第36回 QLD 幻

 

第36回 幻

文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

このコラムが届くころには、マンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)は、アジア・ツアーの一環である豪州滞在を終え、日本で、香川真司“凱旋”ツアーの喧騒の真っただ中にあるだろう。

こう書くと、少しいじけているように思われるかもしれないが、実際、多少はへそを曲げたい気分だ。というのも、20日のマンU対Aリーグ・オールスターズの対戦では、我々日本人の期待した「シンジ対決」は幻に終わり、それだけならまだしも、結局、どちらの「シンジ」もピッチ上で拝むことは叶わなかった。

6月も終わろうかというタイミングで届いた「香川オフを延長・マンUツアーは日本から同行」の報道。締切前段階で公式発表もなかったこともあり、英国系住民は当然ながら日本人も多く暮らす(これは豪州の前の滞在地であるバンコクにも言える)この地に「香川抜き」はないだろうとの(今思えば甘い)読みで、香川来豪前提で「シンジ対決」の煽り記事を書いた。

そして、まさに青天の霹靂だったのが、小野伸二の欠場。オフ中、日本(コンフェデ杯の現地解説も含め)で精力的に動く小野の動向を掴んでいたので「オフ、しっかり取れているのかな」という危惧はあった。しかし、ファン選出での出場、旧友ファンペルシとのピッチ上での再会など、小野が出場に駆られる要素は「シンジ対決」がなくなっても、まだ十分にあると思っていた。FFAやAリーグも、小野とデル・ピエロの欠場は「オールスター」の定義を揺るがしかねないと説得を試みたが、小野の所属WSWの意思は固かった。

WSWのコメント曰く、「(小野の)フィットネスも考慮して、クラブとしては(リーグ優勝の)タイトルを防衛する大事なシーズンに向けて、大事な選手を失うリスクを冒したくない」。このコメントとほぼ機を一にして、「ブリッジらWSWの4選手、新たにオールスター入り」の報が、それらの選手の満面の笑みの写真とともに流れた。それを目にした瞬間、クラブが発した先の理由が何とも空虚なものに感じられた。

かくして、Aリーグ初の試みであるオールスター戦は、初年度から国内組の代表選手も欠くなど「オールスター」としての存在意義を問われることになった。来年以降の開催の是非や方法などに大きな課題が残されたことは、幻では片づけられない。

末尾ながら、締め切りが早い月刊紙の宿命とはいえ、前述の煽り記事が完全に「はずれ」になってしまったことで日豪プレスと読者の皆様にはご迷惑をお掛けしてしまった。この場を借りて、お詫びしておきたい。


【うえまつの独り言】
7月20日開幕の東アジア選手権。男子は日豪中韓の4カ国が参加。もともとその存在意義を問われる大会だけに、各国代表は国内組や若手中心の編成で臨む。サッカルーズにとっては、懸案の世代交代を担う選手のアピールの場だけにチェックは怠れない。
 

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