大規模な流行)のピークを少しでも後ろに遅らせるため、豪州は海外渡航禁止や国境封鎖、人が集まる施設の閉鎖、州境の封鎖などの厳しい措置を導入してきた。3月末の時点では、欧米で相次いでいる外出禁止例などの「ロックダウン」(都市封鎖)には踏み込んでいない。ただ、これから爆発的な感染拡大が起きた場合、ロックダウンが選択肢として浮上する可能性も否定できない。グラディス・ベレジクリアンNSW州首相は24日、感染が更に拡大した場合、英国が実施しているような外出禁止令を発動する可能性を排除しなかった。

スコット・モリソン首相は同日夜の会見で「外出が絶対に必要でなければ、できるだけ家にいてほしい。仕事のために出かけるのはやむを得ないが、可能な限り在宅で勤務してほしい」と呼びかけている。

飲食店や酒場などを閉鎖

3月初旬のシドニー南郊のスーパー「ウールワース」の食品売場。トイレット・ペーパーやティッシュ・ペーパーだけではなく、パスタやコメなどの保存食も棚から姿を消した
3月初旬のシドニー南郊のスーパー「ウールワース」の食品売場。トイレット・ペーパーやティッシュ・ペーパーだけではなく、パスタやコメなどの保存食も棚から姿を消した

モリソン首相は22日、各州首相らとの会議で、新型コロナウイルスの感染を抑えるため、人が集まることを制限する強硬措置を決めた。これにより、23日正午から、レストランやカフェ、パブなどの飲食店、会員制クラブ、映画館、フィットネス・ジム、屋内のスポーツ施設、礼拝施設などが全国で閉鎖された。

現時点では、テイクアウェイ(持ち帰り)の飲食店や、酒販店、スーパー、小売店などの営業は認めている。措置を1カ月ごとに見直すが、実施期間は半年間に及ぶ可能性があるという。順守されない場合、より厳しい第2弾の措置も検討する。

更に、モリソン首相は24日、これらの対策の強化すると発表した。22日の措置に加えて、新たに葬式の出席者数の上限を10人、結婚式を5人に制限した。25日午前0時以降、人と人の接触が多い美容サロンや日焼けサロン、ネイル・サロンなどの店舗、ギャラリーや美術館、博物館も閉鎖し、不動産物件の内見会や競売も禁止した。一方、ショッピング・センターなどのフード・コート(食堂)の営業はテイクアウェイに限って認めている。理髪店やヘアサロンも、現時点では営業を継続できるとしている。

連邦政府はこれらの発表に先立ち、18日に次の制限措置を導入している。◇野外で500人以上、屋内で100人以上の不要不急の集まりを禁止すること、◇屋内の100人以下の集まりでは1人当たり4平方メートルの空間を確保すること、◇可能な限り他人との間に1.5メートル以上の間隔を空けること、◇不要不急な旅行をやめること、◇感染すれば重篤化する恐れのある高齢者の住宅施設への入場制限――。

GDPの約1割、空前の経済対策

新型コロナウイルスの流行による景気の冷え込みと雇用不安が広がる中で、連邦政府は2008年の世界金融危機時を上回る、史上最大規模の緊急経済対策を相次いで打ち出した。中央銀行の豪準備銀(RBA)の金融緩和と共に、財政政策と金融政策の両輪で、経済危機による国民生活への打撃を和らげる狙いだ。

モリソン首相は12日、資産の即時償却の拡大などの中小企業への支援策や、社会保障受給者への750ドルの給付などを柱とした176億ドルの景気刺激策を発表した。続いて22日には、第2弾となる661億ドルの追加景気刺激策を公表した。RBAの銀行への低利融資枠900億ドルなどと合わせ、経済対策の規模は総額1,890億ドルに達し、ジョシュ・フライデンバーグ財務相によると「豪国内総生産(GDP)の9.7%」に相当する。

第2弾では、失業手当や農業生産者などへの手当を今後半年間、2週間当たり550ドル増額。社会保障受給者への給付金もさらに750ドル上乗せする。スーパーアニュエーション(積立年金)の取り崩しを2年間にわたって年間1万ドルまで認める。

企業向けの支援策としては、中小企業や非営利団体の雇用を維持するため最大10万ドルを支援する他、中小企業への新規貸付の50%を政府が保証する制度も設けた。需要の急減で窮地に立つ航空会社や空港にも総額7億1,500万ドルを支援する。

首相は「(危機後の)回復に向けた橋渡しをする。より多くの雇用を守り、失業者の最低限の社会保障を提供すると共に、景気回復時には可能な限り敏速に再雇用できるように会社の事業存続を支援する」と述べた。その上で首相は更に追加の景気対策を計画していることも明らかにした。

国境封鎖、豪州人の出国も禁止

連邦政府は18日、4段階中最高レベルの渡航中止勧告を全世界を対象に発令した。帰国を望む海外滞在中の豪州人に対しては、航空便の運航が激減していることから、可能な限り速やかに帰国するよう呼びかけた。海外から帰国する豪州の市民権または永住権の保持者に対しては、到着日から14日間の自主隔離を命じた。また、モリソン首相は24日、渡航中止勧告をより厳格な「渡航禁止」に引き上げると発表した。

更に、連邦政府は20日午後9時以降、豪州の市民権または永住権を持たない全ての外国人の入国を禁止し、国境を封鎖した。モリソン首相によると「国内の感染例の約80%が、海外で新型コロナウイルスに感染したか、海外から帰国した人と接触したことによる」という。国境封鎖は感染拡大の抑制に効果があるとしている。

航空業界への影響は甚大だ。国内最大手のカンタス航空は19日、格安航空部門ジェットスターを含む国際線の全定期便の運航を、3月末から5月末まで停止すると発表した。グループの従業員約3万人のうち約3分の2は5月末まで休業させるが、一部は無給で休ませる。国内線は通常の60%の輸送能力で運航を続ける。例えば、通常1週間当たり往復250便運航しているシドニー―メルボルン線は88便に、142便運航しているシドニー―ブリスベン線は50便に、それぞれ減便する。

ヴァージン・オーストラリア航空も18日、全ての国際線を3月30日から6月14日まで運休すると発表した。国内線の輸送能力も6月14日まで50%削減する。

一方、国内の人の動きも止まっている。SA州は24日、QLD州は25日からそれぞれ外部との州境を封鎖し、モノの輸送を除いて人の往来を原則的に禁止した。TAS州、WA州、北部準州も24日までに、他州から入った人に14日間の自主隔離を義務付けている。

株価急落、豪ドル18年ぶり最安値

新型コロナウイルス・ショックの激震は豪州の金融市場にも広がっている。豪証券取引所(ASX)の株価指標「S&P/ASX200」は3月第3週、前の週と比べて13%下落した。1週間の騰落率としては世界金融危機の渦中だった2008年10月の15.6%以来、史上2番目の下げ幅を記録した。

飲食店などが閉鎖された23日、S & P/ASX200の終値は4,546と20日比で5.6%下落。わずか1カ月前の2月20日に記録した7,162の史上最高値からの下落率は36.5%に達した。

危機に弱い資源国通貨の豪ドルも、大幅に下落している。3月20日の外国為替市場では、1豪ドル=55.08米セントと02年10月以来約18年ぶりの安値を記録した。

企業活動が制限され、飲食店などの営業が停止したことで、失業者は急増している。シドニー東郊の社会保障事務所「センターリンク」。23日、週末に発表された新型コロナウイルス対策の手当や給付金を申請するために集まった人たちが長い列を作っていた。センターリンクのウェブサイトもアクセスが殺到して閲覧できなくなり、需要が急増したためコール・センターに電話がつながらないなど混乱が広がった。

一方、最高気温が35度に達したシドニー東郊ボンダイ・ビーチは20日、大勢の市民やサーファーたちで賑わった。しかし、500人以上の大規模イベントを禁止した政府の新型コロナウイルス対策を適用し、地元ウェイバリー市は同ビーチの閉鎖に踏み切った。

地元紙によると、隣のタマラマ・ビーチでは21日、大勢の聴衆が退去命令を拒否したため、警官が出動する騒ぎもあった。閉鎖の動きは、市内東部の他のビーチや北東郊外のマンリー・ビーチにも拡大している。週明けの23日、いつもは観光客で賑わっているボンダイ・ビーチは閑散としていて、波の音だけが響いていた。

日本人の若者が困窮!?

在留邦人の生活や雇用への影響も避けられない。サプライ・チェーンの寸断や移動の不自由により、日系企業の経済活動に支障をきたしている。日本人の就業者が多い観光や留学の業界では、国境閉鎖で送客が完全にストップした。飲食店の経営者も、営業再開の時期が見通せない中で、全く売上がない状態で家賃などの固定費を払い続けることは難しい。

また、現地の飲食業界は、ワーキング・ホリデー・ビザ保持者や留学生など豪州に滞在する日本の若者の雇用の受け皿となってきたが、23日からの営業停止で失業者が急増しそうだという。シドニーの日系飲食業界の関係者が警鐘を鳴らす。「日本食レストランなどの突然の休業により、ワーキング・ホリデー・ビザや学生ビザで就業している日本人が大量に職を失い、深刻な問題になるのではないか。急な失業で生活に困窮し、資金不足で帰国もままならず、大勢の日本人の若者が路頭に迷う可能性もある」

こうした若者は狭いアパートを大人数でシェアして住んでいるケースが多いことから、新型コロナウイルス感染のリスクも高いという。海外旅行傷害保険に加入していない人も多いと見られ、万が一感染しても十分な治療を受けられない恐れもある。

ともあれ、現時点では時期は見通せないものの、永遠に終息しないウイルス感染症はない。単純に比較はできないが、数種類あるコロナウイルス感染症の1つである重症急性呼吸器症候群(SARS)の例では、2002年11月に中国・広東省で最初に報告され、32の国・地域で8,000人以上の感染者を出したが、約8カ月後の03年7月に世界保健機構(WHO)が終息宣言を出した(出所:厚生労働省)。常に最新の一次情報を入手して、冷静な対応を心掛けたい。

連邦政府・新型コロナウイルス情報ウェブサイト
Web: australia.gov.au


豪準備銀、量的緩和に踏み切る

900億ドル低利融資も――コロナ危機対策

新型コロナウイルス流行による経済活動の停滞で景気が急速に冷え込む中で、中央銀行の豪準備銀(RBA)が史上初の「量的緩和」に踏み切った。2008年の世界金融危機時を上回る総額1,890億ドルの景気対策と合わせて、連邦政府とRBAは財政政策と金融政策の両輪をフル回転させて新型コロナウイルス・ショックの激震に備える。

RBAは3月3日、既に史上最低水準にあった政策金利を0.25ポイント引き下げて0.5%とした。続けて19日には、同金利をさらに0.25ポイント引き下げて0.25%とすると共に、市場から国債を買い入れる量的緩和を導入すると発表した。3年物の豪州国債の利回りを0.25%に誘導するとの目標を掲げた。導入1日目の翌20日には、償還まで2〜8年の豪国債50億ドル分を購入した。

固定金利0.25%で金融機関を支援する3年間の融資制度の導入も決めた。困窮した中小企業への融資を円滑に行うため、最低900億ドルの資金を金融機関に供給する。

RBAは通常、毎月第1火曜日の定例理事会で金融政策を決定する。1カ月間に2度も金融政策を変更するのは異例だ。

RBAのフィリップ・ロウ総裁は声明で「新型コロナウイルスによって引き起こされた経済と金融の混乱を緩和するために、金融政策と財政政策が重要な役割を果たす」と量的緩和の必要性を強調。その上で同総裁は「完全雇用と2〜3%のインフレ目標を持続的に達成するまで利上げは実施しない」と言明した。

市中のマネー供給増やす

中央銀行は通常、金利を上げたり下げたりすることによって物価をコントロールし、経済成長と雇用の安定を目指す。景気の拡大局面では利上げによってインフレ(物価上昇)を抑制する一方、減速局面では利下げによって個人や企業の資金調達コストを下げることで、景気を下支えする。

しかし、ゼロ金利に近づけば利下げの効果は限られてきて、量的緩和を含む「非伝統的金融政策」が選択肢に浮上する。量的緩和とは、金融政策を金利の上げ下げではなく市中に流通する「お金の量」に置き換える比較的新しい手法だ。

中央銀行が国債などの金融資産を市場から買い入れることにより、世の中に出回るお金の量を増やすことで物価上昇と景気の刺激を図る。実際には中央銀行の職員がコンピューターで電子的に操作するが、大量の紙幣を印刷するイメージから「マネー・プリンティング」とも呼ばれる。

新型コロナウイルス危機が導入早める

世界で先陣を切って量的緩和に踏み切ったのは、2000年代に深刻なデフレ・スパイラルに見舞われた日本だ。08年の世界金融危機以降、米国や英国、欧州などの中央銀行にも広がった。量的緩和の先には、日銀などが実施している「マイナス金利政策」も視野に入る。

日本や欧州など北半球の主要先進国は金融危機以降、超低金利下でも低成長、低インフレが続く「長期停滞」に陥った。一方、豪州経済は1991年6月期以来29年近くにわたって景気後退(2四半期連続のマイナス成長)を回避するなど比較的好調に推移してきた。主要国と比べて金利水準はおおむね高く、利下げによる金融緩和の余地は残されていた。

ところが、最大の輸出先である中国の景気減速や米中経済摩擦の激化など、世界経済の先行き不透明感を背景に豪州の成長は鈍化した。足踏みする景気を下支えするため、RBAは昨年6月以降、小刻みに利下げを実施し、昨年10月には0.75%まで引き下げた。年内の量的緩和導入はある程度織り込まれていたが、3月に入り新型コロナウィルスによる経済危機が急激に進行したことで、矢継ぎ早に導入が決まった。


12月期GDP、前期比0.5%増

3月期・6月期はマイナス成長の予測も

人通りもまばらなシドニーのオフィス街に、約30年ぶりとなる景気後退の影が忍び寄っている
人通りもまばらなシドニーのオフィス街に、約30年ぶりとなる景気後退の影が忍び寄っている

豪統計局(ABS)が3月4日に発表した19年9〜12月期の実質豪国内総生産(GDP)は季節調整値で前期比0.5%増となった。前期の0.6%増からわずかに減速した。前年同期比では2.2%増だった。市場予想の「0.3〜0.4%増」(公共放送ABC)を上回った。ABSのブルース・ホックマン主席エコノミストは「経済は年間を通して成長を続けているものの、成長率は長期的な平均を引き続き下回っている」と述べた。

個人消費と政府部門の支出が好調だったものの、住宅建設と民間の事業投資の落ち込みが相殺して内需は前期比0. 1%の伸びにとどまった。ただ、「住宅の名義移転にかかる費用」は前期比12.3%増、前年同期比6.5%増と好調で、不動産市況の回復を裏付けている。

資源部門の生産量は前期比1.6%増、前年同期比7.3%増と順調だった。しかし、鉄鉱石や石炭、天然ガスの価格が下落していることから、名目GDPは前期比0.3%減少した。資源部門の利益も前期比2.6%減となり、交易条件も5.3%悪化した。ホックマン氏は「商品価格の変動は、輸出高や実質取得の面で、豪州経済に大きな影響を与えている」と指摘した。

30年ぶり景気後退の可能性

12月期GDPは、20年1月以降に被害がピークを迎えた東部の森林火災による影響が完全に反映されていない。また、昨年末の時点で新型コロナウイルスの感染は中国本土にとどまり、豪州では存在自体がほとんど知られていなかった。

新型コロナウイルス流行による実体経済への影響は、まだ数字に現れていない。ABSが16日に発表した1月の短期渡航者数(季節調整値)は前月比3.3%減、6日発表の1月の小売売上高(同)は0.3%減。5日発表の1月の輸出額(同)は前月比3%減、輸入額は前月比3%減だった。いずれも小幅な縮小にとどまっており、外国人観光客や留学生の急減、経済活動の停滞、失業者の増加などの影響が出てくるのは2月以降と見られる。

大手会計事務所KPMGの試算によると、新型コロナウイルスによる豪GDPへの影響は20年にマイナス0.8%、21年にマイナス0.9%に達し、回復まで約10年かかるという。3月4日付ABC(電子版)は、「20年1〜3月期、4〜6月期共にマイナス成長になる」とのエコノミストの予想を報じている。豪州は91年6月期以来約30年ぶりとなる景気後退(2期連続のマイナス成長)の危機に直面している。


煙による死者400人超

森林火災、直接の犠牲者より被害甚大

2020年1月初旬から中旬にかけて、豪東部のPM25濃度は豪環境基準を大幅に超える数値を記録した
2020年1月初旬から中旬にかけて、豪東部のPM25濃度は豪環境基準を大幅に超える数値を記録した
昨年12月初旬、森林火災の煙に覆われたシドニー湾
昨年12月初旬、森林火災の煙に覆われたシドニー湾

昨年末から今年始めにかけて豪東部で発生した大規模な森林火災で、煙の大気汚染による健康被害で400人以上が亡くなり、火災による直接の死者数(33人)を大幅に上回った可能性がある。3月13日発行の豪医学誌「メディカル・ジャーナル・オブ・オーストラリア」(電子版)が掲載した論文で明らかになった。

論文をまとめたタスマニア大学のフェイ・ジョンストン准教授(疫学)らの研究チームによると、火災の煙が原因と見られる健康被害による死者数(推定)は、豪東部4州・地域で417人。NSW州が219人と最も多く、VIC州が120人、QLD州47人、首都特別地域(ACT)が31人だった。病院の呼吸器科で診察を受けた患者数は2,027人、循環器科は1,124人。ぜんそくで救急病棟に来院または搬送された患者の数は1,305人に達した。

一連の火災で、煙による健康被害に関する詳しいデータが明らかになったのは初めて。研究チームは、19年10月1日から20年2月20日までの有害な微小粒子状物質「PM2.5」の濃度や、医療機関の死者数・通院数などの統計から、大気汚染による被害者数を推計した。同チームは今後の山火事に備え、有害物質を取り除くフィルターを備えた避難所の設置や、大気汚染に関する注意情報の向上に関する研究にも取り組む予定だ。

豪東部は昨年後半から極度な乾燥と高温に見舞われ、大規模な森林火災が広い範囲で同時多発的に起きた。33人が火災や消火作業中の事故で亡くなった他、住宅2,800棟以上、森林や草原など約770万ヘクタールも焼失した。今年2月初旬になって記録的な集中豪雨があり、NSW州消防当局は同月13日にようやく火災の制圧を宣言した。

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