第12回 NAT 見えない力

 

第12回 見えない力

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


見えない力を呼び寄せ、軌跡を起こしたなでしこジャパン

特集で1ページもらったのに「書ききれない!」ということで、無理を言って1回休みの予定だった今月の連載を復活してもらった。

見えない力、とタイトルを打ち込んで「どこかで聞いたことがあるな」と思ったのだが、日本の有名バンドの某曲に全部カタカナ表記にした「ミエナイチカラ」という曲があったのを思い出した。このバンドは決して好みではないが、非常にキャッチーでメッセージの伝わりやすいその曲に乗せてFIFA制作の決勝戦ハイライト(筆者注・独自の映像だからか実況なし)を見直してみた。

何度も見返したシーンなのに不覚にも泣けた。そして、あの試合での「見えない力」の存在に改めて気付かされた。改めて米国との決勝戦を振り返って思う。試合を通じて、もう偶然では片付けられないほどサッカーの神様は日本に肩入れをしていた。

ことごとくゴール・ポスト、バーに嫌われる米国のシュート。2度突き放されて2度追いつく劇的な展開。わが身を挺して米国の決定機を潰した終了直前のDF岩清水のプレーとその判断、そしてそれによって発生したゴール真っ正面からの直接FKの阻止、さらにはPKでのまさかの米国の3連続ミス…。運が良かったというよりは、何かが運を呼び込んだという方がふさわしい。「日本の皆さんのために戦い、皆さんのために勝ち、皆さんに私たちを誇りに思ってもらいたかった」。この試合で最初の同点弾を叩き込んだ宮間あやは、米国マスコミにこんなコメントを語っていた。強く国を思う気持ち、そして日本からの彼女たちの頑張りに自分たちを重ね合わせる人々の祈りにも似た気持ち。そんな多くの強い気持ちがあいまって、「見えない力」として選手の頑張りを下支えした。

敗れた米国の選手たちが、なかなかその事実を受け入れられず茫然自失でいるのが画面に映し出されたが、彼女たちは「どうして勝てなかったんだろう」と半ば狐に抓まれたような感じだったのかもしれない。「最後は精神力の差」と言うが、最後はその精神力という「見えない力」の差が、負けでもおかしくなかった試合をひっくり返したと書いても、今回ばかりは神懸り発言とお叱りは受けまい。

今回は「見えない力」が、なでしこジャパンの快挙を支えたと書いた。とは言え、それをサッカーの試合で「見える力」として勝利をつかみ取れたのは、紛れもなくなでしこジャパン自身の頑張りに因る。

彼女たちのとてつもない快挙を称えることで、決戦の朝以来の躁状態に別れを告げ、なでしこフィーバーのひと区切りとしたい。

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