日豪フットボール新時代(NAT)第109回「躍動」

第109回 躍動
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

今年で豪州3年目になる元日本代表の田代有三(写真左)とAリーグ挑戦も視野に入れる若手アタッカー岡田武瑠(写真右)
今年で豪州3年目になる元日本代表の田代有三(写真左)とAリーグ挑戦も視野に入れる若手アタッカー岡田武瑠(写真右)

毎年、この次期は似たようなことを書いている。例年、この時期が豪州フットボール界の「トランジット」期だとかなんとか。シーズン開幕に向けて準備が進むAリーグ・クラブ、そしてレギュラー・シーズンを終え、王座を懸けてファイナル・シリーズを戦う各州のローカル・クラブ。この2つの異なる階層のクラブが、毎年この時期にクロスオーバーする。その主たる舞台が、ベスト32からAリーグ・クラブが参加するFFAカップ。そこでは毎年、Aリーグとローカル・クラブの直接対決がさまざまなドラマを生み出す。また、この時期は各州のトップ・リーグNPLのチームがAリーグ・クラブの胸を借りる機会が多くあり、NPL所属のセミプロ選手には“成り上がり”の絶好の機会でもある。

そんなシーズンたけなわのNPLでは、今年も日本人の活躍が目立った。今回は、日本人選手の活躍を駆け足で紹介していく。

メルボルンのVIC州1部NPLVICでは、全豪で最もAリーグに近い日本人選手との評価を集める関谷祐が攻撃の中心を担うアボンデールが、最終節にまでもつれこむ首位争いの真っ只中。最終節で勝利して、首位のハイデルブルグが負けるか引き分ければ、逆転優勝の可能性を残している。そのNPLVICで8位に着けるポート・メルボルン所属の小長谷勇太は、ここまで全試合に先発、7ゴールの活躍を見せてチームの主力の座をシーズンを通して守り抜く大活躍で終えようとしている。

シドニーのあるNSW州1部のNPLNSWでは、古豪ウーロンゴン・ウルブズが実に32年ぶりにタイトル奪取。その快挙を支えたのが、積極的なプレーでチームの攻撃の多くを担ったMF岡田武瑠、そして、昨年引退後にアシスタント・コーチに就任した田代有三の2人の日本人。彼らの貢献なくして、今年のウルブズの快挙は起こり得なかった。

QLD州では、前述のFFAカップで日本人選手が存在感を発揮している。FFAカップのベスト16に残ったブリスベンの2クラブそれぞれのチームで欠かせない主力、いや、クラブのレジェンドとしてプレーしているのが、伊藤和也(オリンピック)と大森啓生(ブリスベン・ストライカーズ)の両名。伊藤の所属するオリンピックは、NPLQでも4位に入り、ファイナル進出を決めた。

サムライ・フットボーラーが、今年も全豪各地のローカル・フットボールで躍動している。うれしい限りだ。


【うえまつのひとり言】
AFC・U-18選手権を豪州U-18代表ヤング・サッカルーズが制した。決勝ではマレーシアを相手に、2-1の辛勝。久しぶりの世代別代表の快挙だが、相手関係を見るとアジア・サッカー界の勢力図が激変しているのが分かる。豪州がそんな地殻変動に飲み込まれ埋没しないように、切れ目ない堅実な育成を進めていって欲しい。

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