大津波は言い伝えられないのか

東日本大震災特集

 

コラム

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大津波は言い伝えられないのか

吉村昭の『三陸海岸大津波』読んで

岩手、宮城、福島3県での平成大震災のがれき片づけは、被災4カ月経っても終わっていない。岩手の漁村へ見舞いに出かけた後、歴史ドキュメンタリー作家の吉村昭による「三陸海岸大津波」を読んで、明治29年以後の震災記録を比べてみた。沿岸住民の間で津波はちゃんと言い伝えられていたのだろうか。(東京・青木公)


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三陸海岸大津波 吉村昭・著/文春文庫

コラム
大津波は言い伝えられないのか
吉村昭の『三陸海岸大津波』読んで

岩手、宮城、福島3県での平成大震災のがれき片づけは、被災4カ月経っても終わっていない。岩手の漁村へ見舞いに出かけた後、歴史ドキュメンタリー作家の吉村昭による「三陸海岸大津波」を読んで、明治29年以後の震災記録を比べてみた。沿岸住民の間で津波はちゃんと言い伝えられていたのだろうか。(東京・青木公)

 あの大震災から4カ月。「がんばろう日本」とか「がんばれ東北」という標語が東日本には溢れている。活字メディアやNHKテレビでは、被災者の声とか、現地は今、といった現場レポートが続いている。特に福島では、東電原発による放射能禍が広がり、東電第1原発ニュースが定番になっている。まるで東電震災といった感がある。

明治と昭和に3回

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震災救援には自衛隊10万人が 出動した(筆者撮影)

さて、吉村昭著の「三陸海岸大津波」(文春文庫)は、40年前に書かれた。旅好きで三陸地方によく出かけ、漁村で昔話を聞くうちに、地震や津波の体験話が多く、明治、昭和の4回の大震災の様子を1冊の本にまとめた。津波の脅威を、住民の声を通して伝えた約190頁の記録本だ。昭和8年の大津波について吉村は、こう記している。

「イワシの大群が来て、驚くばかりの豊漁が続いて、やがて海に大干潮が訪れた。湾の内は海底が露出し、川は激流になって海に流れ込んだ。海上には稲光のような青い閃光が走り、やがて地震が家々を激しく揺らした。」

明治29年の大津波と同じ前兆だったが、住民は地震で飛び起きたが、また寝てしまった。どうして明治に続いて、昭和でも大きな犠牲を払わなければならなかったのか、と吉村は思った。

いわば天変地異は、伝承されなかった。明治29年から昭和8年まで37年の間に、沿岸の人々は、大津波を忘れてしまったのだろうか。

平成23年の津波まで、昭和8年から昭和35年のチリ津波をはさみ、80年近く経っている。今回の津波現地を訪ねて気になったのは、昭和8年当時の漁民が気付いた海の変化(イワシの獲れすぎとか、湾内の大干潮)を、平成・現代の漁民は、気付いていなかったことだ。

海に敏感でなくなった?

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電柱が折れてがれきの山に。 岩手県山田町で(筆者撮影)

どうしてなのだろう。推察するに、人口は増えたが、漁民が少なくなった。若い人たちの人口流出で、漁業専業者が減った。科学技術の進歩で、地震予知がある程度進み、津波に鈍感になってしまったのか。

最近は、太平洋プレート(地盤)が、日本列島の底部にもぐり込むのが地震の原因。海底のプレートのゆがみ、はね返りが、津波を起すといった概念が、かなり知られるようになった。

だから、三陸住民は、サカナの動向や干潮といった自然現象に敏感でなくなってしまったのだろうか。

もちろん、地震が起きる時間帯によって被害の大きさは違う。別表のように寝ている時間帯か、昼間かによる。夜明け時でも、チリ地震津波は、太平洋の対岸チリで起きてから1日経ってからのこと。日本の気象庁は、津波警報も出していなかった。しかし死者が少ないのは、ゆったりとした波長の津波だったからのようだ。

明治29年は寝入りばな、今回のは昼下がりなのに死者・不明者はそれぞれ2万を超えている。過去の経験が生かされなかったのか。多くの津波体験者は故人になっていたからか。

生死は地震後の30分間

吉村がよく足を運んでいたのは、岩手県田野畑村(現在の宮古市の北部)で、宿の女主人が津波話をしてくれたので、吉村は体験者から聞き書きを始めた、という。

吉村の文庫版あとがきによると、「風俗画報・大海嘯被害録」という3巻本が、執筆に役立ったという。津波を忘れないための貴重な資料になっていた。今回は記録写真集が既に出されている。

吉村本を読むと、大地震の30〜40分後に津波が襲来している。この半時間が、退避のための余裕時間といえよう。前回に記した「てんでんこ」—お金も親も子も放り出して、われがちに高台に逃げるが勝ち、という生き残り教訓だ。

フクシマは世界を変えた

その後に分かってきたことは、今回は気象庁の津波警戒報で、津波の高さは3メートルと予報したので、住民は気を緩めていた、というのだ。

そして過去の三陸津波と大きく違うのは、福島原発の被災だ。放射能汚染は、ヒロシマ、ナガサキ、フクシマという被爆体験のつながりで、ドイツ、イタリアなど国際的に原発見直しが
広がった。フクシマは世界を変えた。戦争でも、平和時でも、原子力は恐怖をもたらすという教訓だ。

活字メディアは、生存者の証言をシリーズで続けている。「いかにして、自分は助かったか」の体験談だ。地元の「岩手日報」紙は、震災の2カ月目に500人の避難者アンケート調査結果を載せていた。94%が生活再建に不安を持っている。今も岩手県内で約4万人が避難生活を送り、①住宅の確保、②生活資金、③雇用の先行きを案じている。昔に比べれば官民の支援の手は厚く早いが、放射線禍は日本全国に広がり続けている。

■三陸海岸の大津波、比べると

日時 死者数
明治29年6月15日午後8時20分 2万6,360人
昭和8年3月3日午前2時32分 2,995人
昭和35年5月24日午前4時半(チリ地震) 105人
平成23年3月11日午後2時46分 1万5,642人(行方不明者約5,001人)7月28日現在

日本に届けよう、「がんばろう!」の思い

 戦後かつてない被害を被った祖国のために、遠く離れたオーストラリアから何かできることはな いか−−。多くの在豪日本人のそんな重いが、各地で力強い動きとなっている。本紙に寄せられたリ ポートや今後予定されているイベントなどをお伝えする。
※メルボルンでのチャリティー活動はP64に掲載。

【リポート】

被災地・南三陸町の3少年 GCマラソンに参加

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左から三浦泰門君、壮馬君、和泉翔太君、ボランティアの藤原さん

毎年、日本からも多くの参加者を迎えるQLD州のゴールドコースト(GC)・マラソンに、東日本大震災で津波が襲った宮城県南三陸町の少年3人が出場した。参加したのは13歳の三浦壮馬(みうらそうま)君と17歳の泰門(たいと)君の兄弟、16歳の和泉翔太(いずみしょうた)君で、筑波大学生の藤原宣也(のぶや)さん(24)の献身的なボランティア活動によって実現した。

藤原さんは震災後、350キロもの距離を自転車で走って現地へボランティアに駆けつけ、その際、避難所生活を送っている3人に出会った。3人には、何か新しいチャレンジを通して、自分自身の力強さに気付くための経験が必要と考え、藤原さんは3人にGCマラソン出場を提案。Tシャツを作ってチャリティー販売するなどして資金を集めた。

3人は出場に向けて避難所周辺で走り込みなどトレーニングを続け、大会では泰門君と翔太君はハーフ・マラソン、壮馬が10キロ・ラン部門に参加、3人とも見事に完走し、達成感を噛みしめていた。


【告 知】

福島から子どもたちがやって来る!シドニー・ホームステイ・プロジェクト

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7月号での記事掲載により多くの方々からさらなる支援・協力の申し出を受け、「シドニー・レインボー・ホームステイ・プロジェクト」は8月8日から第1陣として10人の子どもたちを福島から呼び寄せることが実現できることになった。

ボランティアによる受け入れ7家庭にホームステイし、地元の学校や子どもたちとの交流や野生動物を見に行く遠足などを含め、10日間を過ごす。

やって来る子どもたちとのやりとりが既に始まっているが、その中からいくつか子どもたちの生の声を紹介したい。

「春には山菜採り、夏には磯遊び、秋にはきのこ狩りと家族で毎年やっていたことが、今年はできない。早く安全な福島に戻ることを願っている」(中1男子)。

「美しい緑と美味しい果物の産地で知られていたけれど、大好きな桃はもう食べられないと思うと悲しい」「外で思いっきり遊びたい」(小5女子)。

「長袖・水筒・マスクの生活はとてもきゅうくつ。学校では少しのことでもケンカになったり、ケガをする人が多くなった。生活は大きく変わってしまった」(小6男子)。

「東京から小学生の時に引っ越して来たが、野菜、お米、水がおいしくてびっくりした。今は大好きな野菜も心配だけれど、安心して暮らせる所に戻るよう祈っている」(中2女子)。

多くの子どもたちが訴えるのが、「外で思いきり遊びたい」「シドニーで同じくらいの子どもたちと会って話がしたい」、そして「早く元気で安心して暮らせる福島に戻ることを願っている」というものだった。「シドニーで出会う人に、今、福島で起きていることを話してみたい」という一方で、「震災のことをあまり聞かないでほしい」と考えている子どももいる。

日本側代表の松浦千恵さんからは「受け入れ家庭さんをはじめ、シドニーの皆様からいろいろな温かいご支援・ご協力の申し出を多くいただき、深く感謝しております。どうぞ子どもたちを温かく見守ってください」というメッセージが届いている。(シドニー・香取夏野)

■シドニー・レインボー・ホームステイ・プロジェクト
日程:8月8日(月)〜18日(木)
Web: sites.google.com/site/rainbowstaysyaney
Email: yukikosal@yahoo.co.jp(シドニー側)、sydneytohoku@ yahoo.co.jp(日本側)


盆栽展と日本文化紹介のチャリティー

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シドニー盆栽会(Bonsai Society of Sydney)は 8月20・21日、恒例の「シドニー盆栽展」をシドニー北部、テリー・ヒルズにあるチェッカーズ・リゾート・アンド・カンファレンス・センターで開催する。今年で11回目となる今回は、同会代表のめぐみ・ベネットさんの呼びかけで、豪州盆栽協会や在豪日本人コミュニティーなど多方面からの協力を得、東日本大震災被災地域の盆栽愛好家への支援を目的としたチャリティー展となる。シドニー日本クラブが後援する。

当日は、90点に及ぶ多数の盆栽の展示のほか、古流松葉会によるカラフルな生け花展、シドニー在住の料理研究家であり書家でもある出倉秀男氏による書の実演、同じくシドニー在住の氷の彫刻家として国際的に知られる小川健二氏による折り紙の実演と折り紙教室が行われる。また、四国・高松市からは英語の堪能な盆栽の大家として有名な山地宏美(ひろよし)氏が駆けつけ、盆栽のデモンストレーションを行う。

21日午後4時に抽選が予定されているラッフルには、樹齢35年の貴重な盆栽や、盛りだくさんの賞品が用意されており、収益はすべて日本盆栽協会へ寄付される。

■盆栽と日本文化の紹介のチャリティー展
日時: 8月20日(土)9AM〜5PM、21日(日) 9AM〜4PM
会場: Checkers Resort and Conference Centre(331 Mona Vale Rd., Terrey Hills NSW)
料金:大人$5、コンセッション・学生$3、子ども(12歳以下)無料
問い合わせ:めぐみ・ベネットさん
Tel: (02)9450-2802
Email: bonsai@wix.com.au


核廃絶イベント「広島デー」開催

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初回開催から36年目を迎える、核廃絶を願うシドニー恒例のイベント「広島デー」が8月6日、シドニー市内サリーヒルズで開催される。

今年のフォーラムでは、戦争兵器としての核廃絶に加え、世界中が注目する福島第1原発のメルトダウン事故から6カ月目を迎えるに当たり、環境問題や再生可能エネルギーに関してのテーマが大きく取り上げられる予定。

ゲスト・スピーカーとして、豪州への日本車の荷揚げに際して安全性を確認するためいち早く放射線量テストの実施を訴えた豪州海事組合(MUA)のウォーレン・スミス氏や、環境保護政党グリーンズ(緑の党)議員リー・リアノン氏、オーストラリアからのウラン輸出および海外の原子力発電所で発生する放射性廃棄物のNTでの受け入れに反対する環境活動家のナタリー・ワズリー氏らが参加。また、フランスの著名な脱原発運動家や、世界初の原爆を開発した「マンハッタン計画」に携わった科学者らの深い反省から1945年に発足し、原子力科学者や多くのノーベル賞受賞者を会員とする最古参の反核団体「FASアメリカ科学者連盟」から、世界的にも有名な核問題専門家ハンス・クリステンセン氏が参加し、より安全で確かな世界の構築のために議論を闘わす。

また今回初めて、脱原発を訴える日本人グループ「シドニー311」もオーガナイザーとして参加しており、福島県南相馬市出身の椎根智子さんがスピーチをする。(シドニー・香取夏野)

■Hiroshima Day 2011
開催日:8月6日(土)
料金:無料
◎フォーラム
時間:11AM〜1PM
会場:NSW Teachers Federation(23-33 Mary St., Surry Hills NSW)
◎屋外会場でのフォーラムとラリー
時間:2PM〜3:30PM
会場:Belmore Park(Near Central Station)、その後George St.を行進
Web: www.hiroshimacommittee.org
日本語での問い合わせ
Email: yukikosal@yahoo.co.jp
Tel: 0414-758-295


シドニーの建築関係者が「エマージェンシー・シェルター展」

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会場となるカスタムズ・ハウス

シドニーの建築関係者らの呼びかけにより9月1〜3日の3日間、東日本大震災の被災地を支援するチャリティー・イベント「エマージェンシー・シェルター展」が開催される。

地震や津波、洪水、干ばつなどの自然災害が起きた際、実用的に役立つシェルターを、身の回りの素材を使って提案するというコンセプトのもと、現在、オーストラリア、日本、フランスから集まった有名建築家たちがそれぞれ制作活動を進めている。できあがった作品は、シドニー市内サーキュラ・キーのカスタムズ・ハウス前広場に出展される。

そのほかにもシドニーの建築学生らがこのプロジェクトに参加。作品はカスタム・ハウスのグランド・フロアにパネル展示された状態を鑑賞することができる。

集められた収益はすべて被災地の義援金に充 てられる。

■エマージェン シー・シェルター展
日程:9月1〜3日
会場:カスタムズ・ ハウス前庭とグランド・フロア
後援:Australian Institute of Architects、シドニー工科大学、 シドニー大学、メルボルン工科大学、Emergency Architects Australia、ジャパンファウンデーション、日本国総領事館(予 定)、オーストラリア紀伊國屋書店
参加建築家:Jean Nouvel、PTW Architects、Fender Katsalidis Architects、Tonkin Zulaikha、Greer、FJMT、COX、LAVA、Rice Daubney、藤本壮介、藤森照信
問い合わせEmail: jun@junsakaguchi.com(坂口さん)


皆さまの温かいご支援、 誠にありがとうございました。

日豪プレス・東日本大震災救援募金
義援金合計金額 3万8,463.20ドル(2011年6月30日集計)

6月30日までに皆さまからお預かりいたしました義援金に、シドニーの協力店舗の店頭に設置しておりました募金箱にお寄せいただいた義援金2,437.30ドルを加えた総額3万8,463.20ドルは、全額をオーストラリア赤十字社に寄付いたしました。

下記を含め111人・社の方にご協力いただきました。皆さまの温かいご協力に心より感謝いたします

 

日豪プレス
Gerald Nolan
比企景一
ガネーシャ・フローラル・デザ イン・スタジオ
ニチレイ・オーストラリア
Houston & Co Pty Limited
ブラザー・オーストラリア
Asian Beer Imports
シューメイカー・ミネ子
Echo Point Karaoke
木村美代子
Yun-Ting Chiu
Wen-Chieh Tsai
Chia-Hung Chiu
Wen-Chi Kuo
板屋雅博
西本ひろみ
矢野仁之
ジャパン・コンピュータネット
原田糾
スケッティーノ潤子
坂井健二
海和えみ
Uto Insurance & Financial Services
ディス・イズ・オーストラリア
移民サービス
ピアス佑里子、ジョージ、 涼、里架、孝太
キャリアアップ
Sumi’s Kitchen
清水テクニカルサービス
山本智子
Wellness Health and Beauty
SELC学生&スタッフ有志一同
Go Go Tours Pty Ltd
松本主計
ナオキ・マツモト・コンサルタ ンシー
小平直樹
飯島浩樹
シーハン宏子
山下亜以子
西澤弥矢子
関千春
檀浦陽子
おーすとらりあ こどもとしょ かん
藤嶋彩
塩村友美
加藤ちひろ
荒川佳子
森あずさ
尾崎隆志
ユニバーサルキッズ
呉世鎮
加藤哲郎
Xiaojing Shen
岸山奈緒
吉川公平
杉林未絵
石毛彩加
斎藤和子
石原あい
稲田君重
EZ-DRY CARPET CLEANING
長森壮郎
ヘアークレスト
マスターすし
Bauer St Community Centre
ABSOLUTE RELAXATION
PHYSICAL AND SPRIRTUAL
さくらクリニック
富士屋(all staff)
Benowa State School
Lane Cove Occasional Childcare Centre
Sushi Cafe MAIDO(来店客・ス タッフ一同)
原元聡江
John and Akiko Harris
便利屋 熊屋
中島ゴルフアカデミー
寺口奈津子
ヘンドリー明子
BECTEL
林さゆり
コ ロ ッ ケ ・ か ら 揚 げ 専 門 店
Come On Mate!
KOH-YA焼肉
JFX Southport
MUNEクラブ
Hugくむ
ペッパーランチ
體心整体、前田
グローバル・プロモーション ズ・オーストラリア

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