ロンドン五輪、なでしこ銀&ヤング・サムライ4位

ロンドン五輪、なでしこ銀&ヤング・サムライ4位
男女サッカーでともにベスト4進出は今大会唯一

先月12日に成功裏に閉幕したロンドン五輪。日豪ともに金メダルの獲得に苦戦した大会の中で、一番の注目を集めたのが、男女そろって決勝トーナメント(以下、決勝T)進出を果たし、今や老若男女を問わず愛される国民的競技となったサッカーだ。ロンドン五輪での日本男女サッカー代表の奮闘を本紙特約記者・植松久隆が振り返る。文・植松久隆(本紙特約記者/スポーツ・ライター)


堂々の銀メダルを獲得したなでしこジャパン(フェイスブック公式ホームページより)

筆者の世代には嬉しいスパイス・ガールズの一夜限りの再結成など、英国音楽界のスターたちの豪華競演で盛り上がった閉会式で、興奮に包まれたロンドン五輪の熱戦に幕が降りて、はや半月が過ぎた。さすがに、4年に1度のスポーツの祭典だけに見どころも豊富でいろいろと目移りはしたものの、やはり個人的に一番気になった競技はサッカー。日本は男女ともに決勝T進出を果たしメダルを争うところまで勝ち上がった。“日本サッカー、ここにあり”を十分に世界にアピールできたロンドンの熱戦を振り返ってみよう。

まずは、なでしこジャパン。4年前の北京五輪では準決勝で宿敵米国に屈し、3位決定戦でもドイツに敗れ、悲願のメダルを逃しているだけにW杯王者として臨む今大会に賭ける思いは強く、“一番良い色のメダル”の獲得が大会前からの大目標となった。

最大の難敵はアメリカ。「W杯の屈辱を晴らすのは五輪しかない」という強い気持ちで臨む今大会に賭ける彼女たちのモチベーションは高かった。さらには、今年3月の五輪前哨戦アルガルヴェ・カップの覇者ドイツ、女子サッカー屈指の強豪国でありながらW杯・五輪のタイトルに恵まれず悲願のタイトル奪取に燃えるスウェーデンなどが、日本の2冠達成を阻止しようと大会に臨んできた。

予選グループF組は、日本(FIFAランキング3位)、スウェーデン(同4位)、カナダ(同7位)と強豪国がひしめく、いわゆる“死の組”。なでしこジャパンは初戦で難敵カナダに2−1で勝利、幸先の良いスタートを切る。2戦目の最重要のスウェーデン戦をスコアレス・ドローで乗り切って、次の格下・南アフリカとの対戦に勝てば“堂々の予選突破”というところまで漕ぎ着けるが、ここで日本に、悲願のメダル獲得のためには決勝Tの早い段階でのアメリカとの対戦を避けたいという心理が働く。通算成績で29戦1勝しかしていない最大の難敵とは、組み合わせ上、F組を1位通過するとトーナメントの同じ山に入り準決勝で顔を合わせる。一方、2位通過すれば決勝まで対戦を先延ばしにすることができる。佐々木則夫監督は、予選最終戦の南アフリカ戦に臨むにあたり、どちらも予選通過の可能性を残すスウェーデン−カナダ戦の結果を横目に見つつ、状況によっての“2位通過のための引き分け狙い”も見越していた。

控え中心のメンバーで臨んだ南アフリカ戦は、前半はスコア・レス。後半に入って、一方のスウェーデン−カナダ戦の状況を踏まえた上で佐々木監督は“引き分け狙い”を選手に指示。選手もそれに応え、格下との対戦をドローで終了。結果、F組は最終戦カナダと引き分けたスウェーデンが得失点差で日本を上回り1位通過、日本は2位で予選を突破した。

この引き分け狙いの戦いを批判する声も聞こえたが、私は「金メダル」という目標の最大の障壁であるアメリカとの対戦を決勝戦まで先延ばししたいという心理は戦略的にも理にかなっており、それをして、佐々木監督への批判というのは当たらないと思う。

決勝Tに入ってからのなでしこジャパンは、準々決勝でブラジル(2−0)、フランス(2−1)と快進撃。決勝で、予定通り宿敵アメリカとの“巌流島”対決を迎えた。異例の高視聴率を記録、当地でも放映があった決勝戦のその試合内容に関して多くを語るスペースは残っていないが、日本は宿敵の前に1─2で敗れ、2冠を逃した。負け惜しみではないが、女子レベルを超越したスーパー・セーブを見せたアメリカGKホープ・ソロの存在、決定的なアメリカのハンドの反則を流されてしまったこと、これさえなければ…などとは言っても詮ないことだが。

金メダルは逃したものの、精一杯の戦いぶりで日本中を熱くしたなでしこジャパン。その胸に輝く銀メダルは、彼女たちの笑顔ともあいまって、金メダルにも劣らないくらいの輝きを見せていた。

一方の男子。男子五輪サッカーは、サッカーW杯との兼ね合いで、U23世代の世界大会という位置づけだ。したがって、今回の五輪代表は日本の次代を担う若手選手が多く招集されたわけだが、その日本の若武者たちはいきなり世界を驚かせた。

予選D組の初戦スペイン戦、日本は大津祐樹が前半34分に豪快なゴールを決めて先制。その1点を守り抜いた日本は、世界最強のスペインに勝利というまたとない好スタートを切った。一部マスコミは、相変わらずの論調で“グラスゴーの奇跡”などとこの快挙を報じていたが、この試合の勝利は奇跡でもなんでもなく、勝つべくして勝った試合だったのは試合を見ていれば何より明らかなことである。

続くモロッコ戦も、世界を驚かせる快足ぶりを見せた永井謙佑が得点、1─0で快勝。予選通過を確実とした状況で臨んだホンジュラス戦は、控え中心のメンバーで0─0の引き分けとなったが、最終的に勝ち点7を積み上げ、予選D組を堂々の1位通過。2000年のシドニー大会以来となる決勝T進出を果たした。

決勝Tの初戦エジプト戦は、永井らの3ゴールで快勝。34年前のメキシコ大会以来のベスト4に歩を進めた。続く準決勝では、メキシコに大津の今大会3得点目のゴールで先制するものの、前半に追いつかれると、後半にさらに2得点を挙げられ1─3で完敗。メキシコに、34年前の3位決定戦のリベンジを果たされた形になった。


惜しくもベスト4ながら検討したヤング・サムライ(フェイスブック公式ホームページより)

そして迎えたのが、何かと話題を集めた3位決定戦の日韓戦。試合前日に韓国の李明博大統領が島根県の竹島に上陸したこともあって、何とも不穏な状況で迎えた日韓戦は、いつにも増しての緊張感の中で行われた。日本は、冷静にいつも通りのサッカーをやろうと試みてはいたが、試合の雰囲気がそれを許さない。異常なくらいに気合いの乗った韓国選手の気迫がゴールを産み、日本は反攻するすべもなく0−2で破れ、メキシコ五輪以来となるメダルを逃してしまう。試合後には、例の韓国人選手による竹島プラカード事件が発生し、何とも後味の悪い戦いとなってしまったのが残念でならない。彼の行いは、明確に五輪憲章に反しており、IOCとFIFAの賢明な判断が下されるものと信じたい。

今大会のサッカーでの活躍、なでしこ銀、ヤング・サムライ4位という結果は、間違いなく賞賛に値する。男子も韓国を打ち破って銅メダルということであれば、なお良かったのだが、その楽しみは4年後のリオに取っておこう。今大会で、日本のほかに男女サッカーでともにベスト4進出を果たした国はない。その1点をしてみても、日本サッカーの存在感を十二分に世界にアピールできた良い大会であったと言えるであろう。

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