第33回 NAT ステップアップ

 

第33回 ステップアップ

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu


悲願を達成したアーノルド。海外へのステップアップを考える時期か(筆者撮影)

Aリーグのグランド・ファイナルで、勝者としてチャンピオン・リングを高々と掲げたセントラルコースト・マリナーズ(以下CCM)。そのチームを率いたのが、今回負けていれば“悲劇の名将”というありがたくない肩書きが加わる可能性があったグラアム・アーノルドだ。

当コラムには、名脇役的な存在として何度か登場しているので、読者にも馴染みの存在だろう。無骨な感じの外見とは裏腹に、限られた予算で編成されるチームの総合力を最大限に発揮させる緻密なチーム作りには定評があるアーノルド。彼に率いられたCCMはリーグ1の安定勢力としてAリーグで存在感を発揮してきた。そのCCMが、ようやく4度目にして悲願のタイトルを獲得した時に、1番喜んだのはほかでもないアーノルドその人であろう。

CCMは、その安定した成績とは裏腹に経営状態は安定しているとは言い切れない状況が続いていた。今季の途中にも、身売りしてセントラルコーストからVIC州のジローンへの移転がささやかれたりもした。そんな財政難下のチームにさっそうと現れ、白馬の騎士よろしくチームを救ったのが、英国人の現オーナー、マイク・チャールズワースだ。

彼は、育成クラブとしての身の丈経営を徹底させ、チームを存続させる道を躊躇なく選んだ。1年あたり100万ドルのコスト削減を公表しており、その影響で、将来サッカルーズのディフェンスを背負って立つDFトレント・セインスベリーやGKマット・ライアン、長くヨーロッパのクラブに関心を示されているFWバーニー・イビニ=イセイなどの若手の逸材が、軒並み、今オフ欧州へと“売られ”ていく。

監督のアーノルドも例外ではない。もともと豪州有数の若手監督として評価の高い彼には、英国をはじめとしたヨーロッパやアジアなどから多くの引き合いがある。彼自身も監督業の“ステップ・アップ”を考え、今季でチームを離れ、海外に活躍の場を求める可能性は高い。

以前、日本への興味を聞いた時は、さすがにシーズン中ということもあり「良い話があればいつでも振ってくれ」と冗談半分だったが、潜在的な日本願望は間違いなくある。日本でのプレー経験もあるアーノルドに、Jリーグの監督なんかやらせたら面白い。J2中位で、チーム作りを育成も含めてある程度長いスパンで考えられ、良い通訳を付けられるチームがあれば、彼はなかなかの適任だと思うが、いかがだろう。

彼なら、私は喜んで推薦したい。


【うえまつの独り言】
噂ではWSWの人気者CFディーノ・クレシンガーの契約更新の可能性は低いようだ。前線のつぶれ役としては十分に体を張ったが、CFとして2得点じゃ確かに厳しい。代役に、小野伸二の朋友の元日本代表、高原直泰なんていかがでしょう。ビザ枠も余っているし、お薦めします。
 

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